*若獅子の逆襲 〜西武・渡辺監督、開幕直前インタビュー〜

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 2008年のプロ野球は20日、パ・リーグが一足先に開幕する。昨季、26年ぶりBクラスに沈んだライオンズは、球団名を「埼玉西武ライオンズ」と変更し、現役時代、主力投手として黄金時代を支えた渡辺久信新監督を迎えた。カブレラ(オリックス)、和田一浩(中日)と大砲が抜け、新生レオ軍団はどんな野球を目指すのか。2月の南郷キャンプ中、渡辺監督に当HP編集長・二宮清純が直撃した。
二宮: 一軍監督になって初めての春季キャンプで、「監督」という肩書には慣れましたか?
渡辺: そうですね。去年まで3年間、ファームの監督をやっていましたので、「監督」と呼ばれることには慣れました。

二宮: 実際、一軍で指揮をとってみての感想は?
渡辺: 急に監督として外部からやってきたわけではないので、チーム状態や選手の力量はほとんど把握できています。去年までずっとファームで一緒にやってきた選手も多い。その点では、やりやすいですね。

二宮: 昨年までファームで監督を務めた中で、期待する若手選手は?
渡辺: 高卒2年目の木村文和(埼玉栄高出身)は、そのうちのひとりでしょうね。すごく将来性のある選手で、昨オフはハワイのウインターリーグで修行をさせました。ただ、僕からすれば、もうちょっとスピードボールで押してほしい。ピッチングがおとなしいんです。まっすぐも150キロ近く投げるピッチャーですから、その特長を生かして経験をどんどん積めば、大化けする可能性があるとみています。

二宮: チームは昨年、26年ぶりのBクラス。若い涌井秀章が最多勝(17勝)を獲得したものの、投手陣全体でエース松坂大輔(レッドソックス)が抜けた穴を埋めることができませんでした。今年は主砲のカブレラ、和田一浩が抜け、良く言えば、これからのチーム、悪く言えば戦力的にダウンしているチームという印象です。そんな中、火中の栗を拾う形になって、不安はないですか?
渡辺: 昨年の秋に監督就任を打診された時は、やはり、すぐには返事できませんでした。「ちょっと考えさせてください」と。その日の夜は、自問自答を繰り返しているうちに眠れなくなりました。人生でこんなことは初めてでした。これまで僕はシーズンの開幕投手を3度、日本シリーズの初戦先発を4度も経験しているんですが、前日に寝られないことは1度もなかった。今年悪かった理由とか、来年の構想とか、柄にもなく考え込んでしまいました。
 ただ、僕もライオンズでプロ野球のスタートを切った人間です。次第にこのチームを自分の力で浮上させたいという意欲が強くなってきました。それで監督を引き受けることにしたんです。

二宮: 投手出身の監督ですから、やはり建て直しはピッチャーから?
渡辺: 月並みですけど、ピッチャー中心のディフェンスですよ。それが一番、自分の中でやりやすい方法というか、優勝するため近道だと思っています。先発ローテーションの確立はもちろんですが、去年、負けが込んだ理由のひとつとして逆転負けが37試合もありました。最近の野球は後ろの投手がしっかりしていないと勝っていくのは難しい。

二宮: 抑えは現時点では誰の予定ですか?
渡辺: 候補はたくさんいます(笑)。できれば、一昨年29セーブをあげた小野寺力でいきたいところです。彼はストレートが速く、フォークボールも持っていて、三振が取れます。タイプ的には最適でしょう。
 でも、昨季途中から抑えに転向したグラマンもすごく調子がいい。さらには中日から和田の人的補償で岡本真也を獲得しました。彼はセットアッパーとしての経験が豊富。そういった部分は抑え投手としてすごく大事です。中日には岩瀬仁紀という絶対的なクローザーがいましたけど、うちでは抑え候補のひとりとして考えています。

二宮: 監督の現役時代はライオンズの全盛期。投手では工藤公康(現横浜)、郭泰源、打者は清原和博(現オリックス)に、秋山幸二、デストラーデ。当時の西武と比べると、今のチームはどう映りますか?
渡辺: このチームは、まだまだ、そのレベルには達していないですよ。当時のチームは大人のチームでした。選手がしっかり自分の役割を理解して、役割分担をしっかりこなしていたから強かった。
 優勝争いをする中でチームは強くなっていくと僕は思うんです。優勝争いをしないことには、プレッシャーのかかる経験ができない。昨年、Bクラスに落ちてしまって、今年も優勝争いから遠ざかってしまうと、どんどん弱いチームになっていく。そんな危機感を持っています。

二宮: 西武時代は広岡達朗さん、森祗晶さん、ヤクルト時代は野村克也さんと名将と呼ばれる厳しい指導者の下で監督はプレーしてきました。若手が多い今のチームではそういった厳しさも前面に押し出す形になるのでしょうか?
渡辺: いや、そんなに厳しくはできないですね。今の選手にはムリです。監督と選手というヘンなプレッシャーを与えたくないと個人的には考えています。こちらからプレッシャーを与えて試合に出させるのと、そうでないのとでは、今の選手の場合、後者のほうがいい結果が出ると思っています。

二宮: 今年の目標はもちろん優勝だとは思いますが、少なくとも3位以内と?
渡辺: 現時点では3位以内という目標は立てていません。当然、優勝です。ウチはこれ以上、失うものがありません。だから怖いものなしですよ。もう下はひとつだけ(昨季5位)。どんどんアグレッシブにいくつもりです。

二宮: パ・リーグを見渡すと、東北楽天・野村克也監督が72歳、福岡ソフトバンクの王貞治監督が67歳。父親のような年齢の監督を相手にしないといけません。
渡辺: そうですね。オリックスのコリンズ監督も、千葉ロッテのバレンタイン監督も、北海道日本ハムの梨田昌孝監督も経験豊かで素晴らしい実績をお持ちです。ただ、勝負事となれば話は別。ひと癖もふた癖もある監督陣の中に入って、臆することなくやっていきますよ。

<小学館『ビッグコミックオリジナル』4月5日号(3月20日発売)の二宮清純コラム「バイプレーヤー」にて渡辺監督のインタビュー記事が掲載されます。そちらもぜひご覧ください!>
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