直接交渉を行ったMLB7球団の中で大谷翔平が選んだのはアメリカンリーグ西地区に所属するロサンゼルス・エンゼルスだった。

 


 エンゼルスは昨季、地区2位ながら80勝82敗と負け越している。メジャーリーガーの夢であるワールドシリーズ出場を果たしたいなら、別の選択肢があったはずだ。


 にもかかわらず大谷はエンゼルスを選んだ。最大の理由は“二刀流”を続ける上で最も適した球団だと判断したからだろう。


 ア・リーグは指名打者制を採用している。北海道日本ハム時代に二刀流の練習法をほぼ確立していた大谷にとって、同じ環境に身を置きたいとの思いは私たちが想像する以上に強かったはずだ。


 また本拠地球場のあるアナハイム市はロサンゼルス市南東に位置する治安のいい町で気候的にも恵まれている。


 今年10月に右足首を手術した大谷が、春先には冷え込む日が多いボストンやニューヨーク、あるいは五大湖周辺のチームより西海岸の南側のチームの方がやりやすいと考えたのは当然だ。


 7球団の中にはテキサスも含まれていたが、夏場、ここは暑過ぎる。岩手育ちの大谷には酷だろう。


 スポニチ紙(12月10日付け)の報道によると交渉にあたりエンゼルスは、<現役最多通算614本塁打のスーパースター、(アルバート)プホルスを一塁と併用することで、大谷のためにDHの枠を空けるプランを披露した>という。


 要するに打者としてスタメンに名を連ねるにあたり、大谷はDHとして出場し、プホルスが一塁に回るというのだ。


 ここまで具体的な提案をされれば、「イエス!」と言いたくもなる。


 球場から車で約10分の距離にディズニーランドがある。来年のゴールデンウィークや夏休みには大谷を見てミッキーマウスと遊ぶツアーが人気を集めそうだ。


 大谷が少々、気の毒なのは昨オフに成立した新労使定により、25歳未満のドラフト対象外の外国人選手はマイナー契約しか結べず、最高でも231万5000ドル(約2億6千万円)の契約金しか手にできない点だ。


 過去には松坂大輔(西武-レッドソックス)が6年総額5200万ドル(当時のレートで約60億8千万円)、ダルビッシュ有(日本ハム-レンジャーズ)が6年総額6000万ドル(約45億円)の報酬を得ている。


 市場価値が2億ドル(約227億円)といわれる大谷にとっては不本意な額だろうがカネは後からついてくる。まずは二刀流の実績作りからである。

 

<この原稿は2018年1月5・12日合併号『漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


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