8000ヤード超、トッププロの証言。ミズノオープンatザ・ロイヤルGCの熱闘譜

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 本来なら今週末は「~全英への道~ミズノオープン at ザ・ロイヤル ゴルフクラブ」(5月28日~31日)が開催されていたはずだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により残念ながら開催中止となった。


 ミズノオープンは1971年から始まり、2018年からザ・ロイヤル ゴルフクラブ(茨城県鉾田市)に舞台を移したのは周知の通り。ザ・ロイヤルGCが誇る8000ヤード超のロングコースは多くのトッププロを苦しめ、そして名勝負を生んだ。過去2大会で集めたトッププロの「本音」で熱戦を振り返ってみたい。

 

 ベテランの意地、若手の勢い

 まずはザ・ロイヤルGCで初開催となった18年ミズノオープンから。この年、国内メジャー最年長V(50歳)を達成しミズノオープンに臨んだ谷口徹は、8000ヤードのモンスターコースを前にしてこうつぶやいた。

 

「8000ヤードがどうか? そりゃあ長いよ。しかも長いだけじゃない。このコースはグリーンの形状もピンに寄っていくようなものではなく、どちらかといえば逃げていく感じ。距離としてはウッドだけど、本来ならショートアイアンくらいで攻めるのが良いような感じ。ウッドではなかなか乗るような形ではないし、硬く速い。スコアがどうなるのかは見当もつかないなぁ」

 

 18年ミズノオープンの予選は雨、そして最大瞬間風速10メートルの風と悪天候の下で行われ、モンスターコースはさらに牙をむく格好となった。谷口は9オーバー・110位タイで予選落ちを喫した。

 

 18年の予選通過者で最年長は1966年5月28日生まれ、52歳の鈴木亨だった。毎年、5月末に行われるミズノオープンは鈴木にとってバースデーラウンドとも言える。朝一番のティーグラウンドでは「もうすぐ誕生日の鈴木亨プロです」とのアナウンスに送られてアドレスに入るのがお約束である。

 

 その鈴木、予選を3オーバー46位タイで通過した。翌3日目のトータル8007ヤードに向け、こう意気込みを語っていた。

 

(写真:ホストプロとして臨んだ鈴木亨 2018年)

「ミズノのホストプロとして呼んでもらっているから、予選落ちだけはしちゃいけないと必死でした。今日はトータル7702ヤードだったけど、それでもザ・ロイヤルGCは長くてタフなコースだと実感できた。ティーショットは正確にフェアウェイキープをしないとセカンド以降が厳しくなるし、足の長いラフに入れようものならさらに厳しい。飛距離だけでなく正確な狙いも求められ、本当にタフでハードなコース。でも、ゴルファーとしては最高の環境だと思う。コースは攻めがいがあり、そして何より美しい。クラブハウスから出て目に飛び込んでくる風景はまるで海外にいるかのようでした」

 

 強風のモンスターコースで持ち味を遺憾なく発揮したのが、予選会から出場権を得た新鋭・嘉数光倫だ。多くの選手がパーキープに苦労する中で6バーディ(2ボギー)と攻めのゴルフを展開し、4アンダーのトップタイで予選を通過した。10メートルの風も嘉数にはハンディとならなかった。

 

(写真:風にも負けず予選トップタイの嘉数光倫 2018年)

「沖縄出身なので強風には慣れている。今日くらいの風はあっちだと微風です(笑)。5月頭にここで行われた予選会でトップをとったので、このコースが合っているのかもしれません。コースの距離はティーショットではそう気にならないけど、ラフに入れたらそれを実感する。深いラフなのに距離は5番アイアンという、出すだけでやっとという感じになる。とにかく今日はコンパクトなスイングで、フェアウエイキープを心がけました」

 

 さて、18年ミズノオープンを制したのはプロ10年目、ツアー未勝利の秋吉翔太だった。3打差の6位タイからスタートし、5バーディ(3ボギー)で回り、トータル1アンダー。モンスターコースでつかんだ初勝利を、秋吉は「まさか、ここで初勝利とは」と驚きながらこう振り返った。

 

「タフなコースセッティングはわかっていたので、楽な戦いではないと思っていました。パーをキープし、とにかく耐えていただけでした。16番のバーディは自分でも信じられないくらい完璧な攻めができた。あのバーディパットを沈めれば優勝の目があるかもと、初めてそこで優勝を意識しました」

 

 8000ヤードで復活!

(写真:ミズノオープンでツアー初勝利の秋吉翔太 2018年)

 秋吉の言う16番ホールとはパー5・705ヤード、別名「滑走路」とも呼ばれる広くて長いザ・ロイヤルGCの名物ホールである。ここで秋吉はティーショット、セカンドショットでフェアウェイをキープ。残り171ヤードのサードショットを前に、秋吉は「10ヤードマイナスでいい」と、グリーンオーバーを嫌って9番アイアンを選択した。結果、ピン右側、ポール1本分につけるスーパーアプローチとなりバーディを奪ってみせた。ミズノオープンatザ・ロイヤルGC、屈指の名シーンである。

 

 翌19年、ミズノオープンatザ・ロイヤルGCはトータル8016ヤードのコースセッティングで行われた。前年の8007ヤードを上回る、もちろん国内ツアー史上最長である。

 

 ここで本領を発揮したのがツアー20勝のベテラン池田勇太だった。19年シーズン序盤、予選落ちが続くなど波に乗れなかった池田だが、ミズノオープン大会3日目、8016ヤードのモンスターコースで息を吹き返した。

 

 前半ホールの4連続を含む8バーディーとスコアを伸ばし、13番ホール(551ヤード・パー5)ではイーグルを奪い、トータル6アンダーでトップに躍り出た。この日、池田が記録したスコア66はコースレコードである。

 

 ラウンド後の池田のコメント。

 

「ショット、パターともに距離、精度が出せた。連続バーディをとった15番、16番まで流れをつくっていけた。今日は8016ヤードという距離を感じることはなく、長いコースに立ち向かったことで俄然、やってやろうという気持ちが出た。今季、波に乗れない部分があったけど、自分のゴルフをいかせるこういう長いコースで、戦う感覚が戻ってきた気がする」

 

 コメントどおり、池田は翌日の最終日でも「らしいゴルフ」を展開した。

 

(写真:8000ヤードで甦った池田勇太 2019年)

 前半で3ホール連続バーディと上々の滑り出しを見せ、その後もショット、パットともに冴え、前日崩れた最終18番ホールもパーでまとめ、トータル7アンダーで逃げ切った。これでツアー21勝目、歴代2位タイとなる11年連続での毎年優勝を飾った。祝福のドリンクシャワーを浴び、池田は濡れたままで勝利者インタビューに臨んだ。

 

「ゴルフは相手と戦うスポーツであるとともに、コースや自然と戦うスポーツ。そのことを改めて実感できたコースでした。ただ8000ヤード超のコースセッティングが3日目の1日だけだったのはもったいない。来年は1日だけでなく(決勝は2日とも)8000ヤードのコースセッティングをお願いしたい。ベストスコア賞(3日目の66)もいただいたけど、9アンダー、63を途中まで出していた。来年は自分のレコードを、8000ヤード超のコースで更新したいと思っています」

 

 ミズノオープンを終えた後、ザ・ロイヤルGCのコースオーナーである野津基弘(日本カバヤオハヨーホールディングス社長)は18番グリーン脇にたたずみ、こう語った。

 

(写真:水野明人ミズノ社長・左と野津社長)

「昨年、今年とミズノオープンをザ・ロイヤルGCで開催し、最高のコースが提供できたと思っています。嬉しかったのは池田プロの言葉です。"8000ヤードが1日だけじゃもったいない!"。聞いていて、こみ上げてくるものがありました。表彰式では隣に大会主催の株式会社ミズノ・水野明人社長がいらっしゃいましたが、思わず2人で顔を見合わせて"じゃあ、来年は全日8000ヤードいきましょうか""ぜひ、やっちゃいましょうよ"と言葉をかわしました。来年、ぜひ実現したいですね」

 

 今年の開催中止により池田の希望した「全日8000ヤード」が実現しなかったことは返す返すも残念である。国内トッププロを苦しめ、ゴルファー本能に火をつけたザ・ロイヤルGCのモンスターコース。鉾田の地から、全英への道が再びつながる日を楽しみに待ちたい。

 

(まとめ/SC編集部・西崎、写真/SC編集部、ザ・ロイヤルGC、監修/二宮清純)

 

◆告知
 読売テレビ・日本テレビ系列全国ネットにおいて、ミズノオープン特別編が放送されます。選手会長の時松隆光プロ、手嶋多一プロ(2015年優勝)、秋吉翔太プロ(2018年優勝)、池田勇太プロ(2019年優勝)がリモート出演し、優勝秘話やプロ直伝のおうちレッスンなどゴルフ愛好家必見の内容です。

放送日時/2020年5月31日(日)13時30分~14時55分(読売テレビ・日本テレビ系列全国ネット)

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