Bリーグトロフィー加工済み

(写真:NBAなどと同じティファニー社製トロフィーを手にするのはどちらか)

 今季より新たにスタートした男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」は27日、ファイナルを迎える。ここまでチャンピオンシップ(CS)を勝ち上がってきた中地区1位の川崎ブレイブサンダースと、東地区1位の栃木ブレックス。初代王座をかけて、東京・代々木第一体育館で相まみえる。

 

 組織で突き刺す矛・川崎

 

 川崎はNBLのラストシーズンを制した強豪だ。B.LEAGUE初年度の今季、レギュラーシーズンでの49勝11敗は全体トップの数字である。勝率はリーグで唯一8割を超える。最大の武器は攻撃力だ。1試合における平均得点84.3点はリーグトップ。210cmの長身でシュートエリアも広い得点王Cニック・ファジーカス、日本代表SGのシューター辻直人を中心とした攻撃陣は破壊力抜群である。

 

 就任6年目の北卓也ヘッドコーチ(HC)は語る。

「チームの強みはスタッツ上では反対になるのですが、ディフェンスですね。ディフェンスをハードにやるとオフェンスもいい流れになる。あとはチーム力。ファジーカスや辻といったチームのエース的存在はいますが、組織力でこの成績を出せている。『川崎はチーム力が一番だな』と言われることが僕にとってはうれしいことです」

 

ファジーカス加工済み

(写真:ファジーカス〈22〉はインサイドだけでなくアウトサイドからもシュートを打てる)

 トランジション(攻守の切り替え)が目まぐるしいバスケットボールにおいて、オフェンスとディフェンスは表裏一体である。つまり川崎が攻撃力を売り物にできるのは守備に穴がないからだ、ということもできる。キャプテンで司令塔のPG篠山竜青は川崎の強みを、こう説明する。

「ニック(ファジーカス)、辻もそうですが、他にもコンスタントに2ケタ得点を取れる選手が増えてきました。1試合で80点台から90点台までの得点を取れるチームになった。あとはディフェンスの部分で70点台に抑えるということができれば結果につながる。得点力と、(前身の)東芝の時代から伝統としてあるディフェンスが強みかなと思います」

 

辻座りマイク持ち加工済み

(写真:日本代表にも選ばれている辻。ファイナルのMVPも狙っている)

 60試合で11しか負けなかったとはいえ、楽なシーズンだったわけではない。1月下旬にはPFライアン・スパングラーが左ヒザの故障で3カ月離脱した。辻も2月と4月に戦列から離れた。2ケタ得点が期待できる中心選手の不在。チームのピンチに他の選手たちが奮起した。「1人1人がチャンスだと思い、目的意識を持って練習からやった成果ではないでしょうか。特に若手は成長したと思います」とキャプテンの篠山。続けて辻は「今シーズン戦ってきてチーム力が上がったのかなと感じます。僕とかライアンがケガをして、いなかった時にそれぞれが個々の役割を果たしていた。個人個人がレベルアップしていると思います」と自信を覗かせた。

 

 川崎はCSクォーターファイナルでサンロッカーズ渋谷を下し、アルバルク東京とのセミファイナルでは第3戦までもつれながら制した。リーグ制覇まであと1勝。NBL最後のチャンピオン、そしてB.LEAGUEの初代チャンピオンへ。北HCは「変なプレッシャーはない。リーグが変わったことによって、誰も連覇だとは思っていない。チャレンジャーとして臨んでいく」と語気を強めた。

 

 制空権を支配する盾・栃木

 

 リーグ最強の攻撃が川崎なら、リーグ最強の守備を誇るのが栃木である。レギュラーシーズンの1試合平均は69.8失点だ。トーマス・ウィスマンHCは「自分たちはディフェンスにプライドをかけています」と胸を張る。失点をリーグ唯一の60点台に抑えることに成功した要因はリバウンドの獲得数に依る。1試合平均43.5。リバウンド王のPF/Cライアン・ロシター、アグレッシブなプレーを得意とするPF/Cジェフ・ギブスがゴール下の番人になっている。

 

田臥座りマイク加工済み

(写真:「チームを勝たせるのがPG」と語る司令塔の田臥)

 勢いに乗っているのは川崎よりも栃木の方かもしれない。本拠地ブレックスアリーナでのCSクォーターファイナルは千葉ジェッツに第2戦で最大22点差をひっくり返す大逆転。セミファイナルではシーホース三河に第3戦までもつれたものの、劇的な逆転勝ちを収めた。「チーム全員が信じ合ってやること。ホームコートでできたことが勝因」とキャプテンのPG田臥勇太は振り返った。

 

 セミファイナル第2戦の15分後に行われた第3戦、流れは第2戦をモノにした三河にあるかと思われた。試合時間残り30秒の時点では、三河に10-12とリードを許していた。リスタートは三河ボール。栃木にとっては絶体絶命のピンチのように映った。

 

 ここで三河PG比江島慎のパスをロシターがスティール。こぼれ球を拾ったギブスが前へ運び、PG/SG遠藤祐亮が同点ゴールをアシストした。この時点で試合時間は残り約20秒。三河の攻撃を耐え、ディフェンスリバウンドを奪った。そこから田臥が速攻を仕掛け、ファウルをもらう。残り5.9秒でタイムアウトを取り、最後の作戦を立てた。

 

ロシター加工済み

(写真:チームのトップスコアラーでもあるロシター)

「オレにボールをくれ」。エースのロシターには意地があった。63-65で落とした第2戦、終了間際にゴールを決め切れなかった。その悔しさを晴らす機会をチームも与える。ギブスからパスを受けたのは味方のスクリーンプレーでフリーになったロシターだ。ペイントエリアに潜り込み、レイアップシュートを決めた。残り2秒で勝ち越し。三河のロングシュートも枠を外れ、栃木がファイナル進出を決めた。ウィスマンHCは「これ以上ない試合。一番厳しい東地区を勝ち抜き、初戦で千葉を破り、今日は三河を破った。そしてリーグ最高勝率の川崎に挑む。最高のラストだと思います」と感慨深げに語った。

 

 川崎と栃木、レギュラーシーズンの勝敗は1勝1敗である。ファイナルは一発勝負。川崎のファジーカス、栃木のロシターは両チームの得点源であり、インサイドの支配者でもある。彼らの出来がゲームの行方を左右する。ともあれ泣いても笑ってもラスト1戦。B.LEAGUE初代王座に就くのは矛の川崎か、盾の栃木か。運命のティップオフは27日15 時。

 

 現在、BS11では「マイナビ Be a booster! B.LEAGUEウィークリーハイライト」(毎週木曜23時~23時30分)を放送中。5月25日(木)の放送ではチャンピオンシップセミファイナルのハイライトと「チームを支える裏方」を取り上げます。そして翌週の6月1日にはファイナルの激闘をじっくりお伝えします。是非ご視聴ください。


◎バックナンバーはこちらから