最強打者をどこに置くべきか。これは野球というスポーツにおいて、古くて新しいテーマだ。

 

 

<この原稿は2021年4月11日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 日本では「4番最強説」が幅を利かせている。

 

 たとえば知将・野村克也は「4番とエースは育てられない」と語った。この2つを別格の存在と見ている証拠である。

 

 史上最多となる三冠王に3度輝いた落合博満も“4番至上主義者”のひとりだ。

 

「打順は4番さえ決まれば、後は何とでもなる」

 

 4番以外は、まるで眼中にないかのような言いぶりだ。チームという名の家を支える大黒柱と見ているのだろう。

 

 翻ってメジャーリーグでは「3番最強説」を唱える識者が少なくない。これは1920年代から30年代にかけて黄金時代を築き上げたヤンキースの3番がベーブ・ルースだったことに由来する。もっとも4番のルー・ゲーリッグも不世出の強打者だった。

 

 V9巨人の打順も、黄金期のヤンキースに似ていた。3番・王貞治、4番・長嶋茂雄。「記録」の王の後に「記憶」の長嶋が控えていた。

 

 理想の並びについて、王はこう語っていた。

「3番は少々、荒っぽくてもいいから長打力のあるタイプ。それに対して4番はチャンスに強いクラッチヒッター・タイプ。理想はやはりルース、ゲーリッグの並びだろうね」

 

 近年、メジャーリーグでは「2番最強説」が台頭してきている。ア・リーグで最後まで昨季、本塁打争いを演じた大谷翔平(エンゼルス)は、「2番DH」での起用が多かった。

 

 そんな中、北海道日本ハムの“ビッグボス”こと新庄剛志監督が、またしてもサプライズプランを打ち出した。

 

「4月に1カ月やって、(5月は)打率のいい順に1番から持っていくのもおもしろいかな」

 

 これはユニークだ。試してみる価値はあるが、どうせなら打率よりも出塁率のいい順番に並べた方が、より効果的ではないのか。野球も日々、進化している。議論の広がりに期待したい。

 


◎バックナンバーはこちらから