京谷和幸(車いすバスケ)第2回「事故によって得た大きな気づき」

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二宮: 京谷さんはもともとプロのサッカー選手でした。室蘭大谷高校時代は全国高校サッカー選手権に3年連続で出場し、3年の時には大会優秀選手にも選ばれています。サッカーでは、もう怖いモノなしだったのでは?

京谷: 僕、中学1年の時からずっとレギュラーだったんです。だから、やんちゃというか、生意気でしたね。

 

二宮: やんちゃな頃のエピソードを教えてください(笑)。

京谷: そうですねぇ......例えば中学2年の時、3年生にファウルをされたんです。それで頭にきて、その先輩に砂をかけたことがありました(笑)。

 

二宮: それはすごい。熱くなると、セーブできなかったんでしょうね。それほどサッカーに対して真剣だったということでもありますよね。

京谷: ピッチの中では先輩、後輩は関係ないと思っていましたから、先輩に対しても「パス出せよ!」なんて言っていましたね。

 

二宮: 高校卒業後は、古河電工(現ジェフユナイテッド千葉)に入ります。ベテラン選手とは年齢差もあったでしょうから、さすがに先輩をたてるようになったのでは?

京谷: ところが、まったく変わらなかったんです(笑)。入団1年目だというのに、試合後、先輩をさしおいて真っ先にマッサージを受けたり......。こっぴどく怒られましたけどね(笑)。

 

二宮: ある意味、プロ向きの性格だったんでしょうね。

京谷: とにかく人に感謝するということは、まったくありませんでした。周囲のありがたさを感じたのは、事故を起こしてからです。あのままサッカー選手としてやっていたら、生意気なままだったでしょうね。

 

二宮: 事故に遭ったからこその気づきがあったと?

京谷: はい。事故に遭わなかったら、人間として成長できなかったと思うんです。今、講演やイベントで「夢」や「出会い」や「感謝」だなんて言ってますけど、あの頃は感謝なんてしたことがなかったんです。確かに事故に遭っていろいろと苦労もしましたけど、得たものの方が大きかったなと思っています。

 

人間性重視の指導者に

 

二宮: 現在は、サッカーの指導者を目指しているわけですが、日本サッカー協会公認のコーチライセンスが必要です。

京谷: 昨年12月にC級ライセンスを取得しました。現在は来年、B級を取得するために、いろいろと勉強しています。

 

二宮: やはり、最終的な目標としてJリーグの監督を目指しているのでしょうか?

京谷: 以前はそうだったのですが、今は高校や大学で指導したいなと思っています。

 

二宮: 育成面に力を入れたいと?

京谷: はい、そうなんです。高校や大学は、サッカー選手として難しい時期だと思うんです。でも、だからこそ一番大事な時期でもある。そういう世代に、サッカーの技術や戦術の前に、人間性という部分をいろいろと伝えていきたいなと。

 

二宮: 京谷さんは事故でサッカーができなくなり、大きな挫折を味わいました。その挫折を乗り越え、車椅子バスケットボールで4度もパラリンピックに出場した。その経験から得たものを、今度は次世代を担う若手に伝えていこうと。

京谷: はい。どんなに優秀な選手でも、現役としてプレーする期間よりも、引退後の人生の方が長い。そこで大事になってくるのは、人としてどう生きるかということです。その基盤を、高校や大学の時期に築いてあげられるような指導ができればと思っています。

 

(第3回につづく)

 

京谷和幸(きょうや・かずゆき)プロフィール>

1971年8月13日、北海道生まれ。小学2年からサッカーを始め、室蘭大谷高校時代にはインターハイ2回、高校選手権3回、国民体育大会3回出場。3年時の選手権では優秀選手に選ばれた。2年時にはユース代表、3年時にはバルセロナオリンピック代表候補にも選ばれるなど、将来を嘱望されていた。高校卒業後、古河電工(現ジェフユナイテッド千葉)に入団したが、93年に自動車事故で引退。94年から車椅子バスケットボールチームの千葉ホークスに所属し、全国車椅子バスケットボール選手権大会で8度の優勝を経験。日本代表としてはシドニー、アテネ、北京、ロンドンと4大会連続でパラリンピックに出場した。ロンドン大会後、現役引退を表明し、サッカー指導者としての道を歩み始めた。昨年12月に日本サッカー協会公認C級コーチライセンスを取得。現在は来年のB級取得を目指している。そのほか、講演や一般社団法人「運動の和」代表代理も務めるなど、幅広く活躍している。

京谷和幸オフィシャルサイト http://www.kyoyastyle.com/

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