(写真:8000ヤード超のコースに意気込む里崎氏。指差す先は全英の舞台ロイヤル・ポートラッシュか?)

 

 

「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。今回は先に開催された「~全英への道~ミズノオープン at ザ・ロイヤル ゴルフクラブ」で国内トッププロが戦った8016ヤード(大会3日目)のツアー史上最長コースをそのままラウンドしてみました。"モンスター"と称されるザ・ロイヤルGCの本領が発揮される超ロングコースに挑んだのは、当コーナーレギュラープレーヤーの里崎智也さん。ミズノオープン出場者の小田教久プロとともに怪物の真髄に迫りました。奇しくも全英オープン開催中(7月18日~7月21日)の今、果たして2人の「全英への道」は!?

 

 「これがミズノOPの景色か」

 元プロ野球選手で現在は解説者として各方面で活躍中の里崎さんは、昨年11月にザ・ロイヤルGCを初ラウンドした。今回2度目の登場だが、実はザ・ロイヤルGCが気に入り、こっそりと何度か現地でラウンド、いわゆる「コソ練」をしていたという。「そうなんです。いいコースで気に入りました。最初は少し遠いかなと思っていた都内からのアクセスも東関東自動車道は渋滞もなく快適。今日はミズノオープンと同じ8000ヤード超のコースセッティングと聞いて、腕が鳴っています」と朝から意気込んでいた。

 

 この日、挑戦する舞台はミズノオープン3日目(決勝ラウンド1)と同じ8016ヤードのコース。優勝した池田勇太選手がこれをコースレコードの66で回り、23位タイから一気にトップに浮上したのは今年のミズノオープンのハイライトだった。

 

 今回の同行者はザ・ロイヤルGC所属の小田教久プロ。小田プロはミズノオープンで惜しくも予選落ちを喫し、"3日目"には進めず……。とはいうものの所属プロとして8000ヤードは何度もラウンド済み。「里崎さんに世界基準のコースを存分に楽しんでいただきましょう」と、ホスト役としてやる気満々である。

 

 INスタートの今回、10番ホールからプレー開始。各ホールのヤーデージは以下のとおりだ。

 

◎ミズノオープン再現コースのヤーデージ

OUT
1番  422y  par4
2番  532y  par4
3番  570y  par5
4番  257y  par3
5番  408y  par4
6番  432y  par4
7番  252y  par3
8番  613y  par5
9番  493y  par4

 

IN
10番  482y  par4
11番  239y  par3
12番  462y  par4
13番  551y  par5
14番  423y  par4
15番  490y  par4
16番  705y  par5
17番  201y  par3
18番  484y  par4

 

 小田プロは「ザ・ロイヤルGCは各ホール6つのティーグラウンドがあります。どこから打つかで、ゴルフが変わってきます。今回は全ホール、基本的に一番後ろのティーから。"長い1日"になりますよ」とニヤリ。ヤーデージを確認した里崎さんは、今日のラウンドについてこう語った。

 

「700ヤード超のパー5はもちろん、250ヤード超のパー3、500ヤード超のパー4、もちろん初体験、未知の領域です。目標スコアは100を切ることです」

 

 さて、スタートの10番ホール、ティーアップした里崎さんが「あれ、いつもの10番と景色が違う……」とポツリ。通常は3番目のティーでプレーすることが多く、そのときとは目に入ってくる情報が違う、と。この10番ホールはやや右曲がりのレイアウトで、フェアウェイの左側から攻めていきたいところ。ただ左側のバンカーに注意する必要があり、さらに今回のティーグラウンドでは右前方に木があり、狙いどころが難しい。

 

「ティーグラウンドが後ろに下がっただけ」「距離が長くなっただけ」ではないのが、8016ヤードコースの難しいところなのだ。これは10番ホールだけでなく、里崎さんは「この日のすべてのホールで感じました」と。小田プロはこう解説する。

 

「ザ・ロイヤルGCを設計したゴルフ場設計家の長渡譽一さんはどこのホール、どのティーグラウンドにもトラップ、罠を仕掛けています。罠と言っても騙し討ちのようなものはないので、ちゃんとプレーヤーから見える。ただ、木やバンカー、ラフなどハザードが見える分、プレッシャーがかかるんですね。トータル8000ヤード以上と距離が長いので体力を削られるイメージですが、実は頭もフル回転しないと戦えない。つまり体も頭も疲れるのが、この8016ヤードのコースセッティングなんですよ」

 

 10番ホール、ティーショットを左ラフに入れた里崎さんは、2打目はフェアウェイに出すだけとなり、3打目はスプーンを選択。これがグリーン手前の右ラフに入って、4打目でグリーンエッジに乗せて、そこから2パット。ダブルボギー(6打)でスタートとなった。続く11番ホールはグリーン手前の池が鬼門だ。ここでティーショットを池ポチャし、3オン2パットと連続ダボ……。「今日はパー狙いはやめます(笑)」とプレースタイルを切り替え、「ボギーでトップに1打差でついていくイメージで」プレーすることになった。

 

 距離を意識した力み

 その後、13番から15番ホールをボギーでしのぎ、いよいよザ・ロイヤルGCのシグネチャーホールでもある、705ヤード・パー5の16番ホールへ。だが、距離に慣れてきたのかここを4オン1パットのパーで上がった里崎さんは、前半折り返しの18番のティーショットでは左フェアウェイをキープした。

 

(写真:18番ホール、484ヤード)

「ナイスショット!」と小田プロが声をかけると、「これ、今日イチのショットでした。なぜならティーグラウンドで視界に何も入ってきませんでしたから」とニコリ。これを聞いて思い出したのが、コース監修者の鈴木規夫プロが以前、話していたザ・ロイヤルGC攻略の極意だ。鈴木プロはこう言っていた。

 

「皆さん、ザ・ロイヤルGCに来ると、距離はもちろん、フェアウェイのアンジュレーション、バンカーやラフなどを気にしすぎてしまう。それがプレッシャーになって、スコアを崩してしまうんです。そういうときはコースだけを見るんじゃなくて、ちょっと視線を上げてみてください。広大な空が広がっているでしょう。広々としたコースなんですから、思い切って打ってみればいいんですよ」

 

 前半のホールを回るうちに里崎さんもその領域に達したのかもしれない。

 

 さてINを48で終え、ラウンドは後半に突入。正午を過ぎるとやや北寄りの風が強くなってきた。

 

「これがザ・ロイヤルGC本来の難しさが出る風向きです。特にショートホールではクラブ選択が難しくなってきますよ」(小田)

 

 里崎さんは1番ホール(パー4・422ヤード)で左フェアウェイをキープし、2打目は7番アイアンでピンまで3mの位置にナイスオン。惜しくも2パットになったもののパーセーブで後半を上々のスタート。「難しい」と感想を述べた2番ホールではトリプルボギーと乱れたものの、3番、4番ではボギー。3番ホールのパットや、グリーンへの距離は十分だった4番(パー3)のティーショットなど、ところどころに光るショットを見せ始めた。

 

「4番のティーショット、良かったでしょう。距離もばっちり。ただ、そこにグリーンがなかっただけのことですよ、アハハハ」

 

 里崎節に冴えが出てくるとゴルフの方も冴えてくる--。5番ホール(パー4)は残り150ヤードの2打目をナイスオン。バーディこそ逃したものの、きっちりとパーパットを沈めた。「今日はティーショットは暴れていますが、アイアンの調子がいいので、なんとかゴルフになっていますね」。

 

 さて、そろそろラウンドも終盤。ここで里崎さんがポツリ。「やっぱり、後半なると疲れてきますね」と。そして、こう続けた。

 

(写真:距離がある分、セカンドショットも打ちどころが難しい)

「後ろのティーグラウンドだからといって一生懸命に打ってしまっているんでしょう。距離を意識しないようにしても、やはり知らず知らず体に力が入っている。いつものラウンドとは疲れ方が違いますよ。INスタートで良かったのかもしれません。OUTスタートだったら、疲れの出てきた後半に16番ホールの705ヤードとかですから」

 

 後半の残り3ホールで連続ダボになったものの、INと同じ48でホールアウト。トータル96、目標だった100切りは達成した。ラウンド後、里崎さんはこう語った。

 

(写真:8016ヤードの疲れか、最終9番のティーショットをミス。セカンドは3番目のティーの横から……)

「トータル8016ヤード、各ホールの距離も長いラウンドでした。ただ、距離だけならそう鬼門ではありません。でも、ティーグラウンドから見える景色の違いなど、"罠"や"トラップ"がある。そしてティーショットだけでなく、2打目にも巧妙にハザードがあって、とにかく考えて打たないといけない。それも疲れる要因でしたね。コース設計者が意図したことに、全部ハマった感じですよ(笑)。それにしても、ティーグラウンドを変えるだけでこうも攻め方が変わるとは……。グリーンのピン位置によっても大きく変わるし、ザ・ロイヤルGCはまだまだ攻略し甲斐のある、奥深いコースですね」

 

 最後に小田プロからのこんな提案で、この日のラウンドは終了した。
「8016ヤード、いかがでしたか? 何度かラウンドしていてもティーグラウンドを変えるだけで別のゴルフになったでしょう。ザ・ロイヤルGCはティーを"レディース"や"シニア"という呼び方で分けていません。1番目、2番目、3番目という呼び方です。誰がどこのティーからでも打ってプレーできます。今度は一番前のティーからのラウンドはどうですか? また違ったザ・ロイヤルGCの一面が味わえますよ」

 

 今回のラウンドでは、ティーグラウンドひとつで変わるザ・ロイヤルGCの戦略性と面白さを感じることができた。さて次はどのティーからプレーすることになるのか……。次回のレポートも乞うご期待。

 

◎プレーヤープロフィール
<里崎智也(さとざき・ともや)/写真左>
1976年5月20日、徳島県出身。帝京大から99年、ドラフト2位で千葉ロッテに入団。03年から1軍に定着し、正捕手として05年、10年の日本一に貢献。10年はリーグ3位からの勝ち上がりで「史上最大の下剋上」を達成した。06年、第1回WBC日本代表に選ばれ世界一に。大会ベストナインにも選出された。14年に現役引退。通算打率.256、108本塁打。ベストナイン、ゴールデングラブ賞2度受賞。現役時代に始めたゴルフ歴は17年目を迎え、ベストドライブは318ヤード、ベストスコアは78(イン42/アウト36@ロッテ皆吉台カントリー倶楽部)。得意なクラブはユーティリティ22度。

 

<小田教久(こだ・のりひさ)/写真右>
1961年7月28日、パラグアイ出身。ゴルフを始めたのは20歳、アメリカの大学時代のこと。プロテスト受験はその30年後の50歳になってから。途中、がんの手術を乗り越えて、5度目の挑戦となった2017年、56歳でプロテストに合格した。19年、念願だったミズノオープン出場を果たす。ザ・ロイヤル ゴルフクラブ所属。日本語、英語、スペイン語の三ヶ国語を操る国際派ゴルファー。得意なクラブはドライバー。

 

(取材・文・まとめ/SC編集部・西崎 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 監修/二宮清純)


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