ロシアW杯アジア最終予選も残り2戦となりました。日本代表(FIFAランキング44位)は31日に埼玉スタジアムでオーストラリア代表(同45位)と戦い、5日(日本時間6日)にアウェーでサウジアラビア代表(同59位)と対戦します。どちらかの試合で勝利すればロシア行きの切符を手にできます。ぜひともホームのオーストラリア戦で6大会連続6度目のW杯出場を決めてほしいですね。

 

 28日現在、日本は勝ち点17でグループBの首位です。2位は同16のサウジアラビア。同16ながら得失点差の関係でオーストラリアが3位につけています。次節でW杯出場を確定できる可能性があるのは日本代表だけです。

 

 しかし、主力のMF香川真司、MF長谷部誠、FW大迫勇也ら故障明けの選手が目立ちます。日本を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「今までで、リストを作るのが一番難しかった」と言うように、メンバー選考には悩んだと思います。現体制になってW杯予選で最多の27人を選出しました。FW登録は9名と力の入れ具合が伝わってきます。実際に自分の目で選手の状態を見て、23人に絞りたいのでしょう。招集した選手の大半は今までハリルホジッチの下でプレーしてきた選手たちです。交代枠をうまく使いながら、攻撃的な試合運びを考えていると思います。

 

 今回のメンバーの中で面白そうだなと思ったのはMF小林祐希とMF柴崎岳です。両者ともボランチもこなせますが指揮官の構想ではトップ下のようですね。

 

 小林は身長182センチと高さもありますので、オーストラリアの屈強なDF陣にも対抗できます。また強烈な左足のミドルも武器ですが、つなぐ時にはきちんとつなげられる技術もある。若手ながら冷静な判断が光るプレーヤーです。もし出場機会が与えられれば、得意の左足で決定的な仕事をしてほしいです。

 

 柴崎は今季からスペイン1部のヘタフェに活躍の場を移しました。昨季から同国2部でプレーをして徐々に頭角を現した。スペインでの彼の評価も高まっているようです。ヘタフェでも10番を背負い、トップ下で中心的な役割を担っています。自信を持ってクラブでプレーできていますから、それを代表でも遺憾なく発揮してほしい。ここで結果を出せばFW本田圭佑や香川のような存在になれるのでは、と期待しています。

 

 これまでとは違うオーストラリアのサッカー

 

 オーストラリアかサウジアラビアのどちらかに勝てば……という条件ですが、個人的には目の前のオーストラリア戦に集中してもらいたいです。サウジアラビアとはアウェーで

の対戦。気温は40度近い過酷な条件が予想されます。ぜひともホームで決めたいですね。オーストラリアのスタイルといえば、長いフィードでボールを運んでくる。セカンドボールをパワフルなプレーで奪取しゴールに迫ってきます。これが今まで彼らが得意としていたパターンです。この戦術に今までの日本は手を焼いていました。

 

 しかし、今年の6月から7月にかけて行われたコンフェデレーションズカップでのオーストラリアはパスを主体としたサッカーでした。僕はこのスタイルのまま日本と対戦してくれれば、以前のオーストラリアよりも戦いやすいのではないか、と思います。

 

 相手に裏を取られることなく、自分たちの前でボールを回させる。そして、パスコースを絞ってボールを奪う。この戦い方をすれば日本が有利なのではないでしょうか。厄介なのはオーストラリアがショートパスとロングパスを使い分ける器用さを発揮してきた時です。意図的に細かいパス回しで日本陣形を片方に寄せて、ロングフィードで逆サイドに振られると危険です。前線から追い込むのであれば、相手にロングボールを蹴らせないためにアグレッシブにプレスを掛ける。意思統一をしっかり図り、全体をコンパクトに保ちたいですね。

 

 泣いても笑っても残り2戦。3位になるとプレーオフに回らないといけません。せっかくホームでロシア行きのチケットを手にできるチャンスがあるのですから、選手たちには頑張ってほしいです。皆さんも、心の底から日本代表にエールを送りましょう。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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