二宮清純: 今回の「この人と飲みたい」は、プロゴルファーの鈴木規夫さんをお迎えしました。
鈴木規夫 今日はおいしいお酒がいただけると聞き、楽しみにしていたんですよ。

 

二宮: お酒との付き合いはどれくらいですか?
鈴木 若いころから毎日、毎晩です。私の人生は、"常に酒とともにあり"ですから。

 

二宮: では今夜は、雲海酒造の本格芋焼酎『木挽BLUE』をお供にゴルフ談義とまいりましょう。
鈴木 よろしくお願いします。

 

 

 

 


 ジャンボを超えた松山

 

二宮: まずは『木挽BLUE』の香りを味わうためにロックでいきましょう。
鈴木 いただきます。おっ、マイルドな中にパンチがありますね。すいっと入ってきて、後味で芋の香りがグッときます。

 

二宮: ゴルフのショットにたとえるなら?
鈴木 うーん、マイルドな中にパンチがあるから……、アゲインスト(向かい風)にも負けない低い弾道のブレない球。ピシッと狙ったところに止まる。そういう強さがあるショットです。

 

二宮: いいですね。現役時代に鈴木さんが得意としていた低い弾道のショットを思い出しました。
鈴木 私は特にパンチショットと呼ばれる低弾道のボールが得意でした。これは風が強く「どうしようもないな、こりゃ」というときに打っていた決め球で、全英オープンでも打ちました。ピンを刺すようなボールです。

 

二宮: 全英といえば鈴木さんは76年、初挑戦で初日首位という快挙を見せました。最終順位10位も日本人最高。新聞で見て興奮したのを覚えています。
鈴木 今からもう40年以上前のことですが、全英での経験はプロゴルファーとして得がたい貴重なものだったと思っています。

 

二宮: 今、松山英樹選手が世界に挑んでいます。最新の世界ランクは4位。来季はメジャーで勝つんじゃないかと言われていますが、鈴木さんから見て松山選手は?
鈴木 彼は愛媛県の出身ですよね。私も今は大分県に住んでいますが、出身は香川県です。愛媛も香川と似た瀬戸内の実に穏やかな環境ですが、そこからよくぞあのハングリー精神を持つ強いゴルファーが出たな、と思っています。

 

二宮: 鈴木さんも瀬戸内が生んだ勝負強いゴルファーとして知られていましたよ。
鈴木 いやいや、私はひねくれものですから(笑)。松山は瀬戸内なのに、鳴門の渦潮で揉まれた徳島出身の尾崎将司に匹敵、いや超えたと言ってもいい。それくらい素晴らしい実績をすでに残していますよ。

 

二宮: 松山の良さはどういうところにありますか? よくハングリー精神があるのがいいと言われていますが……。
鈴木 私は「ハングリー精神」という言葉が実は好きじゃないんです。本当に貧乏でしたから(笑)。まあそれはさておき、松山は「勝つんだ!」という執念が見ているこちらにも伝わってくる。そういう気持ちの強さが一番の良さでしょうね。

 

二宮: 彼は日本人には珍しく、高い弾道で精度のいい球を打てる選手です。その秘密は?
鈴木 まずは体の強さと柔らかさです。基礎体力があり、そして柔軟性もある。あれだけのスイングをするということは小手先で振っても無理ですから、全身を使って振らなきゃいけない。手首、肘、肩、膝などすべての可動域に負担もかかりますが、体が強いからものともしないんでしょうね。

 

二宮: ゴルフに対する姿勢は?
鈴木 彼はすごく探究心があり、研究熱心です。しかも子供のときからお父さんに連れられて四国中のゴルフ場を回っていたのも良かった。私の持論として、ゴルファーを育てるのは試合、トーナメントなんです。

 

二宮: 場数を踏むということですか?
鈴木 はい。もちろん日々の練習やトレーニングは当然として、育つのは試合なんですよ。松山でいうとアマチュアのとき、アジア・アマ選手権で出場権を得て、2011年、オーガスタに出場しました。そこで27位に入ってベストアマに輝き、彼はぐんっと伸びました。

 

二宮: 一番伸びた部分は?
鈴木 オーガスタで戦ったことで対応能力がついたと思います。だから今、メジャーの過酷な環境でも戦えているんでしょう。

 

二宮: どんな状況でもアジャストできる適応力を身につけた、と。
鈴木 そうです。私も含めて、これまで何人もの日本人選手が海外に挑戦していますが、一番大切なのは適応力や対応力なんです。コースはもちろん言葉、文化、食事に自分をどう合わせるか。それも成功するゴルファーには必要な能力ですね。

 

 上げ潮に乗れるか、石川遼

 

二宮: 松山選手の活躍の陰で、石川遼選手が来季は国内に戦いの場を移すと言われています。石川選手の現状を鈴木さんはどう見ていますか。
鈴木 彼の体格、そして体力は松山に匹敵するものを持っています。ただ一度、挫折というものを味わい、なかなか上がっていけない状況で苦しんでいますね。ゴルフにも人生にも波があり、上がったり下がったりの繰り返しです。下がっているところから上げ潮に乗れれば、今までの何倍も上に行くこともできるんですが、なかなかそうなっていませんね。

 

二宮: 上げ潮に乗るのに必要条件は?
鈴木 これは私独自の表現ですが、新しい上げ潮を見つけるのにも、どん底に足がついている状態だと難しいんですよ。シード権を落としたり、今の石川の状況はまさにそれです。そこから這い上がるのには流れや環境を変える必要があります。だから日本に戻ってくるというのはいい判断だと思います。

 

二宮: 石川選手の登場で日本の男子ゴルフにスポットライトが当たりました。逆にそこで一気にスターになり、背伸びしてしまった部分もあったのでしょうか?

鈴木 まあ、アスリートというのは誰もが背伸びをするものです。ただ、背伸びの仕方次第です。上り坂のときはいくら背伸びして突っ張ってもいい。でも下り坂で同じように背伸びしていたら、うまくいかないでしょう。

 

二宮: 足りないのはメンタルなのか、技術なのか?

鈴木 準備と用意ができていないだけだと思ってます。当然、彼なりに準備も用意もして試合に臨んでいるでしょう。ただ彼の思ってる準備と用意が果たして正しいのかどうか、そこに原因があるような気がします。

 

二宮: 具体的には?
鈴木 これは石川のことというよりも一般論としてお話します。ゴルフは基本として「スクエアに構える」と言われています。

 

二宮: ボールとターゲットを結んだ線とスタンスした両足を平行にというものですね。私もなかなかできず苦労しています(笑)。
鈴木 ゴルフを始めたばかりのアマチュアの方からトッププロまで基本は同じです。ただ、どこでも「スクエアに構える」というわけにはいきません。ゴルフのコースは真っ平らなところばかりじゃない。でもそこで「スクエア、スクエア、スクエア……」とこだわっていたらどうなるか。頭でっかちのゴルフになってしまいます。

 

二宮:先ほどの適応力、対応力が必要ということですね。
鈴木 そうです。状況に応じて対応しなきゃいけないのに、オートマチックなゴルフになってしまうとスコアも伸びませんよ。

 

二宮: 石川選手に話を戻しましょう。彼の復活に必要なものは?
鈴木 流れというか、縁が変われば、彼も変わるでしょうかね。だから先ほども言いましたが、日本に戻ってくるのは素晴らしいことだと思います。日本では周囲の雑音が聞こえてくることもあるでしょう。でも、彼はまだまだいけます。まだやれます。だって彼には家族がいるでしょう。家族を養わなきゃいけないし、まだ26歳ですからこれからです。私の歳(66歳)まで生きていかなきゃいけませんから。

 

二宮: 鈴木さんもゴルフ一筋で家族を養ってきた、と。
鈴木 そうです。今では孫までいますから。「あんまりお酒飲んじゃダメー」と言われてますけど(笑)。

 

 「泣き虫野郎」には負けたくない

 

二宮: もうひとつ今季の男子ゴルフでは、宮里優作選手の逆転賞金王も話題になりました。
鈴木 いやー、だいぶ時間がかかりましたね。03年にプロになって14年ですから。彼を初めて見たのはアマチュアのころです。

 

二宮: 東北福祉大にいたときですね。
鈴木 はい。僕がツアーコースのセッティングをしていた太平洋クラブ御殿場のプロツアーに、宮里が招待アマチュアとして出場した。そのときはコースを120~150ヤードくらい長くして難易度を上げていたんですが、いとも簡単にスコア64で回ったんですよ。ベストアマチュアも獲って、「これはすごいのが出てきた。怪童だな」と思ったものです。

 

二宮: 怪童! 川岸良兼さんの再来ですか?
鈴木 ちょっと宮里は小粒だったけど、ショットもすごかったし楽しみにしてたんですよ。それが10年以上、何をしてたんだ、と。

 

二宮: 宮里選手の長所と弱点は?
鈴木 切れ味の鋭いショットでスコアを作れる、いわゆるショットメーカーなんです。ただ彼は後半のホールに弱かった。詰めが甘くて、それが原因でなかなか賞金王になれなかった。ゴルフというのはやはり後半が勝負なんですよ。例えば14番ホール、残り5ホールで5打差ならチャンスがあるし、18番で2打差でもチャンスがある。そこで詰めが甘いとなかなか頂点には立てない。

 

二宮: 賞金王を決めたツアー最終戦・日本シリーズJTカップは、15アンダーの62。最終日に1イーグル、6バーディーと驚異的なスコアでしたね。
鈴木 逆転賞金王のかかった試合でああいう圧倒的な勝ち方をした。宮里には来年の日本ゴルフ界を盛り上げる、導火線役になってもらいたいですね。

 

二宮: これで"藍ちゃんのお兄ちゃん"から卒業ですかね。
鈴木 宮里優作として一本立ちのシーズンになることを期待しています。でも、あの号泣シーンはいただけませんよ。

 

二宮: 賞金王を決めたときの?
鈴木 そうです。試合に勝って、賞金王をとって何をメソメソしているんだ、と。アスリートならグッと我慢しなきゃ。

 

二宮: 日曜朝のテレビ番組「サンデーモーニング」の張本勲さんじゃありませんが、「喝!」ですか?
鈴木 喝も喝、大喝です(笑)。まあ苦労もしたし、それを思い出してグッとくるのはわかる。だから涙はいい。我慢してもツツーッと流れ落ちるのはいいけど、一世一代の晴れ舞台であんなに泣いたら台無しですよ。

 

二宮: テレビでも新聞の一面でも大きく扱われていましたね。
鈴木 私が2位の選手だったら「こんな泣き虫野郎に負けたのか」と腹が立って仕方ないですね(笑)。まあ宮里はそういう優しい面も良さなんですが、ゴルフのときはもっとメンタルを強く持ってないとダメですね。

 

二宮: さて、まだまだ鈴木さんの現役時代のお話など、伺いたいことはたっぷりあります。
鈴木 では、おかわりをいただきながらお話しましょう。2杯目は私流の「お湯割り」はいかがでしょう?

 

(写真:お湯7、木挽BLUE3。先にお湯を入れてそこに焼酎を注ぐのが鈴木流)

二宮: おっ、どういうものですか。
鈴木 湯飲みにこうしてお湯を七分目まで入れます。そこに『木挽BLUE』を斜めに注ぐ。湯飲みになみなみと注いで出来上がりです。

 

二宮: おお、芋焼酎の香りがふわーっとしてきますね。
鈴木 でしょう。かき混ぜなくても、お湯の中で焼酎が自然にぐるぐる回って香りが立つんです。最初にいただいたロックもいいし、このお湯割りもいい。本格焼酎はどんな飲み方でもおいしいものですね。

 

二宮: 鈴木さんの好きな飲み方は?
鈴木 ロック、お湯割り、ソーダ割り、水割り、そしてストレート。なんでもござれです。季節や食事に合わせて臨機応変ですね。

 

二宮: お酒もゴルフと同じく適応力が肝心だ、と。
鈴木 そういうことです(笑)。

(後編へつづく)

 

<鈴木規夫(すずき・のりお)プロフィール>
1951年10月12日、香川県生まれ。近所のゴルフ場を遊び場として幼少期より芝生やラフの上を走り回っていた。プロテスト合格は72年、21歳のとき。73年、ミズノプロ新人で初優勝を飾り、74年、九州オープンゴルフ選手権に優勝。同オープンは78年まで5連覇を果たし、「九州の若鷹」との異名をとった。76年、全英オープンに出場。予選から挑戦し、本戦初日は日本人プレーヤー史上初のトップに立った。この年の全英10位は日本人過去最高。81年、マスターズ出場。ミズノオープン、全日空オープン、太平洋クラブマスターズなど国内ツアー通算16勝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、鈴木さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>
山半本店
東京都港区麻布十番1-6-7
TEL:03-3408-7877
営業時間:11:30~24:00(LO23:30)
定休日:無休(元日のみ休)

 

 

 

☆プレゼント☆  

鈴木さんの直筆サイン色紙を本格芋焼酎「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「鈴木規夫さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は18年1月11日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、鈴木規夫さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。


◎バックナンバーはこちらから