平昌オリンピックが終了し、パラリンピックも日本選手の活躍で沸いている。

 もちろん僕は思いきり気持ちをこめて応援しているし、日本のほとんどの皆さんもそうだろう。でも、世界的に見ると自国の選手が出て結果を残していなければ盛り上がりに欠けるし、なにしろ開催地の韓国でさえそれほどでもない。日本であれだけ盛り上がっていたカーリング女子3位決定戦(日本対英国)も現地では空席が目立ち、それを映し出さないようにカメラのスイッチングに苦労していたという。やはり他国の活躍では注目されないのか……。本来のオリンピックはそうあるべきでないと思うが、現実はなかなか厳しい。

 

 そんなオリンピックでもっとも感心したのは、スピードスケート日本代表の躍進である。決して日本のお家芸とは言えないスポーツにおいて、本家の欧州勢を押しやっての好成績には感心するばかり。本人の努力はもとより、関係者のご尽力に敬意を表したい。

 

 もちろん他の種目の選手たちも素晴らしかったし、そのパフォーマンスに何度も涙を流した。難癖をつけるつもりなどまったくないが、新種目はまだまだ発展途上のものもあり、どんどん技術が更新されていく。つまり歴史が浅い分、チャンスは幅広い国にあるわけで、ウインタースポーツの強い国でなくとも互角に戦える可能性は十分ある。スノーボートなどはその典型かもしれない。現状において人類最高の技を見せるショーン・ホワイト選手や平野歩夢選手の技には感嘆の声を上げるばかりだが、おそらくこの種目は今後も変化を見せていくだろう。

 

 しかし、歴史的にかなり研究されてきたアルペンスキーや、クロスカントリースキーにおいては欧米とアジアとの体力的な差、技術的な差は圧倒的で、アジアの選手は勝負に加わることができていない。他の種目のように日本選手が活躍できないので、あまり報道されないが、この差は認めざるを得ない。そういう意味では、コンバインドで渡部暁斗選手が好成績を挙げているのは素晴らしいことで、彼が欧州で認められているのは当然と言える。

 

 これからが正念場の女子ジャンプ

 

 歴史が浅いからこそ、変化の流れは速いということなのだろう。典型的なのは女子ジャンプだ。この種目は数シーズン前までは高梨沙羅選手の独壇場であった。飛べば勝つ、負けるほうがニュースになるというくらいの勢いだった。ところが先シーズンからマーレン・ルンビ選手、カタリナ・アルトハウス選手が急成長し、まったく状況が変わってしまった。

 

 関係者によると決して高梨選手のパフォーマンスが落ちたわけではないという。むしろ高梨選手の技術を研究していた欧州勢が追いついてきたということなのだ。勝つために絶対王者を研究するのは当然のこと。その技術を獲得した2人がフィジカルの高さと相まって好成績を収めている。体格に劣る高梨選手が欧米勢に技術的に追いつかれたならば、なかなか厳しい。この状況から巻き返すのは簡単ではない。それどころか、さらに他の選手が追いつき、追い越していく可能性だってある。女子ジャンプはこれからが正念場となると思われる。

 

 そう考えると、歴史あるスピードスケートで日本選手が活躍した意味は非常に大きいのではないかと思う。その価値はもっと話題にあがってもいいはずだ。様々な種目があり、それぞれの面白さがある中で、そんな風に見てしまう僕はひねくれているのかもしれないが……。

 

 ともあれ、今日もパラリンピックを応援しようっと!

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17年7月に東京都議会議員に初当選。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)などがある。

>>白戸太朗オフィシャルサイト
>>株式会社アスロニア ホームページ


◎バックナンバーはこちらから