10年2100億円という巨額の放映権料の影響で今季からJリーグが変わる。優勝チームには優勝賞金とは別に15億5000万円の理念強化配分金が支給されるのだ。この軍資金を手にするため、各クラブは補強に余念がなかった。過去にないほどJリーグの移籍市場が活性化した。今季も優勝争いをリードしそうなのが鹿島アントラーズと浦和レッズである。

 

 大本命の鹿島は昨年度Jリーグと天皇杯の2冠を達成した。昨年暮れに行われたクラブW杯決勝でレアル・マドリードと互角に戦った底力は今季も色褪せないだろう。MF柴崎岳を海外移籍で失ったが、その穴を十二分に補えるだけの戦力獲得に成功した。

 

 アルビレックス新潟からMFレオ・シルバやヴィッセル神戸からFWペドロ・ジュニオールら実力者を獲得。レオ・シルバは中盤の底でいぶし銀の活躍を見せる。彼の加入でボランチの競争は激しくなった。レオ・シルバ、MF永木亮太、MF小笠原満男の3人に、昨季はモンテディオ山形に期限付き移籍していたMF梅鉢貴秀と加入2年目のMF三竿健斗が割って入れるか。頭数は揃っているだけに組み合わせ方は多彩だ。

 

 基本フォーメーションは4-4-2。2トップのポジション争いも面白い。FW金崎夢生、ペドロ・ジュニオールが軸になるだろうが、FW赤崎秀平や成長著しいFW鈴木優磨がその座を奪えるかにも注目だ。今季から背番号「9」をつける鈴木はプレシーズンを含め7試合で7得点と絶好調。チーム内競争が激化する鹿島は、石井正忠監督の采配にも注目が集まる。

 

対抗はリベンジに燃える浦和

 

 鹿島の対抗馬には浦和を挙げる。昨年までの攻撃的なサッカーを今年も継続する。今季の補強は新戦力・レンタル復帰組を含め、将来的な意味合いが強いものだった。ミハイロ・ペトロビッチ監督は基本的にはメンバーを固定して戦うスタイルだ。年間勝ち点1位でリーグ戦を締めくくりながら、チャンピオンシップで鹿島に苦杯を舐めさせられたリベンジに燃えている。

 

 3-4-2-1のフォーメーションは今季も健在である。指揮官は独特なサッカースタイルを標榜するため、選手に求められるものは多い。そのため、メンバーを固定せざるを得ないのかもしれない。特に前線の3人、ボランチ、3バックの両サイドは複雑な動きを要求される。常時スタメンが揃えられれば強いが、アクシデントで抜けた時にバックアップが踏ん張れるかがカギを握る。リオデジャネイロ五輪でも活躍したMF矢島慎也がボランチで起用されるのか。それとも2シャドーの1人として起用されるのか。浦和ユース育ちの矢島の奮起に期待したい。

 

 今季のJ1は3年ぶりに1シーズン制に戻る。トップと勝ち点差15の年間3位で優勝した昨季の鹿島のような大逆転劇は起こりえない。12月にはどのクラブがJの頂点に立っているのだろうか。

 

(文/大木雄貴)