メジャーリーグは4日、各地でレギュラーシーズンの最終戦を迎え、最後まで優勝が決まらなかったアメリカンリーグの東地区と西地区ではニューヨーク・ヤンキースとオークランド・アスレチックスがそれぞれ制した。プレーオフは今季からワイルドカードでの進出が2チームに増えたため、まず6日にワイルドカード同士で1試合を戦い、勝ち抜いたチームがディビジョンシリーズに進出する。
 2年連続18回目となるヤンキースの地区制覇。その立役者となったのは今季から常勝軍団の一員となった黒田博樹だった。もし、この日のボストン・レッドソックス戦を落として2位のボルチモア・オリオールズが勝てば、同率首位で並ばれる。大事な一戦の先発を託された。立ち上がりは負けられないプレッシャーか、ヒット2本で1点を失う。だが、メジャーで毎年、防御率3点台をキープしている黒田は大崩れしない。2回以降は走者を出しながらも要所を締めて立ち直った。

 すると打線もすぐさま反撃を開始。レッドソックス先発の松坂大輔に2本のホームランを浴びせ、3回途中で5点を奪ってKOする。その後も地区最下位のレッドソックスに対して得点を重ね、大量リードを奪った。試合中に他球場でオリオールズが敗れ、既に優勝が決まっていたが、8回にはイチローの2点タイムリーなどでダメのダメを押す。終わってみれば14−2の圧勝で花を添えた。黒田は7回7安打2失点でまとめ、自己最多の16勝目(11敗)。7月にシアトル・マリナーズから移籍したイチローはピンストライプのユニホームを着てからは打率.322、5本塁打、14盗塁と活躍し、チームに欠かせない戦力になった。

 ヤンキースが最後に笑った裏で、最後に泣いたのがダルビッシュ有、上原浩治、建山義紀が所属するテキサス・レンジャーズだ。あと1勝すれば優勝が決まる展開で連敗し、首位で並ばれたアスレチックとの最終決戦。レンジャーズは3回に5点をあげ、試合の主導権を握ったかと思われた。ところが、ここまで12勝をあげている先発のライアン・テンプスターが大誤算。4回に突如乱れて追いつかれると、なんでもないセンターフライをジョシュ・ハミルトンが落球するミスが出て、試合をひっくり返される。一度、手放した流れは戻らず、5−12の逆転負け。レンジャーズは4月より守り続けてきた首位から最終戦で陥落して地区3連覇を逃した。アスレチックスは一時、レンジャーズに13ゲーム差をつけられながら、6年ぶり15回目の優勝を大逆転で決めた。

 レギュラーシーズンを終えて、その他の地区の優勝はア・リーグが中地区デトロイト・タイガース(2年連続5回目)、ナショナルリーグが東地区ワシントン・ナショナルズ(31年ぶり2回目)、中地区シンシナティ・レッズ(2年ぶり10回目)、西地区サンフランシスコ・ジャイアンツ(2年ぶり8回目)。2位以下で各リーグ勝率上位2チームに与えられるワイルドカードにはア・リーグが最後まで地区優勝を争ったオリオールズ(東地区2位)とレンジャーズ(西地区2位)、ナ・リーグはアトランタ・ブレーブス(東地区2位)とセントルイス・カージナルス(中地区2位)が入った。個人タイトルではタイガースのミゲル・カブレラが打率.330、44本塁打、139打点でメジャー45年ぶりの打撃三冠を達成した。

 今季の日本人選手はレンジャーズのダルビッシュが新人では最多となる16勝(9敗)をマーク。途中から体をややくの字に曲げるセットポジションにフォームを変えて安定感が増した。プレーオフではオリオールズとのワイルドカードゲーム(6日)で先発を託される。また同じくレンジャーズの上原は37試合に登板して防御率1.75。14試合連続無失点で勝ちパターンのリリーフに名を連ねた。建山は14試合に登板して1勝0敗、防御率9.00だった。

 プレーオフ出場を逃したチームで光ったのは野手では1年目の青木宣親(ミルウォーキー・ブルワーズ)。開幕当初は外野の控え要員とみられていたが、着実に結果を残してレギュラーに定着した。主にリードオフマンとして155試合に出場し、打率.288、10本塁打、50打点。30盗塁を決め、足でもチームに貢献した。

 投手では同じく1年目の岩隈久志(シアトル・マリナーズ)が後半戦から先発ローテーション入り。最後は3連勝を飾るなど、約2カ月で8勝をあげ、本領を発揮した。また右ひじ手術から復活した田澤純一(レッドソックス)も中継ぎで自己最多の37試合に登板し、1勝1敗1セーブ、防御率1.43と最下位に沈んだチームで気を吐いた。

 一方で契約最終年となったレッドソックスの松坂はこの日も3回も持たずに降板するなど、わずか1勝(7敗)止まり。右ひじ手術から復帰した年とはいえ、あまりにも内容が悪すぎた。巻き返しを図るチームで再契約を勝ち取るのは難しい状況だ。42歳の斎藤隆(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)は故障が相次ぎ、メジャー移籍後自身ワーストの16試合の登板にとどまった。ロサンゼルス・エンゼルスからシーズン途中にピッツバーク・パイレーツに移った高橋尚成も移籍後は存在感を示せず、防御率5.54と、3年間で最も悪い数字だった。イチローを慕ってマリナーズ入りした川崎宗則は開幕前にメジャー契約を勝ち取ったものの、バッティングが打率1割台と低迷し、ベンチを温める機会が多かった。
 
 プレーオフはア・リーグがワイルドカードゲームでレンジャーズとオリオールズが対戦。勝ったチームがリーグ勝率1位で東地区を制したヤンキースとディビジョンシリーズを戦う。同シリーズのもう1カードはアスレチックスとタイガースの組み合わせ。ナ・リーグではブレーブスとカージナルスによるワイルドカードゲームの勝者がナショナルズと対戦。もうひとつの山ではレッズとジャイアンツがリーグチャンピオンシップを賭けて激突する。