東京学芸大、全員でひとつひとつ ~全日本学生柔道優勝大会~

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(写真:大会直前の稽古でも和やかな雰囲気が流れていた)

 大学団体日本一を決める「全日本学生柔道優勝大会」(全日本学生優勝大会)は6月 23日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。今大会が第 27回目となる女子5人制の注目校は、5月に行われた東京学生柔道優勝大会を初優勝した東京学芸大学。これまで3人制で全日本学生優勝大会を制したことはあるが、5人制は参戦5年目だ。伝統校に挑む東京学芸大の主将・飯島彩加(4年)に大会にかける想いを訊いた。

 

――5月の東京学生柔道優勝大会の優勝おめでとうございます。まずは大会を振り返っていただけますか?

飯島彩加: ありがとうございます。東京学生には私も1年生の時から出場しています。これまでは7校総当たりのリーグ戦でいつも下位でした。個人戦では勝てないこともないので、“チーム力がないのかな”と迷った時もあったのですが、今回の優勝は自信になりました。

 

――今年はレギュレーションが変わり、トーナメント形式でした。一発勝負の怖さがあったのでは……。

飯島: これまでの結果もあり、私自身はなかなか勝つイメージが湧かなかったので、“1回戦で終わったらどうしよう”という不安がありました。それでもチームの雰囲気は良かった。みんなの応援が力になり、自分1人ではなくみんなと一緒に戦っているのがわかって、気持ちも乗りました。

 

(写真:高校時代には団体戦で全国制覇を経験した飯島<右>)

――勝ち上がっていくうちに雰囲気も良くなっていったと?

飯島: そうですね。初戦の国士舘大学との試合はみんなも勝てるかどうか不安はあったと思います。ただ、そこに勝ってからはとにかく試合が楽しく感じられました。“次も行こう!”と盛り上がり、気が付いたら決勝に進めていたんです。

 

――決勝は連覇を狙う帝京大学でした。

飯島: はい。“優勝しよう”というよりは、“楽しもう”と。試合前もリラックスして、しゃべりながら和気あいあいという雰囲気で決勝に挑んだ。本当に楽しみながら勝ちました。

 

――次は全日本学生優勝大会です。

飯島: 今のチームはすごくいい雰囲気で、ここまできています。東京学生を終えて、他の選手から「今回の団体戦が人生で一番楽しかった」という声を聞きました。応援していただている方や他大学の方から、「学芸、楽しそうだね」と言われることが選手としは本当にうれしい。そんな試合を全日本学生でもできたらいいと思っています。

 

 チームワークが武器

 

――今年度から主将を任されていますが、小中高での経験は?

飯島: ないです。副主将などはありますが、それも名前だけでチームをまとめていたというわけではありません。

 

――主将になってから気をつけていることはありますか?

飯島: 私はキャプテンになるまでは1人で黙々とトレーニングするタイプで、“他は他、自分は自分”でやってきました。でも昨年の5人制で負けて、“このままでは勝てない”と感じた。個人戦で出た際にはそれなりに結果を残している。しかし団体戦になると弱い。それは周りからも言われていました。それでチームワークが足りないのかなと思い、選手たちとのコミュニケーションを大事にするようにしたんです。今では自ら意識的に話かけるようにしています。

 

(写真:稽古の中に『研究』という思ったことを話し合う時間がある)

――稽古を見ても雰囲気の良さは伝わってきます。

飯島: 元々、上下関係も厳しくなく和気あいあいというのがウチのやり方です。学年間の壁がない。今年は特にその色が強いですね。出稽古に来た方から「学年どっちが上なの?」と聞かれるぐらい仲が良いんです。

 

――全日本学生優勝大会のイメージは?

飯島: 過去3年間はメンバーに入っていますが、昨年は試合には出られませんでした。全日本学生は特別な緊張感がありますね。1回勝つと全日本学生体重別団体の出場が決まる。それは学芸が5人制に出始めてからの目標です。でも、ここ数年、“1回勝とう”と意識し過ぎて、まだ勝てていません。全日本学生の壁は高いですね。

 

――改めて全日本学生優勝大会の目標を。

飯島: ひとつひとつ勝っていきたいなと思います。今までは“1回勝って尼崎に行こう”という目標を掲げていたんですが、私はこのチームでひとつでも多く、みんなと一緒に試合をしたいと思っています。ひとつひとつ、みんなと勝てていければいい。主将としてではなく、一選手として、みんながやりやすい雰囲気をつくっていけたらなと考えています。

 

 多様性を認める

 

 東京学生優勝大会の女子5人制優勝は国立大学としては初の快挙である。東京学芸大就任2年目の久保田浩史監督はどのようなマネジメントでチームを優勝に導いたのか。自主性を重んじる久保田監督の指導哲学を訊いた。

 

(写真:学生たちの自主性を重んじる久保田監督)

――初優勝を成し遂げた東京学生優勝大会。大会前から自信はありましたか?

久保田浩史: そうですね。元々、チームに力はあると感じていました。学生たちが良い緊張感で臨めた。私も「調子に乗っていこう!」をキーワードに学生たちを乗せるように心掛けました。

 

――今年から大会がトーナメント形式のレギュレーション変更となりました。

久保田: ウチは部員数も多くない。1日6試合のリーグ戦だと選手を休ませることも考えなければいけませんが、トーナメント方式だと最大でも3試合。しっかり集中力を保てば、いけるのではないかという思いがありました。

 

――初戦は国士舘大学に3-1。準決勝は東海大に2-1、決勝は帝京大に2-0で勝ちました。

久保田: 先鋒がポイントを取って流れを掴むパターンで勝ち上がりました。あの日は選手も比較的相性の良い相手と戦えた。オーダーは全くハマらない時もありますが、今回はその逆でした。

 

――昨年4月に監督に就任し、2年目を迎えています。

久保田: 昨年は私自身、“勝たせなくてはいけない”という思いが強過ぎた。例えば稽古に身が入っていないときに「気分が乗らなくてもやらなきゃダメだ」と指導していました。それを今年からは切り替えて、“ダメなときは無理しなくてもいい”と。そうすると学生たちは自分で気持ちをつくってくるんです。

 

(写真:人数が多くないため、男子部員相手に組み手をすることも)

――指導法を変えたきっかけは?

久保田: 2月にミーティングをしたときに学生ひとりひとりから意見を聞き、“強くなりたい”“勝ちたい”という思いを知ったからです。実はそれまで“本当に勝ちたいと思っているのか”と疑う気持ちもありました。だからこそ肩肘を張って指導していた部分もあった。学生たちは競技感を含め、みんなそれぞれ違う考えを持っている。それで多様性を認めていこうと方針を変えたんです。ただ自由と多様性を履き違えないようには注意しています。

 

 キープレーヤーは全員

 

――主将の飯島選手に対する評価は?

久保田: 彼女はすごく一生懸命に稽古をする。その姿勢は間違いなくチームに好影響を与えてくれています。

 

――彼女はチームの雰囲気づくりを大切にしていると言います。

久保田: 過去には試合が近付いてくると大会メンバーは頑張っても、そうでない学生のモチベーションは決して高くないという時期がありました。でも今年はみんなが試合に向けて盛り上がっている。男子も含めてすごくいい雰囲気になっています。実力関係なく、みんなで試合に向かっていくムードをできているように思います。

 

(写真:自らが乱取りの相手を務めることもある)

――さきほどの「調子に乗っていこう!」など、久保田監督はキーワードを大切にしている印象があります。

久保田: そうですね。青山学院大学陸上競技部の原晋監督の本も読んでいます。今回の全日本学生優勝大会は「ワクワク感」をキーワードに設けています。「ワクワク大作戦」と学生に話をしたら「それパクリじゃないですか」とツッコミを入れられたので「ワクドキ大作戦」にしました。私自身、このチームでどこまでいけるか、ワクワクしています。

 

――全日本学生優勝大会の目標は?

久保田: まずは1回戦に勝って勢いに乗りたいですね。東京学生の時も初戦しか考えていなかった。そこで調子に乗れればいけるなと思っていました。特に全日本学生ではこれまで一度も勝っていない。だからそういう呪縛から解き放たれれば、自ずと選手たちも勢いづくと考えています。

 

――組み合わせも決まり、対戦校の分析も重要になってきます。

久保田: そうですね。相手選手の高校時代からの情報を集めたりもしますし、練習試合や大会のビデオを観て対策を練ったりしています。

 

――今大会のキープレーヤーは?

久保田: 全員です。みんながエースで、みんなで勝負にいきます。少しでも上にいけるよう頑張ります!

 

 

飯島彩加(いいじま・さやか)プロフィール>

1996年8月15 日、千葉県生まれ。階級は 70kg級。友人から誘われ、小学1年で柔道を始める。福岡の強豪・敬愛高校に進学。2年時には個人で全国高校総合体育大会(インターハイ)出場した。団体戦では全国制覇を経験。 15年から東京学芸大に入学し、今年度より主将を務める。身長は 174cm。得意技は大外刈り。

 

 

 

久保田浩史(くぼた・ひろし)プロフィール>

1978年2月12 日、群馬県生まれ。父親の影響で小学校入学前から柔道を始める。高崎高校3年時は県大会ベスト8が最高成績。高校卒業後は筑波大学に進学し、同大学院の修士課程修了。筑波大の技官として勤めながら、柔道部コーチに。指導者としての経験を積むと、水戸葵陵高に赴任した。4年間で男女合わせて5度のインターハイ出場に導いた。その後、岐阜大柔道部監督を経て、 17年4月より東京学芸大柔道部監督に就任した。

 

 

 

 BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月24日(日)19時から放送します。今回取り上げた東京学芸大の他にも、5連覇のかかる山梨学院大にも注目が集まっています。男子は東海大学の3連覇に挑戦。昨年のリベンジに燃える明治大学や、日本大学、天理大学、筑波大学という名門校も王座を狙っています。是非放送をお見逃しなく!

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