ワンチャンスがラストチャンスになるかもしれない。

 来夏のロシアワールドカップ行きを決めた日本代表は6日にニュージーランド代表(豊田スタジアム)、10日にハイチ代表(日産スタジアム)と対戦する。

 

 選ばれた24人の中、新顔は左サイドバックの車屋紳太郎1人にとどまった。これは現有戦力を見極めるという意図だと解釈している。アジア最終予選のオーストラリア戦、サウジアラビア戦に招集されながら出番がなかったのは、東口順昭、中村航輔、槙野智章、酒井高徳、植田直通、香川真司、小林祐希、武藤嘉紀と8選手もいる。わずかな出場時間に終わった久保裕也、杉本健勇を含め、まずは彼らにチャンスが与えられるのではないかと思う。

 

 この中で「後がない」と言えるのが、小林と武藤だ。

 

 小林は昨年11月の親善試合オマーン戦以来、出場がない。ケガで離脱していた武藤は昨年9月のアジア最終予選タイ戦が最後のゲームとなっている。チャンスをもらっていないのに「後がない」と表現するのはいささか気が引けるものの、ハリルジャパンで実績がない海外組にとって岡崎慎司、本田圭佑、長谷部誠、柴崎岳らがいない状況はビッグチャンスであると同時に、ラストチャンスになる可能性も秘めている。

 

 というのも11月の海外遠征は、ブラジル代表、ベルギー代表という強豪との対戦が決定した。ベストメンバーで臨むことが予想され、10月の試合で結果を残しておかなければ招集されないことも十分にあり得る。逆に国内組はアピールの場として12月の東アジアE-1選手権が残されている。この状況を考えると、小林と武藤は今回のチャンスを逃がしてしまえば、次にその機会がいつ来るか分からない。

 

 この2人は、今がまさに旬だ。

 

 小林は今季もヘーレンフェーンでレギュラーを張り、9月23日のヴィレムⅡ戦ではミドルシュートを決めている。10月1日のアヤックスで0-4と大敗して5位まで順位を下げたものの、チーム状態は悪くない。彼はオランダでプレーの幅を広げており、トップ下、インサイドハーフ、ボランチと中盤ならどこでもこなせる。守備の貢献や球際の強さも目立っており、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の好みになっている。

 

 本田が招集されなかったことで左のキッカーとしても期待が懸かる。テクニックとデュエル、そして状況判断の良さをアピールしたいところだろう。

一方の武藤は9月20日のホッフェンハイム戦、ゴール前で3人を抜き去って左足でゴールを奪うと、30日のヴォルフスブルク戦では豪快なヘディング弾で今季3得点目をマークしている。代表では主に左サイドで起用されてきたが、マインツのように1トップでプレーさせても面白い。

 

 小林と武藤は、同じプラチナ世代の25歳。彼らの突き上げが、代表の活性化につながることは言うまでもない。

 

 思い起こせば、本田圭佑も南アフリカW杯の前年までは控え扱いだった。5カ月ぶりに先発した2009年10月の親善試合スコットランド戦でゴールを決めて結果を出し、自分の地位を築いていった。本田の再現を狙うには、この10月こそが勝負なのである。

 

 ハリルホジッチ監督はメンバー発表会見で2人についてこう口にしている。

「小林は(クラブで)試合に出続けている。点も取っている」

「武藤も試合に出るようになった。大迫(勇也)、杉本とは特徴の違う選手だ。今回、岡崎がリストに入っていないのは、杉本と武藤にチャンスを与えたいと思ったからだ」

 

 多く言及しているわけではないが、クラブでのプレーを評価していることは伝わってきた。

 チャンスをモノにできるかどうかは本人たち次第。プラチナ世代の2人にまずは注目したい。


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