さあ、いよいよあすはJリーグの開幕である。

 

<この原稿は19年2月21日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

 

 昨年も開幕は1試合だけが金曜日に行われ、ちょっとした話題を呼んだものだが、今回は相当にアツい。なにしろ、いきなりC大阪対神戸である。

 

 果たして、C大阪のファンは神戸の背番号5をつけることになった元キャプテンをいかなる反応で迎えるのか。一度は誓ったC大阪への愛を捨てた男は、どんな表情でかつての旧友たち、特にエースナンバー8を背負う男とどんな表情で握手を交わすのか。正直、試合が始まるまでの時間だけでお酒が飲めてしまうほどだ。

 

 しかも、いざ試合が始まればついに実現したビジャ、イニエスタ、ポドルスキによる“VIPトリオ”の共演を楽しむことができる。Jリーグ史上もっとも豪華といっても過言ではない3人のコンビネーションが、いかなるハーモニーを奏でるのか。興味はつきない。

 

 おそらく、今季も優勝争いは川崎Fを中心に展開されていくことになるのだろうが、勝っても負けても、神戸が常に注目されていくのは間違いない。

 

 着実に成長はしていたものの、どこか華のなかったJリーグが次のステージに続くためには、創設期のような、ライトなファンを取り込む手法も必要になってくる。世界のスターを集めてくる神戸のやり方は、Jリーグがいつのまにか忘れてしまった王道の集客策でもあり、個人的には、ぜひとも「神戸だけに美味しいところを持っていかれてたまるか」とライバル心をむき出しにするチームの出現を期待している。

 

 ただ、そのためにはもっとJリーグにお金が集まる仕組み、あるいは企業やスポンサーがお金を出しやすくなる仕組みを本気で考えていかなければいけない時期にきているのではないか。

 

 よく、中国リーグの爆買いが話題になった際、その理由のひとつとして国の経済力があげられているが、ならば、日本とて依然、世界3位の経済大国である。なぜGDPでは我が国よりはるかに下のイングランドやスペイン、フランスの方が大きなお金を生み出せているのか――。

 

 4年前はオーストラリアがそうだった。今回のUAEにも驚かされた。アジア杯が開催されるたび、かつては存在しなかった美しいスタジアムが会場として使用されている。アジアだけではない。多くの国々で、快適性と利便性に優れたスタジアムが次々と生まれている。もちろん、中には新設ではなく、改築でそうなっていくものもある。

 

 残念ながら、日本はその波から完全に取り残されてしまっている。

 

 どれほど素晴らしい選手を集めたところで、舞台がお粗末であれば魅力は半減してしまう。一向にスタジアムが変わらないいまの日本は、一流のオペラ歌手を音響効果の考えられていない体育館で歌わせているようなものである。

 

 アジア最高を狙うチームは珍しくなくなった。だが、自分たちのスタジアムはアジア最高だと胸を張れるチームが、どれだけあるだろう。そろそろ、次の段階に進むべき時ではないか……そんなことを考えながら、あすの開幕を待つ。


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