ラグビーにおいて、ラインアウトの成功率は勝負を占う上で大きなカギを握る。

 

 

 2019年W杯日本大会における日本代表の成功率は1次リーグで9割を超えた。それが格上のアイルランド代表、スコットランド代表を撃破する原動力となった。

 

 その一方で準々決勝の南アフリカ代表戦では62%と振るわず、3対26と完敗を喫した。

 

 ラインアウトで優位に立つには、ロックに背の高い選手を配置するのが常道である。そのためチームで最も背の高い選手が、このポジション(4番と5番)を任されることが多い。

 

 強豪国を例にとろう。ニュージーランド代表ブロディ・レタリックが204センチ、サミュエル・ホワイトロックが202センチ、南アフリカ代表エベン・エツベスが203センチ、イングランド代表のコートニー・ローズが201センチ。

 

 W杯日本大会で初のベスト8進出を果たした日本代表は196センチのトンプソン・ルーク、195センチのジェームス・ムーアらがスタメンを担った。

 

 日本代表最多の98キャップを誇る192センチの大野均もロックだが、自ら「世界的に見れば、僕はロックとしては小さいほう」と謙遜気味に語っていた。

 

 その意味でワーナー・ディアンズの出現は、日本ラグビーにとっては僥倖である。

 

 今春、東芝ブレイブルーパス東京に入団したばかりのディアンズが、さる11月13日(現地時間)、コインブラでのポルトガル代表戦に途中出場、日本代表初キャップを記録した。ニュージーランド出身の19歳だ。

 

 出番がやってきたのは、後半36分の場面。プロップ中島イシレリのシンビンにより、人数は日本がひとり少なかった。

 

 スコアは日本の31対25。1トライ1ゴールでひっくり返される厳しい状況にありながら19歳は冷静にプレーした。

 

 終了間際、自陣ゴール前でのスクラム。ディアンズは7対8と数的不利の押し合いにも耐えてみせた。結局、試合は38対25で日本が勝利した。

 

 ディアンズは身長202センチ、体重122キロの偉丈夫。加えて身体能力の高さにも定評がある。

 

 14歳で来日し、千葉県の流通経済大学付属柏高校時代には、花園に2度出場し、2度のベスト8進出に貢献している。

 

 恩師である流経大柏の相亮太監督は、ディアンズのポテンシャルの高さをこう振り返る。

 

「バックス並みの走力を持っていた。持久系のメニューをやらせてもウイング、センターの選手たちと同じくらいのタイムで走っていた。

 

 2メーター級のサイズで1キロを3分台で走れる選手なんて、私の現役時代には見たことがない。線は細く見えますが、体は骨太で、ほとんどケガをしたことがない。高校3年時のストレングスの数値はトップリーグ選手と同等か、それ以上でした」

 

 W杯フランス大会が2年後に迫る中、日本にとってディアンズは秘密兵器か、それ以上の存在である。

 

「世界一のロックになりたい」

 志の高さも、身長並みだ。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2021年12月19日号に掲載されたものです>

 


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