2日、韓国・仁川でのアジア競技大会は陸上の女子マラソンで木崎良子(ダイハツ)が2時間25分50秒で2位に入り、銀メダルを獲得した。優勝は2時間25分37秒のケニア出身のユニス・ジェプキルイ・キルワ(バーレーン)。早川英里(TOTO)は3位とはわずか1秒差の4位でメダルには届かなかった。男子1600メートルリレーは金丸祐三(大塚製薬)、藤光謙司(ゼンリン)、飯塚翔太(ミズノ)、加藤修也(早稲田大)で臨んだ日本が3分1秒88で優勝。4大会ぶりの金メダルを獲得した。卓球は混合ダブルス準決勝は岸川聖也(ファースト)&福原愛(ANA)組が北朝鮮のペアに敗れ、2大会連続の3位。男子ダブルスは松平健太(ホリプロ)&丹羽孝希(明治大)組が準決勝進出を決め、2大会連続のメダルを確定させた。
【7個のメダルを獲得。リレー種目は金1個のみ 〜陸上〜】

 目標の金メダルを首に掛けるには、13秒遅かった。昨年の世界選手権で4位入賞、現時点で日本女子マラソン界のエース格である木崎だったが、阻んだのは“アフリカン”だった。5キロ18分49秒というスローペースで入ったレース。まず集団の中から飛び出したのはキルワだ。出場選手中最速の2時間21分台の自己ベストを持つケニアからの帰化選手。木崎は17.5キロ地点で過ぎに追いつくとマッチレースの様相を呈した。一進一退の攻防が続いたが、木崎は36キロ過ぎに仕掛けてきたキルワのスパートについていくことができなかった。ゴール直後は悔し涙を流した木崎。1998年タイ・バンコク大会の高橋尚子以来の金メダルはならなかったが、前回の中国・広州大会で初めて途絶えた女子マラソンのメダルを再び日本にもたらした。最低限の結果は残したと言えるだろう。

 男子1600メートルは日本が金メダルを手にした。男子400メートルを制したユーセフ・マスラヒ擁するサウジアラビアは4連覇がかかっていた。日本は前回大会、13秒差で涙をのんでいた。1走の金丸と2走の藤光は4年前を経験していたメンバーだった。日本選手権10連覇と日本のエースである金丸は、前回のアンカー。今回は選手間で決めたという走順でトップバッターを担った。「4年前の悔しさを何としても勝つ」。金丸は力走し、先頭でバトンを渡した。リベンジの思いは藤光も強い。2走は前回と同じ走順。後は若手が続くだけにどれだけリードを作れるかが勝敗のカギだった。300メートルの日本記録を持つ藤光は、「できるだけ貯金を作りたかった」と序盤から抜け出すと独走。2位に4秒の差をつけ、3走の飯塚へバトンパスした。飯塚は200メートルが本職の選手。さらには35分前に400メートルリレーに出場しておりタフなスケジュールだった。「(リレーチーム)8人全員がひとつになって戦った」と、リードを守った。アンカーは世界ジュニア選手権400メートル銀メダリストの加藤。チーム最年少の大学1年生は「先輩方がいいところで回してくれた」と、トップで受けたバトンを死守した。マスラヒらの追い上げにあったが、先頭でゴールテープを切った。3分1秒89の好タイムで、1998年タイのバンコク大会以来、16年ぶりにマイルリレーでアジアチャンピオンとなった。

 その他のリレー種目(男女400メートルリレー、女子1600メートルリレー)で日本はメダルを獲得するも優勝には届かなかった。女子1600メートルリレーはインドに次ぐ、2位。男女400メートルリレーは中国に完敗。特に男子は日本が目指している37秒台到達を先に越されるなど、近年短距離で力を発揮している中国の勢いが表れた。中国は37秒99、日本は38秒49と、その差は0秒50。お家芸を目指す4継でアジアのライバルに屈した。男子1万メートルでは大迫傑(日清食品グループ)が最後まで優勝争いに参加したが、最後のスパート勝負で敗れた。トップとは0秒74の僅差で2位。この種目では16年ぶりのメダルを獲得する健闘を見せた。

 男子やり投げでは村上幸史(スズキ浜松AC)が連覇を目指し、1投目から80メートル超え。全体トップの81メートル66を叩き出した。しかし、その後は記録が伸びず4位に終わった。村上の所属チームの後輩である新井涼平。今季アジアランキング1位の85メートル48をマークするなど好調の新井は、4投目に84メートル42のビッグスローを見せた。しかし、それを上回る快投を見せたのは趙慶剛(中国)だ。日本の溝口和洋が持つアジア記録を1メートル55更新する新記録を打ち立てて優勝した。新井は2位、村上は4位だった。

 主な日本人の結果は次の通り。

<男子400メートルリレー・決勝>
2位 日本(山縣、飯塚、高平、高瀬) 38秒49

<男子1600メートルリレー・決勝>
1位 日本(金丸、藤光、飯塚、加藤) 3分1秒88

<男子1万メートル・決勝>
2位 大迫傑(日清食品グループ) 28分11秒94

<男子やり投げ・決勝>
2位 新井涼平(スズキ浜松AC) 84メートル42
4位 村上幸史(スズキ浜松AC) 81メートル66

<女子400メートルリレー・決勝>
3位 日本(藤森、市川、青木、福島) 44秒05

<女子1600メートルリレー・決勝>
2位 日本(青山、松本、市川、千葉) 3分30秒80

<女子マラソン>
2位 木崎良子(ダイハツ) 2時間25分50秒
4位 早川英里(TOTO) 2時間33分14秒

【岸川&福原ペア、世界選手権金メダルペアに敗れる 〜卓球〜】

 2大会連続のメダルを決めた岸川&福原ペアだったが、世界王者の壁は高かった。第1ゲームこそ11−3で簡単に奪ったが、第2ゲームを4−11で取られる。残りのゲームも粘ったものの、9−11、7−11、9−11と落として終戦。キム・ヒョクボン&キム・ジョン組に、前回の中国・広州大会のリベンジを果たされたかたちとなった。シングルス、ダブルスで軒並み日本人選手が敗れる中、男子ダブルスの松平&丹羽ペアは、準々決勝で北朝鮮ペアに勝ち、メダル獲得を決めた。準決勝はマ・ロン&チャン・ジィカ組が相手。団体戦では苦杯を舐めさせられた最強・中国。個々のレベルでは劣るが、ペアのコンビネーションで勝負したい。

【ラグビー男子は3連覇、女子は準優勝】

 7人制ラグビーは男子が決勝で香港代表を24−12で下し、3連覇を達成した。女子は決勝で中国に12−14で惜敗し、銀メダルだった。男子は15人制代表のリーチマイケルを加え、予選プール初戦では日本代表最多得点記録となる74点をあげてサウジアラビア代表に圧勝。2戦目もタイを61−0、3戦目もマレーシアを57−0で下し、無失点の3連勝で決勝トーナメントに進出した。

 迎えた準々決勝も台湾代表を57−0で下し、準決勝はスリランカ代表を40−0で撃破する。決勝の台湾戦は前半2分に今大会初失点となる先制トライを許したものの、すぐさまリーチのトライで追いつき、逆転に成功する。しかし、12−5とリードして突入した後半の立ち上がりにトライとコンバージョンを決められ、12−12の同点に。今大会初めて経験するクロスゲームとなったが、ジャパンは試合時間残り3分の場面でニュージーランド出身のレメキ・ロマノが勝ち越しのトライを決める。さらに終了間際に羽野一志がダメ押しのトライをあげ、正式競技に採用されるリオデジャネイロ五輪へ弾みのつく優勝となった。

 女子も予選プールはウズベキスタン代表を46−0、韓国代表を50−0、シンガポール代表を60−0で退け、好発進。プール最終戦ではセブンズワールドシリーズのコアチーム入りを果たした強豪・中国代表に7−28で敗れたが、2位で決勝トーナメントに進む。準決勝では香港代表を17−10で振り切って、決勝へ。中国との再戦となった決勝は前半を終えて7−14とビハインドを背負う。しかし、日本も粘り、後半7分にはキャプテンの中村知春がトライを決めて、2点差に詰め寄った。さらに終了直前、鈴木陽子にラストパスが渡って逆転トライかと思われたが、判定はスローフォワードの反則。あと一歩及ばなかった。