ついにW杯アジア最終予選の後半戦がスタートしました。日本は24日にアウェーでUAE代表、28日にホームでタイ代表と対戦。UAEには2-0、タイには4-0で勝利し、日本はB組首位に浮上しました。この勢いを大事にしてほしいです。

 

 まず、2戦を通じてFW久保裕也の活躍は素晴らしかったです。2試合連続ゴールで目に見える結果を残しました。クロスでのアシスト、裏を狙う動きの質も高かったです。本来はセンターフォワードの選手ですが、代表では右サイドです。右サイドからボールをもらう前の駆け引きで斜めに走り、ゴール前に侵入する。ドリブルで縦に突破する。久保の存在が日本の攻撃オプションを増やしたといっても過言ではないでしょう。

 

 それにヴァイッド・ハリルホジッチ監督の選手起用も冴えていました。特に「ベテランの経験を優先する」と、MF今野泰幸を2年ぶりに代表に呼びました。今野もUAE戦でゴールを決めましたが、ボールを奪いに行くところ、奪いに行かずに相手の攻撃を遅らせるところの状況判断が良かったように思います。

 

必死の長友のプレー

 

 大勝はしましたが、タイ戦ではミスも目立ったことが気になります。ショートパスを相手にカットされて危険な場面を作られました。ロングパスを使う場面と、短いパスを繋ぐ場面と強弱をもっとつけたいですね。ただ、タイからは“良いサッカーを目指すんだ”という姿勢が感じられ、僕には今回のタイがかつての日本代表のように見えました。勝ちきれないけども、一生懸命にプレーする。“昔の日本もこんな感じだったなあ”と思いました。きっとこの先、タイは面白いチームになると思います。

 

 日本のポジティブな材料に目を向けましょう。FW岡崎慎司が代表通算50得点を決めました。低いクロスにダイビングヘッドで合わせた、岡崎らしいゴールでした。解説をしていたゴン(中山雅史)もあのゴールを見て燃えたのではないでしょうか(笑)。泥臭くもあのような魂のこもったプレーは他の選手たちの士気も高まるものです。DF目線であのゴールを分析すると、岡崎が死角から飛び込んできて、うまくボールに合わされました。岡崎をきちんと自分の視野に入れていない時点でDFの駆け引き負けですね。

 

 もうひとつ印象的なプレーがありました。後半40分にDF長友佑都がPKを取られた場面です。長友はゴール前でキックミスをして相手にボールが渡ったところで、体ごと突っ込んでシュートを阻止して反則を取られてしまった。結果的にGK川島永嗣のビッグセーブで切り抜けました。

 

「4点もリードしているのだから、そこまでしなくてもいいじゃないか」と思う人もいるかもしれません。ですが、僕からすれば「DFだったら、やって当然のプレー」です。何としてでも相手にシュートを打たせたくない。あの行動はDFとしての責任感が起こさせたものだと思います。そして、きっと長友はGKである川島を信頼しているからこそのプレーだったのではないでしょうか。

 

 日本代表の次戦は6月です。13日のアジア最終予選のイラク戦の前に、7日にシリア戦が行われます。ここで大幅にメンバーを入れ替えても面白いですよね。特に、センターバックはDF吉田麻也とDF森重真人が累積警告やアクシデントで出場できなくとなると厳しい状況になります。DF陣のバックアップメンバーには、この親善試合でアピールする場面があると理想的だなと思います。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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