辛口評論家、と言えばセルジオ越後さんだが、実は、彼にはルールがある。

 

 「高校生とかは絶対に批判しないよ。僕が辛口で接するのはプロだけ」

 

 その薫陶を受けた人間の一人としては、準優勝に終わったアジア大会の日本代表をどう評価するかは、ちょっと難しい部分がある。ご存じの通り、21歳以下の代表チームには、Jリーグでプレーしている選手だけでなく、大学生も多く含まれていたからである。

 

 正直、大会序盤の戦いぶりには失望させられた。技術や戦術をうんぬんする以前に、国際大会を戦い抜こう、ここで爪痕を残そうという気概のようなものが、ほとんど感じられなかったからである。

 

 ただ、勝ち進んでいくにつれ、選手はどんどんとたくましくなっていった。敗れたとはいえ、韓国と戦った決勝戦は、見ていて熱いものが込み上げてくるようだった。

 

 もちろん、物足りない部分はたくさんある。特に、モチベーションというか、試合開始からしばらくの時間、球際にかける闘争心の部分で韓国に劣っていたのは残念だった。

 

 相手は兵役免除がかかっていた?関係ない。もしそんな“ニンジン”が不可欠だというのであれば、W杯の優勝国はおしなべて徴兵制を導入していなければおかしい。ボールと相手を前にすれば、自動的に燃え上がるのが正しいサッカー選手のあり方である。日本の選手は、韓国の選手ほどには目の前の試合にかけていなかった。そのことは認めざるを得ない。

 

 だが、試合が進むにつれ、日本の選手はファイターになっていった。ここまでパッとしなかった三好は背中で仲間を引っ張ろうとし、何度も切り裂かれかけた最終ラインは感動的な奮闘でゴールを守り続けた。

 

 いい試合、だった。

 

 問題はこれからである。喉元を焼いたひりつくような熱さを、どれだけ保ち続けることができるか。小さなミスすら許されないという感覚を、どれだけ日常の試合に持ち込むことができるか。

 

 これからのJ1で、J2で、関東大学リーグで、どれだけ傑出した存在になれるか、なろうとするかで、未来は変わる。

 

 可能性は、見えた。

 

 森保監督が広島の指揮官になってすぐの練習試合を2月の沖縄で見たときのことだ。JFLでも下位に沈むことの多かったFC琉球と、彼らはほぼ互角の試合をやってしまった。試合後、琉球の選手が「広島ってあれで大丈夫なんですかね」といらぬ心配をしていたことを覚えている。

 

 だが、その年の秋、広島はJリーグを制した。ただ勝っただけでなく、内容も伴った偉大な勝利だった。

 

 クラブであれば、監督は選手の日常を知り、口酸っぱくして指示を出すこともできる。だが、代表チームは違う。選手がどれだけ自覚を持ち、自分に厳しい日常を送ることができるか――。

 

 おそらく、森保監督はインドネシアでの戦いぶりと成長に、大きな手応えを感じている。ただし、その手応えが形になるかどうかは、まず選手の覚悟にかかっている。

 

<この原稿は18年9月6日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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