第212回 「プロレスが死んだ日。」 ~『PRIDE1』ヒクソンvs.髙田戦から20年を経て~

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(写真:ヒクソン<上>と髙田は『PRIDE」のリングで2度対戦)

「この戦いを見終わったら、もう20世紀も、終わっていい」

 1997年10月11日、東京ドームで開催された伝説の格闘技イベント『PRIDE1』のキャッチコピーである。

 

 このフレーズは、決して大袈裟なものではなかった。

 ヒクソン・グレイシーvs.髙田延彦。

 

 試合内容を鑑みれば、決して名勝負と呼べるものではない。両者の間には明確な実力差があり、ヒクソンの圧勝に終わっている。それでも、歴史的な一戦であったことは間違いないだろう。あれから20年が経つ――。

 

 いまMMA(ミクスド・マーシャルアーツ=総合格闘技)はルールが整備され、競技として確立された。そして世界各地で数多くの大会が開かれている。UFCをはじめ、RIZIN、Bellator、修斗、パンクラス、DEEP等々。選手個々の技術も向上、かなりのハイレベルな闘いが随所に繰り広げられている。そして、リアルファイトとしての総合格闘技、肉体エンターテインメントであるプロレスの棲み分けもハッキリとした。

 

 だが20年前はそうではなかった。

 プロレスをリアルファイト視する者も少なくなかったのである。よって、ヒクソンvs.髙田は「グレイシー柔術vs.プロレス」の闘いだったのだ。そして、この試合の結果を受けてプロレス時代から総合格闘技時代へと移行していく。ご存知の通り、『PRIDE隆盛期』が築かれていった。

 

 そう、1997年10月11日は、リアルファイト幻想を纏っていた「プロレスが死んだ日。」だったのである。

 

 ヒクソンが語るMMAの現状

 

(写真:最初の対戦は1ラウンド4分47秒で試合が終わった)

 ヒクソンも髙田も、すでに現役を引退している。

 髙田はタレント活動を行うと同時に『RIZIN』の統括本部長を務めている。ヒクソンは最近、米国籍を取得。サンタモニカで20歳ほど年下の新カシアとサーフィン生活を満喫、また世界各地に赴いて柔術セミナーも開いている。息子クロンの道場にも、よく顔を出す。クロンが試合をする際には必ず来日し、セコンドにもついている。

 

 そんなヒクソンに尋ねてみた。

 MMAの現状を、どう見ているのか、と。

 

 彼は答えた。

「MMAの発展を私は望んでいる。その中でクロンが成長していくことも楽しみにしている。レベルは世界的に高まっているんじゃないかな」

 

――でも、あなたが闘っていたバーリ・トゥードと現在のMMAは決して同じではありませんね。

「その通りだ。バーリ・トゥードとMMAは同じではない。私の父エリオ、そして私はバーリ・トゥードを闘い続けたが、クロンはMMAを闘っている。いまではストリートファイトもほとんどないし、バーリ・トゥードも存在していない。20年前のタカダ戦、そして最後の試合となったフナキ(船木誠勝)戦は、私にとって、気持ち的にはバーリ・トゥードだった。でも、時代は移り変わっていくんだ。それでいいと思う」

 

 20年前、髙田が腕を極められて敗れた時には、切ない気持ちにはなったけれど、あの試合を熱い想いを抱いて観ることができたことを、いまも私は幸せに感じている。

 

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近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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