FIG世界体操競技選手権大会の男子個人総合決勝が30日(日本時間31日)、英国・グラスゴーで行われ、内村航平(コナミスポーツクラブ)が92.332点で優勝した。内村は世界選手権6連覇を達成した。2位に90.698点でマンリケ・ラルデュエト(キューバ)が、3位には90.099点でデン・シュウディ(中国)が入った。初出場の萱和磨(順天堂大)は88.198点で10位だった。内村は第2ローテーションのあん馬で1位に立つと、最後までトップの座を譲ることはなかった。28日の団体戦に続き、今大会2冠目を手にし、来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定した。

 

 2009年のロンドンで世界王者になって以降、個人総合金メダルは内村の独占状態にある。6年後のグラスゴーでも、その座は揺らぐことはなかった。

 

 予選をトップで通過した内村。第1ローテーションは床運動(ゆか)からスタートした。第1班の5人目に登場した内村は、後方3回半ひねりから前方1回半ひねりを決める。得意種目のゆかで次々に技を繰り出していく。1分経過を知らせるブザーが鳴り、フィニッシュへ向かう。後方3回ひねりを難なく決めて、15.733点の高得点をマークした。あん馬で16.100点を叩き出したマックス・ウィットロック(英国)に次ぐ2位。世界王者への道は上々の滑り出しとなった。

 

 第2ローテーションのあん馬では、足先まで美しい旋回で安定感抜群の実施を見せた。難度を示すDスコアは6.2点と決して高い方ではないが、出来栄えを示すEスコアは種目別でトップのウィットロックと同じ8.900点である。15.100点と、2種目目も15点以上。第2ローテーションを終えて、“定位置”のトップに立つ。

 

 続くつり輪でも安定したパフォーマンスを見せる。ひとつひとつの技を丁寧に、そして正確に実施していく。最後は内村の真骨頂、吸い付くような着地でバシッと決める。14.933点――。3種目を終えた折り返し地点で合計45.766点。2位のドネル・ウィッテンバーグ(米国)とは0.067点差とリードはわずかだった。

 

 後半戦のスタートは跳馬だ。内村は団体戦同様にDスコア6.2点「リ・シャオペン」(ロンダートから後ろとびひねり前転とび前方伸身宙返り2回半ひねり)の大技に挑んだ。集中した表情で、時を待つ。両手を前方にかざすポーズを見せ、ラインを頭に思い描いた。団体決勝ではラインオーバーと着地で乱れたが、今回は両足で一歩動く程度にまとめた。Eスコアは9.433点と高得点。種目別全体1位の15.633点を加え、2位との差を0.683点に広げた。

 

 第5ローテーションの平行棒で、内村は王座をほぼ盤石なものとする。第1班のトップバッターを務めると、D難度、E難度の技を次々に繰り出していく。ライバルたちがため息をつきそうになるほどの安定感。最後の着地も完璧に決め、Eスコアは9.033点がついた。15.833と種目別全体3位の高得点をマークした。ここまで合計77.232点。2位に浮上してきたキューバの19歳ラルデュエトに1点差以上の差をつけて、最終種目の鉄棒へと向かった。

 

 ラストの鉄棒では「今回は勝ちにこだわった」と団体決勝で失敗したG難度の離れ技「カッシーナ」を回避した構成で臨んだ。大トリを務め、会場中の注目を一身に浴びる中で、着実に技を続けていく。最後の伸身新月面の着地は微動だにしない。得点を待たずしても、王座が動かないことは火を見るよりも明らかだった。15.100点が加算され、92.232点でフィニッシュ。2位に1.5点差以上をつける圧勝だった。

 

 栄冠を手にした内村は「ただただ気持ちを6種目に保っていく。どの種目でも気持ちが切れたことはなかった」と振り返った。アップが終わってから、鉄棒が終わるまで、ずっとスイッチを入れっぱなしにしていたという。1種目平均15.389点と抜群の安定感を見せ、世界最高のオールラウンダーであることを証明した。

 

 五輪も合わせれば、個人総合では7年もの間負けていない。それでも「まだ自分の中では演技には満足できていない」と、王者は事もなげに言ってみせた。最終日には種目別鉄棒の決勝を控えている。「(鉄棒は)通しきれていないので、しっかり自分の演技をして着地を止めていきたい」。絶対王者は頂に立ち続けてなおも、上を見ている。

<男子個人総合決勝>

1位 内村航平(コナミスポーツクラブ) 92.332点

2位 マンリケ・ラルデュエト(キューバ) 90.698点

3位 デン・シュウディ(中国) 90.099点

10位 萱和磨(順天堂大) 88.198点

 

(文/杉浦泰介)