悪いニュースが飛び込んできた。

 

 ケルンに所属するFW大迫勇也が7月31日、親善試合のボローニャ戦で右足首を負傷した。翌日に精密検査を受け、ケルンは右足首じん帯損傷で数週間の離脱を強いられることを発表している。

 

 全治に約3週間かかると見立てたメディアもあるが、劇的な回復がない限りは20日のブンデスリーガ開幕戦に間に合わせることはまず無理だろう。その先にロシア行きの命運が懸かるW杯アジア最終予選の2連戦(8月31日の対オーストラリア戦、9月5日の対サウジアラビア戦)が待っているものの、基本的に招集は難しいとみていい。

 

 大迫は言うまでもなく、今のハリルジャパンに欠かせない選手だ。抜群のポストプレーを持ち味に、その存在感は際立っている。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も全幅の信頼を置いていることはよく分かる。

 

「復帰見込み」で招集する可能性も否定できなくはない。なぜなら指揮官は6月のイラク戦のメンバーに、今野泰幸をケガからリーグ戦に復帰できていない段階で招集を発表した前例があるからだ。3月のUAEとのアウェイマッチにおける勝利は、まさに今野の活躍が大きかった。しかし親善試合のシリア戦で先発させたものの、本番のイラク戦では先発を回避している。コンディションよりアウェイでの肉弾戦を想定して作戦面を重視したが、先発で起用できる状態ではなかったということ。指揮官はその教訓を得たはずである。

 

 ケガの不安を抱える選手を呼べない理由はほかにもある。

 

 今回は親善試合を挟まない。つまりコンディションを調整できる試合がなく、いきなり本番を迎えることになるからだ。

 

 オーストラリアに勝ってW杯行きを決めることができればいいが、もし引き分け以下に終わればアウェイのサウジアラビア戦が「最大のヤマ場」になる。登録メンバーは23人。総力戦になることを考えても、ケガの不安がある選手を抱えておく余裕はない。いくらエースストライカーとはいえ、劇的な回復が見込めないとなれば招集を見送るべきというのが筆者の意見である。

 

 今回のメンバー選考は実に難しいと言える。

 

 欧州組はシーズンが開幕したばかりでW杯アジア最終予選を迎えることになる。国内組はシーズン中といっても、夏場の疲れが出てくる時期でもある。調子のいい選手、コンディションのいい選手を見極めなければならない。

 

 重要な一戦ゆえ、経験値重視の選考になることは間違いない。

 

 ケガ明けであっても長谷部誠(フランクフルト)や香川真司(ドルトムント)たちが外れることはないだろう。だが同時に、「絶好調」の選手も必要である。ただ連係を合わせていく時間は限られているため、一度でもハリルジャパンを経験している選手のほうがベターだ。

 

 国内組で言えば、たとえばフォワードなら上り調子にある小林悠(川崎フロンターレ)、金崎夢生(鹿島アントラーズ)、川又堅碁(ジュビロ磐田)あたりが候補になってくるだろうか。

 

 経験とコンディションと勢い――。

 

 ハリルホジッチ監督は5日に来日して、随時Jリーグの試合を視察していくという。欧州のシーズンが開幕する前に、まずはタフな2連戦を戦い抜ける国内組の“夏男”を見つけ出してほしい。


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