1部昇格後最多の8勝&国体V、来季に繋がる戦い ~伊予銀行女子ソフトボール部~
日本女子ソフトボールリーグ1部の伊予銀行VERTZは8勝14敗の10位で今季を終えた。目標の5割には届かなかったが、勝ち星の数は1部昇格後最多だ。全日本総合女子選手権でベスト4。地元開催の「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」では、伊予銀行を中心にしたメンバー構成で臨み、成年女子で7年ぶりの優勝を果たした。充実のシーズンを振り返る。
「1年1年力はついてきている。昨季踏ん張り切れなかったところが、今季は勝ち切れるようになったのかなと思います」
指揮を執ってから3年目の秋元理紗監督は選手たちの成長を感じている。
今季チームの総得点は48点。1試合平均2.18点は昨季よりも上積みが見られた。指揮官の言う「踏ん張り切れなかったところが、勝ち切れるようになった」とは、6つあった1点差負けが4つに、8つあった完封負けが5つに減ったことで表れている。
最終戦となった日本精工Brave Bearies戦はタイブレークとなった延長8回表に2点を先制されながら、その裏に逆転サヨナラ勝ちで締めくくった。負け試合を土壇場でひっくり返せたのは、地力が付いてきたとも言えるだろう。
「軸になるバッター對馬(弥子)、加藤(文恵)らがいい仕事をしてくれました。他の選手も状況に応じて役割を果たした時は結果も伴ってきた」
主にトップバッターを任された對馬は打率2割6分1厘ながら出塁率は3割6分3厘。パンチ力のある加藤は4本塁打、14打点を記録した。
ピッチャー陣は引退したエース木村久美の穴を懸念されたが、昨季0勝の内海花菜と庄司奈々が踏ん張った。「昨季から試合には投げていましたが、勝ち切れないところがあった。それがひとつステップアップし、勝ちに繋がるようなピッチングができるようになりました」と秋元監督。内海は5勝を挙げ、防御率1.48をマークした。庄司は3勝で防御率2.83だった。
特に内海は防御率でリーグ4位に入った。4年目のサウスポーは昨季の開幕投手。だがリーグ戦で白星を挙げられぬまま、シーズンを終えた。
「去年は“自分がエース”というつもりで投げていましたが、結局、木村さんに頼らせてもらうことが多かった。自立できない1年でしたが、今年は木村さんが抜けられた。“今年こそ自分がやってやる”という気持ちでいました」
木村の穴を補って余りある活躍だった。それでも彼女はこの結果に満足していない。「課題を潰していけば、もっと上にいける。満足しないで向上していきたいと思います」と内海。彼女と庄司、先発2本柱の確立しつつあることは来季に向けて大きな自信となる。
10月初旬に行われた地元開催の愛媛国体では、2010年の「ゆめ半島千葉国体」以来、2度目の優勝を果たした。だが、7年前は降雨の影響で日程が消化できなかったためベスト8に残った8チームが同時優勝したもの。実質初の国体制覇だった。
国体で指揮を執ったのは、伊予銀行の酒井秀和総監督だ。秋元監督も国体では記録員としてベンチ入り。酒井総監督をサポートした。かつて伊予銀行で酒井監督、秋元コーチ体制の時期があった。「その感覚でやっていました」と秋元監督は振り返る。酒井総監督を陰ながら支えた。
伊予銀行のメンバーをベースに愛媛県出身の長﨑望未と山下りら(いずれもトヨタ自動車レッドテリアーズ)が加わった13人で国体に臨んだ。日本リーグと比べればベンチ入り人数は少ない。そこで今回、キャッチャーは二宮はな1人だけ。緊急事態となれば加藤がマスクを被れるが、酒井総監督は「昨年はピッチャー2人で失敗したこともあり、3人でいきました」と投手3枚(内海、庄司、山口清楓)を入れることを選択した。
地元の声援に背中を押され、愛媛県代表は躍動した。初戦となった準々決勝は岡山県代表と対戦。樋口菜美と加藤のホームランなどで6点をリードし、投げては庄司がシャットアウト勝ちだった。酒井総監督が「あれはまさしく応援の力ですね」と振り返るのは兵庫県代表との準決勝だ。試合は4-1と3点をリードしながら5回裏に追いつかれた。6回表に相手のバッテリーミスなどで勝ち越した。
「応援が力になった」と選手たちも口揃えて言っていた。内海は「期待されている分、プレッシャーはすごくありました。でも、いざ試合となってみると応援がすごい後押しをしてくれた。自分たちが試合をしやすい環境をつくってもらえました」と感謝の言葉を口にする。
愛知県代表との決勝は1-1で迎えた6回裏、1死一塁から樋口が右中間へツーベースを放つ。一塁ランナーが一気に本塁へ還り、勝ち越した。二宮、松成あゆみにもタイムリーが生まれ、3点のリードを奪った。先発の内海は最後のバッターをレフトフライに打ち取って、ゲームセット。歓喜の瞬間を迎えた。
充実のシーズンを終え、伊予銀行の選手たちが得た経験、掴んだ自信は例年以上と言っていいだろう。更なる飛躍へ。早くも来季が待ち遠しい。