第650回 今や懐かし、森祇晶の「悪役の正論」

facebook icon twitter icon

 西武の監督として8度のリーグ優勝と6度の日本一を達成した森祇晶さんがハワイのホノルルに移住してから14年になる。

 


 この2月には一時帰国し、宮崎で行なわれたジャイアンツ対ホークスのOB戦に参加していた。今年1月で81歳になった森さんだが、見る限り元気そのものだった。


 森さんの現役時代からのライバルにして盟友と言えば南海OBの野村克也さんである。森西武と野村ヤクルトは2度日本シリーズで名勝負を展開し、1勝1敗と星を分けた。


 同じキャッチャー出身ということもあり、2人は妙にウマが合った。巨人が日本シリーズで阪急と対戦する際、森さんは野村さんから阪急の情報を得ていたと言われる。


「いろんなことを教えたけど、森は中元も歳暮も送ってくれんかったなァ」


 いつだったか、野村さんは、例の口調でこうボヤいていた。


 森さんが日本にいる頃、当人の本を二冊ほどプロデュースした。そのうちの一冊が1999年4月に上梓した『悪役の正論』(ザ・マサダ)である。


 98年に巨人・長嶋茂雄監督の辞任が取り沙汰され、その後任として森さんの名前が浮上したことがある。この時の一部メディアの“森バッシング”は凄まじかった。監督としての能力を問うのではなく、人格攻撃がその大半を占めていた。


 同じ辛口でも愛想のいい野村さんに比べ、キャッチャー出身ながら無愛想な森さんにはアンチが多かった。しかし、本のタイトル通り、彼の指摘のほとんどは正論だったと思う。


 巨人出身ながら93年にスタートしたドラフトでの“逆指名制度”に対して、いち早く反対を表明し、「共存共栄こそがプロ野球の生き残る道」との持論を貫いた。


 聞くところによると、今はハワイで悠々自適の生活を送っているらしい。趣味はゴルフで仲間に手料理を振る舞う日々。羨ましい限りだが、時には帰国して、歯に衣着せない「悪役の正論」を主張してもらいたいものだ。

 

<この原稿は2018年4月9日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP