ポジションこそ違うが、ともに右投げ左打ち。腰の座ったスイングは、1月に亡くなった水島新司さんの漫画「ドカベン」の主人公・山田太郎を彷彿とさせる。

 

 

<この原稿は2021年2月21日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 まだ1年生ながら、高校通算50発の“みちのくの怪物”が甲子園にやってくる。花巻東(岩手)の3番・佐々木麟太郎だ。

 

 身長184センチ、体重114キロ。その堂々たる体躯はとても16歳には思えない。

周知のように佐々木の父親は菊池雄星(マリナーズFA)や大谷翔平(エンゼルス)らを育てた同校監督の佐々木洋。

 

 小学1年生で野球を始めた佐々木は「雄星さんの代を見て野球を極めたいと思った。翔平さんを含めて影響を受けました」(スポニチ1月29日付)と語っている。

 

 佐々木が“怪物”のベールを脱いだのは、昨秋の明治神宮大会だ。花巻東は国学院久我山、高知を破りベスト4に進出した。準決勝で広陵に9対10で破れ、決勝進出を逃したものの、佐々木は3試合で打率6割、2本塁打、9打点と大活躍した。

 

 岩手・福岡高校出身の横浜DeNA欠端光則スカウトは「ヘッドが立っていて、スイングスピードが速いから打球が上がる。ドカベンみたい。いやドカベン以上かな」と絶賛していた。

 

 花巻東には“苦い記憶”がある。2009年のセンバツ、エース菊池雄星を擁した同校は岩手県勢として甲子園で初の決勝進出を果たしたが、清峰(長崎)に0対1で敗れた。この時の清峰のエースが昨年まで広島で活躍した今村猛である。

 

 少年の佐々木は、この試合をスタンドから観戦していた。センバツ出場が決まり「岩手から日本一」を誓った背景には、彼自身の悔しさもあるのだろう。

 

 東北勢は春夏通じて、まだ一度も甲子園の頂点に立ったことがない。12回も決勝に進出しながら、全てあと一歩のところで涙をのんでいる。これは“甲子園の7不思議”のひとつと言われている。佐々木のバットは東北の“黒歴史”にピリオドを打てるのか……。

 


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