キャンプがスタートしました。あらためて昨シーズンを振り返ると、不完全燃焼の一言。就任1年目で全体を把握するのに時間がかかり、各選手に細かい指示を徹底することができないままシーズンに突入してしまいました。1球に対する意識や状況判断の面で他チームに遅れをとったことが、前後期最下位という結果になったのでしょう。

 今季は高知から森山一人コーチという素晴らしい指導者を招くことができました。昨年の反省を踏まえ、このキャンプでは基本を反復して徹底したいと考えています。幸い、元カープの梅原伸亮や元ソフトバンクの伊奈龍哉と2人のNPB経験者が加わり、新人選手も好素材を獲得することができました。

 昨シーズンから残留した選手も外野手だった永井豪を捕手にコンバートしたり、セカンドの山口寛史にサードを守らせたりと試行錯誤している最中です。ルーキーや元NPB選手と彼らが、うまくチームとしてかみ合えば、決して昨年の二の舞にはならないでしょう。

 僕の専門である投手部門は昨年からの残留組が4名。サウスポーの安里渉渡邊隆洋、右サイドスローの片山正弘、中継ぎの竹原俊介です。このうち安里は千葉ロッテの打撃投手のテストを受けに、キャンプ地の石垣島へ行っています。もし、安里が抜ける形になれば左は渡邊ひとりになりますから、新たにトライアウトで補強しなくてはいけないかもしれません。

 中でも先発ローテーションの渡邊と片山には奮起してもらいたいと願っています。昨シーズンの成績は渡邊が4勝13敗、防御率4.29。片山が3勝15敗で防御率3.86。好投しながら打線の援護に恵まれなかったり、守備で足を引っ張られたりといった点を差し引いても負けすぎです。

 2人とも過去にコラム内で取り上げたように素晴らしいものを持っています。ただ、シーズンを通して安定したピッチングを見せるには体力、技術ともにまだまだ。一冬を越して、渡邊はとてもいい状態でキャンプに臨めています。片山は肩を痛めたこともあり、下半身をしっかり使ったムダのないフォームを習得中です。2人には昨年の勝敗を逆に、とは言わないまでも、最低10勝をノルマにしてほしいものです。

 新人は梅原を含めて6投手が入りました。ブルペンではアウトローにきっちり投げることを目標に掲げています。アウトローは投手の生命線。バッターが一番打ちづらいところに、いい回転のボールを投げ込めば、そうそう打たれるものではありません。捕手にも投球練習ではアウトコースにミットを構えるように言ってあります。

 コーナーの低めへ投げるには、当然、重心を低くしないといけません。そのためには下半身の安定が不可欠です。ならば投げ込みや走り込みといったトレーニングの必要性も理解できるはず。漠然と数だけ投げて、ウエイトで体を鍛えてもピッチングは身につきません。

 投手には頑固な性格の持ち主が多く、今までのやり方を押し通そうとする人間が多いものですが、まずは基本を体に覚え込ませない限り、自分のやり方も何もありません。それは前年の結果を見れば火を見るより明らか。僕も昨年以上にしつこく選手たちを指導するつもりです。

 いずれにしてもどういったポジション、役割分担でシーズンに臨むかは、まだ白紙の状態。キャンプ、オープン戦を通じ、適性を見ながら判断していきます。お互いに特長を出し合って、いい意味でこちらが選手起用を迷うようなチームになってほしいですね。今シーズンからユニホームも一新しました。新しい気持ちで1年間、頑張ります。


白石静生(しらいし・しずお)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
 1944年5月22日、徳島県出身。鳴門高から四国鉄道管理局(現JR四国)を経て、66年、ドラフト2位で広島に入団。左の本格派投手として69年に11勝、70年には13勝をマークした。当時、外木場義郎、安仁屋宗八、大石弥太郎とともに先発の4本柱を形成していた。75年に阪急に移籍。77年、78年の日本シリーズで1勝ずつを挙げている。81年限りで引退。16年間の通算成績は394試合、93勝111敗、防御率3.81。引退後は徳島に戻り、全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)の徳島県代表幹事や徳島中央シニアの監督を務め、野球の底辺拡大に力を注いでいた。06年10月より徳島インディゴソックスの監督に就任。


★携帯サイト「二宮清純.com」では、独立リーグのコラムコーナーを更新中です。題して「ニッポン独立リーグ紀行」。アイランドリーグ、BCリーグの監督、コーチ、選手が毎週火曜日に交代で登場し、それぞれの今をレポートします。
 今回は白石監督のコラムです。「元カープ梅原はクローザー候補」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。


太陽石油はアイランドリーグのオフィシャルスポンサーです[/color][/size]
◎バックナンバーはこちらから