9日、第95回全国高校サッカー選手権大会決勝が埼玉スタジアムで行われ、青森山田が前橋育英(群馬県)を5対0で下し、初優勝に輝いた。 青森山田は前半23分にMF高橋壱晟、前半アディショナルタイムにMF嵯峨理久のゴールでリードを奪う。後半に入ると、FW鳴海彰人の2ゴールと、終了間際のFW佐々木快が加点し、危なげなく勝利。青森山田は20回連続22回目の選手権出場で、初めて栄冠を手にした。

 

 高橋、5戦連発(埼玉スタジアム)
青森山田 5-0 前橋育英
【得点】
[青] 高橋壱晟(23分)、嵯峨理久(45+1分)、鳴海彰人(57分、59分)、佐々木快(89分)

 

 試合前に雨を降らせていた空が綺麗に晴れ、ピッチの上で今年も選手たちが熱い戦いを魅せた。青森山田と前橋育英は、ともに選手権出場20回を超える名門中の名門。どちらが勝っても初優勝というのが意外だった。

 

 ボールポゼッションが売りの今季の前橋育英と、攻守においてハイレベルな青森山田。立ち上がりは青森山田が前橋育英のお株を奪うパスサッ カーを披露する。一方、前橋育英も相手の裏を取り、得点の匂いを感じさせた。

 

 試合が動いたのは前半23分だった。鳴海が右サイドからクロスを入れると、ペナルティーエリア内で待ち構えていた高橋がワントラップして左足を振り抜いた。シュートはDFに当たり、コースが変わってゴールに吸い込まれた。高橋はこの得点で選手権5試合連続ゴールとなった。今大会絶好調の背番号10が1回戦から無失点の前橋育英ゴールをこじ開けた。

 

 青森山田の勢いは止まらない。前半アディショナルタイムにはMF郷家友太との華麗なワンツーで相手守備陣を手玉に取った嵯峨がペナルティーエリア内へ侵入。そのまま右足でシュートを放つと、ゴール左に決まった。前橋育英の十八番のコンビネーションプレーを青森山田が大一番でやってみせた。

 

 後半に入っても、ゴールを奪ったのは青森山田だった。MF陣のゴールに刺激を受けたストライカーが覚醒する。12分、鳴海が右サイドからの嵯峨のクロスにニアサイドで強引に胸トラップをすると右足一閃。ゴール左に決めた。その2分後には鳴海がDFラインの裏を取り、ペナルティーエリア内で冷静にGKの位置を見て右足インサイドでゴールネットを揺らした。鳴海は大会通算6ゴールとなり、チームメイトの高橋を抜き、大会得点王となった。

 

 青森山田は終了間際に途中出場した佐々木が左足で豪快ミドルを叩き込み、5-0。試合終了のホイッスルと同時にピッチには笑顔と涙が交差した。チームを率いて22年目で初の選手権制覇を成し遂げた青森山田の黒田剛監督は「長かった。とても嬉しい」と、初めて青森県に優勝旗を持ち帰ることを喜んだ。

 

 リードを広げても油断することなく集中していた青森山田。最後まで諦めることなく懸命にボールを追いかけた前橋育英。今年も若き日本の宝たちがしびれるゲームでサッカーファンを魅了した。

 

(文/大木雄貴)