ジャパンラグビー・トップリーグ(TL)が生まれ変わり、『JAPAN RUGBY LEAGUE ONE』(リーグワン)となる新シーズンがスタートする。24チームが3つのディビジョンに分かれる3部制。12チームで優勝を争う「NTTジャパンラグビー リーグワン2022ディビジョン1」は、カンファレンスAとBに分かれる。初代王者をかけた戦いに注目が集まる。

 

 しかし、開幕直前からトラブルが続いた。昨年末にNECグリーンロケッツ東葛所属のWTBブレイク・ファーガソン(1月2日付けで契約解除)が違法薬物所持の疑いで逮捕。5日には埼玉パナソニックワイルドナイツに新型コロナウイルス感染症陽性者が複数名確認され、クボタスピアーズ船橋・東京ベイとの先出し開幕戦(7日、東京・国立競技場)は中止となってしまった。

 

 開幕節は8日にGR東葛vs.横浜キヤノンイーグルス(千葉・柏の葉公園総合競技場)、東京サントリーサンゴリアスvs.東芝ブレイブルーパス東京(東京・味の素スタジアム)、コベルコ神戸スティーラーズvs.シャイニングアークス東京ベイ・浦安(兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)の3試合、9日にトヨタヴェルヴリッツvs.静岡ブルーレヴズ(愛知・豊田スタジアム)、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪vs.リコーブラックラムズ東京(大阪・ヨドコウ桜スタジアム)の2試合が行われる予定だ。

 

 リーグが変わり、ホストゲームの興行権はリーグから各チームへと移った。スタジアム演出や会場の運営など、どのような仕掛けをするのか楽しみである。TL時代と比べ、“地域密着”の色は濃くなる。スタジアムやホストタウンでの各チームの取り組みにも注目したい。

 

 生まれ変わったのはリーグだけではない。埼玉WKは本拠を群馬県太田市から埼玉県熊谷市に移した。チームの根幹は変わらない。ロビー・ディーンズ監督が引き続き指揮を執り、代表クラスのメンバーをズラリと揃える。キャプテン3季目となるHO坂手淳史(写真)は「リーグは変わりますが、僕たちの強みはディフェンス。ディフェンスからボールを奪って一気に攻める。そういったところは今シーズンも見ていただけると思います」と胸を張った。

 

 チームにはワラビーズ(オーストラリア代表)のWTBマリカ・コロインベテというビッグネームのほか、ニュージーランド出身のFLラクラン・ボーシェー、CTB/WTBヴィンス・アソ、LOマーク・アボットという実力者が加わった。「昨季よりももっと強い。さらにいいチームになっている。全員がリーダーシップを持ってやってくれている」と坂手。昨季からリザーブの選手を“マッド”と呼んでいるが、今季も継続する。「違いをつくれる選手たちがいる。誰がスタートでも、“マッド”になったとしてもチームのために一生懸命やってくれる自信がある」

 

 静岡BLはヤマハ発動機ジュビロからチーム名を完全に一新し、1stジャージーのメインカラーもサックスブルーからブルーに変えた。新たに運営会社(静岡ブルーレヴズ株式会社)を設立。元ジャパンのFB五郎丸歩(現クラブ・リレーションズ・オフィサー)が引退した。HO日野剛志(写真右)は「全てが一新された状態で始まる。ファンの皆さんと同じくらいワクワクしています」と口にした。

 

 セットプレーを中心としたパワフルなラグビーが持ち味だが、今季は「ボールを動かすラグビー」に挑戦中だという。プレシーズンマッチは2勝6敗と苦しんだ印象もある。
「日本一を獲るために、今は産みの苦しみの時期。プレシーズンマッチはトライ&エラーを繰り返しながらつくり上げている。今までやってきたベースの部分と新たなチャレンジをしている部分がシーズンを通して成熟してくれば結果として表れると思います」

 

 日野自身は昨季の開幕戦で負傷。シーズンを棒に振っており、個人としても今季に懸ける想いは強い。
「チームに貢献したい。自分がチームのため、先頭に立って戦うんだという強い気持ちを持って戦いたいと思います。ケガをした前よりも成長した姿を見せたい。2023年のW杯出場を諦めたわけではないので、リーグワンでアピールしたい」

 フランスのTOP14でもプレーした男の逆襲が始まる。

 

 メンバーが最も入れ替わったのはGR東葛だ。昨季からは10人以上が抜け、15人以上の選手が加わった。日本代表キャップを持つSH田中史朗、WTB/FBレメキ・ロマノ・ラヴァ、ウェールズ代表50キャップのLOジェイク・ボールらが加入した。ここ2シーズン(2019-20シーズンは第6節までで大会は中止)リーグ戦で未勝利。生まれ変わる必要があった。その理由について、NECロケッツ(グリーンロケッツとバレーボールのNECレッドロケッツの総称)の梶原健代表は「組織風土を含め抜本的な変革が必要です。組織を変えるのに一番簡単なのは“外の血”を入れること」と語っていた。

 

 キャプテンのPR滝澤直(写真)は言う。
「チームが変わっているという実感はすごくあります。選手を含め新しい人が加わり、一からチームをつくっている。2シーズンいい結果が出ていませんが、僕たちを応援してくれる人がいて、代表する地域がある。その人たちが誇りに思える試合、結果を求めていきたい」
 開幕戦の相手はジャパンでもお馴染みのSO田村優、No.8アマナキ・レレイ・マフィらを擁する横浜E。ロケットスタートなるか。

 

 新体制で臨むのはBL東京。昨季ベスト8と躍進を遂げたチームを支えた神鳥裕之監督(現・明治大学監督)が退任。コーチから昇格したピーター・ヒューワットHCが指揮を執る。キャプテンは大卒2年目のHO武井日向(写真)が就任した。
「リーグワン初年度、ブラックラムズ東京となって初のシーズン。キャプテンを任されたことに重圧と責任を感じています」

 

 昨季は後半に逆転される場面も目立った。
「80分間、フィジカルでスキのないチームになることが今季は大切。これまでは波のあるチームだった。メンタル面も含め、プレシーズンで成長が見えてきている」
 新シーズンに向け、手応えは十分だという。

 

 24歳の若きリーダーは「自分たちがやってきていることは間違いない。それを最後まで信じてやり切る。どのチームも強いので、自分たちにフォーカスして一戦一戦臨みたい」と意気込んだ。

 

 リーグワン初年度を彩るビッグネームが各チームに加入した。先に紹介した埼玉KNのコロインベテのほか、東京SGにはオールブラックス(ニュージーランド代表)のSO/FBダミアン・マッケンジー、トヨタVにはスプリングボクス(南アフリカ代表)のFLピーターステフ・デュトイ、オールブラックスのLOパトリック・トゥイプロトゥ、SA浦安には元ワラビーズであるユーティリティーバックスのイズラエル・フォラウらが加わった。選手たちのスーパープレー、手に汗握る熱戦を期待したい。

 

(文・写真/杉浦泰介)