「毎年開催されているスポーツイベントの中で、最大規模のものはなにか?」
日本人でこの質問に正確に答えられる人は少ないかもしれない。サッカー? 野球? いやいや答えは「ツール・ド・フランス」。そう、毎年7月に3週間かけてフランスを一周する自転車レースだ。
(写真:激しいレースが連日続く。 (C)Yuzuru SUNADA  ※J SPORTSにて7月29日(日)まで絶賛ハイビジョン放送中!)
 サイクルスポーツは、最近日本でも人気上昇中だが、まだまだアメリカスポーツ寄りの日本人には、ヨーロッパでの人気は理解しにくい。なにしろ、現地では3大スポーツとして、「サッカー、モータースポーツ、自転車」とあげられるくらいのポジション。フランスやイタリアなどを旅したことのある方は、バスや車から気持よさそうに走る自転車を見たことある方が多いはずだ。そんな土壌のなかでも人気があるのがこの「ツール・ド・フランス」。バカンスシーズンと重なる事もあり、毎年多くの観客を動員する。

 その規模は、今年の大会を例にとるとこんな感じ。
 競技距離 3547km
 競技日程 23日
 関係車両 2400台
 運営スタッフ 725人
 毎日必要な関係者用ベッド(スタッフ、選手、チーム関係者) 1300台
 コース警備の警官 2300名
 報道関係者1700名
 関係者に出すPassの数 4500
 まあまあ、こんな規模のイベントが3週間にわたってフランスや近隣諸国を回っていくのだから、超大規模なサーカス団の興行といっては怒られるか。ましてやその移動そのものがレースなので、運営者の苦労は並大抵のものではない。

(写真:今年のレースはロンドンスタートだった。 (C)Yuzuru SUNADA  ※J SPORTSにて7月29日(日)まで絶賛ハイビジョン放送中!)
 私も日本では、「ツアー・オブ・ジャパン」という1週間の自転車レースに関係している。これは大阪をスタートして、東京まで1週間をかけて毎日のようにレースを繰り返して移動していくもの。まあツールを小規模にしたものとイメージしてもらうといいだろう。それでも、1週間にわたって毎日異なる場所でセレモニーがあり、レースがありという繰り返し。選手はもちろん大変だが、スタッフの苦労も並ではない。後半に入ると、選手はもちろんのこと、スタッフの顔にも疲労の色がにじみ出てくる。「あと、○日だよね」というのが朝の挨拶になってくるのもこの頃だ。その分、スタッフの連帯感とすべてが終わった時の開放感は独特のものがある。まるでともに山に登った仲間のような気分。たった1週間のレースでこうなのだから、3週間続くレースなんて想像するだけでも疲れてしまう。1ヶ月、毎日移動とレースを繰り返す生活…。

 日本の報道関係者もかなりの数が行っているが、その話を聞いていると通常の取材とは大きく異なる。移動に次ぐ移動、レースが終わって記事を送ってホテルに戻るだけでも大変な作業になるらしい。特に山岳コースになると、レース後の道はおびただしい観客でごった返し…。ホテルにその日のうちに到着出来ないなんて珍しくない。でも、翌朝はスタート地点に向かい〜。この生活が3週間である。選手はもちろんだが、スタッフもメディアもタフでなければパリにたどり着く事は出来ないのだ。(最終ゴールはパリ、シャンゼリゼ)

 さて、このツールを日本で毎夜Live中継しているJ SPORTS。私も毎日のようにここで中継を担当しているのだが、なかなかの体力勝負。なにしろ短くても4時間、長い日は6時間以上にわたって喋り続けなければいけない。そう、我々もタフでなければゴール出来ないのだ。
 ちなみに世界でツールを放送しているのは185カ国、Liveで中継しているのは51カ国にも及ぶという。つまり、現地入りしていなくとも世界中で私たちのように3週間走り続けている人たちがいるということ。栄えあるその1人として、日本代表?として、凱旋門までたどり着かない訳にはいかないのだ!?

 ぜひ皆さんも、観戦者として途中参加しませんか?

白戸太朗オフィシャルサイト

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール
スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦している。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。
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