11日、都内ホテルで西武の新監督発表会見が行なわれ、今季同球団の2軍監督を務めていた渡辺久信が新生ライオンズの指揮官となることが正式に発表された。
(写真:「思いやりのある監督に」と抱負を語る渡辺久信新監督)
「とても身が引き締まる思いがした」
 9日に球団から1軍監督就任への要請を受けた際の感想を、渡辺新監督はこう答えた。今季を振り返れば、当然だった。シーズン前には裏金問題が勃発し、最悪な状態でスタートを切った西武。6月には28年ぶりの10連敗を喫して最下位に転落するなど、その低迷ぶりはここ近年には見られないほどのものだった。その結果、26年ぶりのBクラス――。崩壊した常勝軍団の再建は42歳の新監督に委ねられた。

 球団が来季に向けたチームづくりのポイントに挙げたのは3つ。「イメージづくり」「投手陣の建て直し」「若手育成」だ。そしてこれらを考えた時、適任者として浮上したのが渡辺新監督だったという。
「渡辺監督は明るい性格の持ち主。だから、子どもたちや監督の現役時代を知っている親世代にも喜んでもらえる。明るいイメージづくりにはうってつけだ。来季に向けての課題である投手陣や若手育成についても、投手出身であり今季2軍監督を務めていた渡辺監督なら期待できる」
 小林信次球団社長の言葉からは、渡辺新監督に全幅の信頼を寄せていることがうかがい知れた。

 会見の際、記者陣を一様に驚かせたのが背番号だ。2004年に投手コーチに就任して以来、背番号は「74」だった。ところが、監督として選んだ背番号は「99」。これにはフロントサイドも驚いたという。渡辺新監督はその理由を次のように語った。
「いろいろな意味合いがある。まず、野球において100点満点というのは不可能なので、99点を目指していこうと思ったこと。それと、僕が3年間プレーした台湾では、久信の“久”と数字の“9”は発音が同じだし、永久の“久”ということで、長く長くという意味も込められている。また、僕が現役時代に慣れ親しんでもらった“ナベキュー”という愛称もあるので、“9”という数字にこだわりたいと思った」

 14日には1軍の秋季練習がスタートする。
「うちには若くて個性的な選手が多いので、僕としては個性派集団をつくってファンとの距離を近いものにしたい」
 と渡辺新監督。今季、シーズン前から続いた暗いイメージを払拭させたいという思いは誰よりも強い。優勝に向けての具体的な戦略はこれからだが、来季は2軍の選手もよければどんどん起用していく方針だという。
 来年は球団創立30周年。果たして、記念の年に王座奪回を果たすことができるか――。渡辺ライオンズの今後に注目したい。


渡辺久信(わたなべ・ひさのぶ)プロフィール>
1965年8月2日、群馬県出身。42歳。前橋工から1984年にドラフト1位で西武に入団。86年には最多勝(16勝)、最優秀防御率(2.87)、最多奪三振(178)の3冠を獲得。88、90年にも最多勝に輝くなど、投手陣の柱の一人として黄金時代を支えた。96年にはノーヒットノーランを達成した。98年に東京ヤクルトに移籍するも、その年のオフには戦力外通告を受ける。現役続行を望んで台湾に渡り、TML勇士隊で選手兼任コーチとして3年間プレーした。2001年限りで現役を引退。04年より西武の投手コーチに、05年より2軍監督に就任。この秋、伊東勤前監督の後継者となった。