Jリーグ得点王からワールドカップへ。

 2017年シーズン、川崎フロンターレのエース小林悠は最終節の大宮アルディージャ戦(12月2日)でハットトリックをマークした。チームを逆転優勝に導くとともに、通算23得点でこちらもセレッソ大阪の杉本健勇(22点)を逆転しての得点王となった。

 

 ワールドカップ前年の得点王が本大会のメンバーに選ばれた例と言えば、4年前の大久保嘉人である。フロンターレの先輩は移籍初年度で26得点を挙げて初の得点王となり、年が明けても好調を維持してブラジルワールドカップのメンバー入りを果たしている。小林も「大久保の道」を目指すことになる。

 

 本大会メンバー入りの可能性は十分にあると言っていい。

 

 JリーグMVPにも輝いた小林は勢いそのまま、シーズン直後の東アジアE-1選手権に臨み、3試合すべてに先発した。第2戦の中国戦、0-0で迎えた後半39分、ゴール前でこぼれたボールに追いつき、反転するや否や、角度のない位置から左足でゴールに放り込んで代表初ゴールを挙げた。

 

 試合後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は小林をこう称えている。

「サイドでも真ん中でもプレーできるので、かなり高いレベルで候補に入ると思う。以前は少し軽かったが、今はアグレッシブに戦える。フィジカルコンタクトも強くなって相手に対抗できている。今後も良いパフォーマンスが続けば、私も見続けるだろうし、候補にも入ってくるだろう」

 

 最終戦のライバル韓国に勝って好パフォーマンスを示せば、一歩本大会に近づくことになるはずだった。

 

 しかし韓国戦は思うようにはいかなかった。前半早々にPKで2試合連続のゴールを挙げたものの、受け身に回ったチームは4失点して大敗に終わった。小林もシュート2本に終わっている。

 取材エリアに現れた小林から硬い表情が崩れることはなかった。

「この3試合のなかでゴールは絶対に決めたいと思っていました。ワールドカップに近づけるかどうかじゃなく、自分のなかでゴールを決めるというのが最低条件でしたから。韓国戦で感じたことはありますし、それを持ち帰ってオフ明けからしっかりやれるようにしたい。ここで出た課題やフィジカルの部分はもっとやらなきゃいけない」

 

 その一方で、短期間ながら連係を深められたという手応えを感じることもできた。

「きょう(韓国戦)のメンバーだと(土居)聖真、(倉田)秋とか、時間を掛けていけばもっと(連係が)合っていくという感覚はあります。集まってからそんなに多くない時間のなかで、たとえばその2人とプレーで近づいたときにワクワクするようなこと(連係)はありましたし、それをもっと増やしていければいいな、と。うまくいかないときに、自分たちでどうしていくか、試合中にどんどん判断していかなきゃとは感じました」

 

 優勝できなかった悔しさは残りながらも、ロシア行きを目指す小林にとって実りある大会となったのは言うまでもない。

 

 ハリルホジッチ監督が探しているのは複数のポジションをこなせるポリバレントタイプ。その意味で小林はサイド、トップとテストされ、裏に抜けるスピード、守備力、タフネス、空中戦の強さなど、指揮官が求めている要素を持っている。本人が語ったようにレベルアップのポイントは、フィジカルの力強さだろうか。

 

 今季のJリーグは23日に開幕する。フロンターレは25日にアウェーでジュビロ磐田と対戦する。新シーズンに入ってもゴールを量産し、良いコンディションを維持していけばロシア行きは見えてくるはずだ。

 

 逆転のワールドカップメンバー入りなるか――。小林の猛チャージに注目したい。


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