もうひとつの世界基準。ザ・ロイヤルGCのグリーンの魔力「立体で攻める」

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「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。トータル8000ヤード超の距離をして「世界基準」と呼ばれるザ・ロイヤルGCですが、18個のグリーンもすべてが世界基準です。段差とうねりのついた速いグリーンはミズノオープンやアジアアマ女子選手権などで多くのプレーヤーを苦しめました。設計段階からザ・ロイヤルGCのグリーンには「日本から世界へ」という思いが込められています。さて、世界基準のグリーンの秘密とは? 第1回はトップアマとプロゴルファーの視点からお伝えしましょう。


 2019年4月、ザ・ロイヤルGCで行われた「第2回アジア・太平洋女子アマチュア選手権(WAAP)」。それに先駆けて日本代表選手がザ・ロイヤルGCで合宿を張った。参加選手が一様に声を揃えたのがグリーンの難しさだった。

 

 彼女たちの声を紹介しよう。

 

(写真:アジアアマ選手権合宿に参加した吉田優利)

「広いグリーンは速く、固い。傾斜も含めて処理する情報が多いのでそこが大変かもしれない」(吉田優利)。「ここまでうねったグリーンは日本には少ない。どこにカップを切られても難しい」(後藤未有)

 

「初めてこのコースを回りましたが、グリーンが難しい印象。日本のコースは手前から攻めればスコアは崩れない、というコースが多いですが、ここはピンポジションによって攻め方がすごく変わる。頭を使って、コース戦略をしっかりと立てないと……」(佐渡山理莉)

 

「すごく難しいコースという印象で、自分のコースマネジメントに徹することが大事になる。ショットの他、パットのスピードコントロールも必要だと思います」(西村優菜)

 

「ティーショットからターゲットを狙っていかないとすぐにボギーになってしまうコースだと感じました。グリーンは傾斜も段もあって難しい」(小倉彩愛)。「グリーンにはアンジュレーションがあるので、ポジションによってはピンポイントに打っていかないと……」(梶谷翼)

 

 また同大会で優勝した安田祐香(現プロ)は、第3ラウンドの16番ホール(536ヤード・パー5)でイーグルを決めた。

 

(写真:WAAPで優勝を飾った安田祐香)

 この場面、セカンドショットをグリーン下、ピンまで20ヤードにつけた安田はウェッジではなくパターを選択した。転がるようにしてグリーンに乗ったボールはそのままカップインした。なぜ、パターを?
「距離ならウェッジですが、そうしていたらグリーン上でボールが止まらなかった」

 

 ザ・ロイヤルGC所属の小田教久プロは安田の16番のイーグルをこう振り返った。
「グリーンの傾斜も把握してパターを選択した安田さんの冷静な判断が光ります」

 

 現在、国内ツアーシード権を持つ大槻智春プロは、ここザ・ロイヤルGCで17年に行われた下部ツアーでプロ初勝利をあげた。今も語り草となっているのが16番ホールのバーディだ。

 

 705ヤード、パー5の16番ホール。大槻は2打目、フェアウェイ中央からスプーンでグリーンエッジまで運んだ。普通ならアイアンで刻むところだが、大槻はこう振り返った。

 

「刻むかどうかで悩んだ2打目。自分の一番得意なサンドウェッジの距離を残そうと決めて、スプーンで思い切り打っていきました」

 

 残り40メートルにつけた3打目。得意のサンドウェッジでピン右、1メートルに落とし、バーディを奪った。ピンポジションとグリーンのアンジュレーションを読み切った、勇気ある”セカンドショット”だった。

 

 ザ・ロイヤルGCのグリーンはピンポジションにより異なるが、アプローチから傾斜を読み、シビアなボールコントロールが要求される。手前から刻んでいけばパーキープが可能なコースとは一線を画する。

 

「だからこそ面白く、そして攻め甲斐がある。プロの目も鍛えられる」

 

(写真:モンスターコースをつくり上げた鈴木プロ)

 こう語るのはオハヨー乳業所属の鈴木規夫プロだ。国内ツアー16勝、マスターズ出場も果たした日本のトッププロのひとりで、近年は男子ツアーのコースセッティングにも関わる。鈴木プロはザ・ロイヤルGCのコース設計段階から参加し、ゴルフ場設計家の長渡譽一氏(故人)とともに”世界基準”をつくり上げた。

 

 鈴木プロに以前、ザ・ロイヤルGCのグリーンの難しさと攻略法を聞いたことがある。

 

「(ザ・ロイヤルGCは)どこのグリーンもかなりアンジュレーションがあります。たとえば右側にピンを切れば、左にはマウンドができる。その場合はマウンドに当ててピン側に落とす。逆に落とせばどんどんピンからボールが離れていく。だから落としたあとのラインをきちんと描く必要がある。そのためには平面だけではなく、縦の動き、奥行きも考える必要があります。今の若いプレーヤーはゴルフを平面でしか見ていない。縦の動きや奥行きも考えないと世界では上位に行けないし、勝てない。そこにプレーヤーの成長の余地があります。それはプロでもアマチュアでも同じです」

 

 鈴木プロはザ・ロイヤルGCには「グリーンはすべて18の顔があります」と言う。1番ホールから18番ホールまで、ひとつとして同じ表情を見せないグリーンも、8000ヤード超の距離と並んでザ・ロイヤルGCを「モンスター」と言わしめる要素である。

 

 考えてこそゴルフ--。知的な攻略ゲームとして楽しめるゴルフが、ここザ・ロイヤルGCにはある。

 

 

(取材・文/SC編集部・西崎 写真/SC編集部、ザ・ロイヤルGC 取材協力/ザ・ロイヤルGC 監修/二宮清純)

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