「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。前回に引き続きザ・ロイヤルGCが世界基準のゴルファー育成の一貫として取り組む「4スタンス理論」を取り上げます。これまでのアマチュアゴルファー対象の「4スタンスゴルフ特別レッスン」のレポートからさらに一歩進んで、ツアープロが実際に4スタンス理論をどう実際のプレーにいかしているのか? 今回は練習場からコースに出て、実戦の場で4スタンス理論がどういかされているのか。ラウンドに密着しました。

 

 スイングの方向

 4スタンスレッスン&ラウンドを行った小袋秀人プロは日大時代に日本アマを制し、その後、大学3年でプロに転向、今年で9年目を迎えた。下部ツアーで力をつけ、昨年は中日クラウンズ、セガサミーカップ、日本オープンにも出場した。

 

 今回、小袋プロと同行するのはザ・ロイヤルGC所属で小袋プロとは旧知の仲である松田一将プロ、同所属でミズノオープンに出場した小田教久プロ、ザ・ロイヤルGCコースオーナーの野津基弘社長の3人。4スタンス理論の創始者である廣戸聡一氏もラウンドに同行し、プレー中の小袋プロに適宜、アドバイスを送ることになった。

 

 さて、ラウンド前に道場で実施した室内レッスンの様子は前回レポートしたとおりだが(実践編1「"狙い"を極める」)、ボールを狙い通りに運ぶ「ターゲッティング(狙い)」について廣戸氏からレッスンを受けた。そのルーティンを改めて紹介しておこう。

 

1. 狙うと考える(脳を発動させる)。
2. 正中線と手足をターゲットに向ける(安定して立ち、体の真ん中・正中線と手先・足先も同じ方向へ向ける)。
3. 目標を見据える(このときにA1タイプはみぞおち胸側、A2タイプはみぞおち背中側、B1タイプは首の付根の背中側、B2タイプは首の付根の胸側で見る意識を持つ)。

 

 ボールの後ろに立ち、正しく狙う方向を見るというルーティンを確立することで、狙いどころへ正確にボールを飛ばせるようになる。

 

 ちなみに廣戸氏は、「狙った場所に飛ばす」と意識した際に、多くのゴルフ愛好家が勘違いしているのが「クラブを振る方向」だという。多くは飛ばす方向へクラブを振る意識を持ってしまう。フェアウェー右へ落とすなら右、左を狙うなら左へ、と。だが、それは間違い。自著「廣戸聡一ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全」(日本文芸社)で、こう述べている。

 

<多くのプレーヤーは「ボールの飛行方向にクラブを振る」という意識を持っていますが、これは大きな間違い。さまざまなスイング理論に振り回されて、本来の目的を見失ってしまう人が多いようですが、答えは「ボールに向かって振る」です。>

 

 さて、4スタンスゴルフ実践レッスンは1番ホールからスタートした。422ヤード・パー4のこのホールは、海からの風が吹くと難所となるが、ラウンド当日は快晴に恵まれて風も穏やかだった。小袋プロはバーディーで幸先良いスタートを切ると、2番ホール(552ヤード・パー4)と3番ホール(570ヤード・パー5)を連続パー、4番ホール(257ヤード・パー3)はワンオンからバーディーパットを沈めた。ショットもパットも好調である。

 

 道場での室内レッスンを経て、練習場でも会心のショットを連発していた小袋プロについて、ラウンドに同行した廣戸氏はこう評した。

 

「ターゲッティングのルーティンを確立したことで、ショットが暴れずに安定しています。トータル8000ヤードと距離のあるザ・ロイヤルGCでは飛距離まかせのゴルフをするとスコアは伸びません。フェアウェーのどこに飛ばし、どこにボールを止めるか。そういう正確なショットがコース攻略の鍵になります。しかもここのフェアウェーにはアンジュレーション(起伏)がある。平らな所を狙っていくのはもちろんですが、ひとつ先のコブを狙ってそこからさらにボールを転がすなど、そうした戦略も必要になる。ザ・ロイヤルGCがプレーヤーを大きく成長させるコースと言われるのはそうした理由もあるんです」

 

 ゴルフ界には「練習場の球はコースでは打てない」という格言がある。いくら練習場でナイスショットを連発しても、いざコースに出たら同じようなショットはなかなか難しい、という意味だ。特にビギナーはその傾向が顕著だ。理由は簡単。練習場は平らな場所でスタンスがとれるが、コースには平らな場所はほぼ存在しないからだ。ビギナーならショットがブレるのは当然であり、プロであっても落とし所を誤り、左足上がり(アップヒル)、右足上がり(ダウンヒル)のスタンスを余儀なくされることも多々ある。

 

 さて、傾斜地でのスタンス、立ち方に"極意"はあるのか? 廣戸氏によれば「クロスタイプ(A1、B2)は重力に従い、パラレルタイプ(A2、B1)は傾斜なりに立つ」とのこと。さらに詳しい説明を著作から引いてみる。

 

 傾斜地のスタンス

<傾斜地に立つときにはタイプによって絶対的立位と相対的立位が存在しまう。クロスタイプの場合、傾斜に逆らって身体を鉛直(重力の方向)にして立ちます。一方、パラレルタイプは斜面に対して垂直に立とうとします。緩い傾斜であれば脚の形をバランサーにして立つことができますが、特殊な条件下ではタイプによる身体の法則が強く出やすくなります。それに抗うのではなく、身体の自然な動きに合わすほうが安全に動くことができます。>(同前)

 

 ゴルフ愛好家の間ではとにかく「まっすぐに立て!」との教えが定着しているが、身体のタイプに応じた正しい立ち方があることを覚えておきたい。「練習場ではナイスショットなのに……」と悔しがるゴルフ愛好家は、一度、自分の4スタンスタイプに応じ、コースの傾斜で立ち方を見直してみるのをおすすめする。

 

 さて、小袋プロによる4スタンス実践ラウンドに話を戻そう。

 

 前半9ホールを終えたところで、休憩なしのスループレーを選択し、そのまま後半9ホールへ入ることとなった。「つかみかけたことがあるので」と、小袋プロは道場で教わったターゲッティングを中心に、ルーティンを変えることなく黙々とプレーした。

 

 ザ・ロイヤルGCの名物ホールである超ロングの16番(705ヤード・パー5)や、グリーン手前にビーチバンカーが待ち受ける17番(230ヤード・パー3)なども、ともにパーでまとめた。特に17番は打ち下ろしのショートホールだが、昨年のミズノオープン3日目、コースレコードでトップに浮上した池田勇太プロが唯一ダボを叩いた難所である。小袋プロはここをピンデッドに攻め、「今日は本当にショットが安定している」と廣戸氏をはじめとした同行者を感心させた。

 

 4スタンス実戦ラウンドを終えた小袋プロに話を聞いた。

 

--まずは朝イチの道場レッスンからスループレーラウンド、お疲れ様でした。
「4スタンスによって体をうまく使えているのか疲労感はそんなにありません。以前、4スタンスレッスンを受ける前は無理なスイングをして故障したこともあったので、今は体に負担がないことを実感しています。以前は体が固いと思っていましたが、今は体幹部を中心に柔らかさが出てきました。これも4スタンストレーニングのおかげだと思っています」

 

--4スタンスゴルフを実践して、一番自分のゴルフで変わった部分は?
「自分に合ったスイングができるようになったのはもちろんですが、コースを回る中で、様々な引き出しが増えました。今日もターゲッティングを意識したことでショットの正確性が上がったし、何よりも打つ前のルーティンをしっかり確立でき、集中力もアップしました。ただ、いつもより一球ごとに集中し、考えてプレーしていたので頭は疲れている気がします(笑)」

 

--今日は我々取材陣含め、プライベートラウンドにしては多めのギャラリーがいました。
「ラウンドスタート前には"意外と人が多いな"と思いましたが、実際にプレーが始まるとまったく気になりませんでした。見る、狙う、構える、打つ……このルーティンを繰り返していて周りの雑音はまったく耳に入りませんでした」

 

--今後の目標は?
「今は下部ツアーなので、国内ツアーのシード権を取ることが第一目標なのは当然ですが、もっと長い意味での目標としては、どんどんゴルフを極めていきたい。4スタンスを取り入れて自分のゴルフが変わったこともあり、今も廣戸先生と話をしたり、松田プロと一緒に練習をしている中でも日々、発見がある。自分のためでもあり、ゴルフ界のためにもなるかな、と。競技人口の減少もあるので、少しでもゴルフに興味を持ってもらえるように、その起爆剤として4スタンス理論を活用していけたらいいですね」

 

 4スタンス理論は難解なシロモノではない。廣戸氏は「体の取り扱い説明書、マニュアルのようなものです」と語る。体の正しい動かし方は良いスイングにつながり、結果、それが飛距離やスコアにも良い影響を与える。

 

「学ぶ」「試す」「うまくなる」--。世界基準のザ・ロイヤルGCのコースと、敷地内に併設された廣戸道場がゴルファーにとって好循環を生み出しているのは言うまでもない。体と頭で楽しむゴルフ、ザ・ロイヤルGCにはそれがある。

 

<小袋秀人(こぶくろ・ひでと)プロフィール>
1991年4月19日、神奈川県出身。幼少期からクラブを握り、ゴルフを始めたのは5歳のとき。大学時代は名門・日本大ゴルフ部に所属し、2011年に朝日杯争奪日本学生ゴルフ選手権に優勝。翌12年は日本アマチュア選手権を制覇した。12年年末にプロへ転向し、大学を中退。現在はAbemaTVツアーを戦いながら、今季は国内男子ツアーの中日クラウンズ、セガサミーカップ、日本オープンに出場した。身長183センチ、体重80キロ。

 

 

(取材・文/SC編集部・西崎 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 監修/二宮清純)

 

◆イベント告知
ザ・ロイヤルGCでは定期的にゴルフ愛好家を対象にしたレッスン「廣戸聡一4スタンスゴルフスペシャルデー」を実施している。廣戸氏や担当インストラクターの流れるようなトークで難しいはずの4スタンス理論がすいすいと耳に入り、スコアと飛距離も伸びると好評でリピーターも多い。今後の開催日程など問い合わせはザ・ロイヤル ゴルフクラブ(Tel. 0291-39-7511)まで。

 

◆4スタンスゴルフスペシャルデー 記事アーカイブ

4スタンスゴルフ、プロが実践編1「"狙い"を極める」

 

アジア女子アマ制した、日本女子を鍛えたザ・ロイヤルGC4スタンス合宿

 

4スタンスSPデー@ザ・ロイヤルGCレポート


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