国際親善試合とはいえ、W杯ロシア大会まで3カ月を切れば、結果と内容が問われるのは当たり前だ。

 

 

 結果よし、内容よし。これに勝るものはない。結果は付いてこなかったが内容はよし。これなら、まだ救いはある。

 

 結果悪し、内容も伴わず。これでは先が思いやられる。

 

 さる3月23日と27日にベルギー・リエージュで行われたマリ戦、ウクライナ戦は、まさしく最後のケースだった。

 

 日本はマリに対して1対1、ウクライナには1対2で敗れ、これで海外組を招集した試合で、5戦未勝利となった。

 

 8年前も本番前は散々だったじゃないか、との声もある。岡田武史監督率いる代表はセルビア、韓国、イングランド、コートジボワール相手に4連敗し、世界との差を痛感した。

 

 理想よりも現実。指揮官はパスサッカーを放棄し、守りを固める戦法にカジを切った。これが功を奏し、国外でのW杯で、初のベスト16進出を果たしたのである。

 

 その再現を望む声が強い。もちろん私もそのひとりだが、柳の下に二匹目のどじょうはいるのか。

 

 というのも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる今回のチームは、早い段階からポゼッション・サッカーに見切りをつけ、タテに速いリアクション・サッカーに取り組んできたからである。

 

 ならば、もう少しチームには熟成感があってもいい。それが感じられないから不安が深まっているのである。

 

 そんななか、存在感を発揮した選手がいた。ポルトガルリーグ1部のポルティモネンセでプレーする中島翔哉だ。

 

 マリ戦、後半15分から出場した初代表の中島には少々、無理をしてでもゴールに向かおうとする強い意志が感じられた。それが後半アディショナルタイムでの同点ゴールに結び付いたのだろう。

 

 身長164センチと小柄ながら、昔からテクニックにはキラリと光るものがあった。切れのあるドリブルに素早いボティターン。日本にいる頃は「ボールを持ち過ぎる」「球離れが悪い」と酷評されたこともあるが、そのセンスについては誰もが一目置いていた。

 

 昨年8月、FC東京からポルティモネンセに移籍。どうやら彼にはポルトガルの水が合っていたようだ。公式戦26試合で9ゴール7アシストを記録し、左サイドのアタッカーとしてレギュラーの座を確保した。

 

「中島は面白いよね」

 

 そう語るのは元日本代表FWの奥寺康彦だ。日本人として初めてブンデスリーガでプレーしたことで知られるレジェンドである。

 

「試合の途中から出場させると面白い。チームが停滞している時に起爆剤になってくれるんじゃないかな」

 

 元日本代表DFの大野俊三も「彼はカンフル剤になりえる」と評価する。

「中島には“ドリブル小僧”の一面があるけど、“ドリブル小僧”のままでいいじゃない。要は、この貴重なカードを監督がどう使いこなすかということ」

 

 ドリブル小僧には、網の目をすり抜ける小魚の役割が求められる。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2018年4月4日号に掲載されたものです>

 


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