1日(現地時間)、FIG世界体操競技選手権の最終日・男女種目別決勝2日目が英国のグラスゴーで行われた。男子鉄棒は、内村航平(コナミスポーツクラブ)が15.800点を出して金メダルを獲得した。田中佑典(コナミスポーツクラブ)が平行棒、白井健三(日本体育大)が跳馬に出場し、いずれも7位に終わった。女子は初出場の宮川紗江(セインツ体操クラブ)が床運動(ゆか)で4位入賞を果たした。ゆかを3連覇したシモーネ・バイルズ(米国)は平均台も制し、今大会4冠。世界選手権史上最多10個目の金メダルを手に入れた。今大会で日本は男女合わせて金メダルを4個、銅メダルを1個獲得した。

 

 内村が自身初となる世界体操3冠を達成した。種目別・鉄棒で予選トップ通過のダネル・リーバ(米国)が、完璧な演技を終えて、15.700点で暫定首位につける。直後に順番が回ってきた内村は、このプレッシャーのなかで、団体決勝で落下があった「カッシーナ」の離れ技を見事に成功させた。演技中盤に少し止まりかけたが何とかこらえて、終末技は着地両足1歩でまとめた。得点はリーバを0.133点上回る15.833点を叩き出す。後の4人も内村の得点を超えることはできなかった。内村は自身同大会5度目の出場で初めて鉄棒で頂点に立った。出場全種目で金メダルを獲得した内村は「最後の最後で自分の演技ができた」と試合を振り返った。個人総合では6連覇を果たし、団体では念願の金メダルを手にした。来年のリオデジャネイロ五輪での期待は膨らむが、内村は「リオはこんなに甘いものじゃないと思うので、ここから出直したい」と気を引き締めた。

 

 前日、ゆかで2年ぶりの優勝を果たした白井は、内村に続く“3冠”には届かなかった。トップバッターで演技をした白井は、1本目に自身の名がついた「シライ/キムヒフン」(伸身ユルチェンコ3回ひねり)に挑戦したものの、回転不足で2回半ひねりと見なされた。1本目のDスコアは5.6点の実施となり、得点は14.500点。本来であれば、2本目はロンダートから2回半ひねりを予定していたが、ルール上、1本目と2本目の後半の技を同じものにしてはならないため、2本目は予定よりも回転を半分減らして「アカピアン」(ロンダートからの2回ひねり)を跳んだ。1本目よりもDスコアは0.4点も下げたが、Eスコアが9.333点と技の完成度は高く評価されて14.533点を出した。2本の平均点は、14.516点で7位に終わった。優勝は、Dスコア6.4点の大技を2本とも成功させたリ・セグァン(北朝鮮)が2大会連続で金メダルを獲得した。

 

 平行棒を予選2位で通過した田中は、最終演技者で登場した。決勝に進んだ8人のうち4人がDスコア7.0点とハイレベルな戦いの中、田中はDスコアが6.6点と最も低い。美しい演技をしてEスコアで高得点を目指した。田中は、団体決勝で落下があったE難度「シャルロ」を決めると、着地もピタリと止めるノーミスだった。Eスコアは9.000点を出して15.600点で7位。表彰台には届かなかったものの、Eスコア9点台は田中のみだった。日本の武器である美しい体操を体現した田中は「自分らしい美しい演技ができたと思います」と満足げな表情を見せていた。

 

 男子に負けじと、スーパー女子高生・宮川も、得意のゆかで世界の強豪たちに挑んだ。予選を2位通過した彼女には、57年ぶりの同種目でのメダル獲得が期待された。トップバッターで演技をした宮川は、実施前に緊張した表情を浮かべていたが、曲が始まると16歳とは思えぬ表現力で審判員を魅了する。団体決勝でラインオーバーしてしまったH難度「シリバス」(後方抱えこみ2回宙返り2回ひねり)は、しっかり成功させた。優勝したバイルズに次ぐDスコア6.4点の高度な構成を大きなミスなく終え、予選・団体決勝を上回る14.933点のハイスコアをマーク。宮川は3位にわずか0.067点及ばずに惜しくもメダルを逃した。とはいえ、演技の出来は素晴らしかった。リオ五輪、その先への期待を持たせるパフォーマンスだった。

 

 10日間の熱戦を終え、日本は金4個、銅1個、合計5個のメダルを獲得した。男子は、団体で悲願の金メダルを掴み、内村が個人総合と鉄棒、白井がゆかを制した。あん馬では初出場の萱が銅メダルを手にするなど7種目中5種目で表彰台に上がった。一方、女子はメダル獲得には至らなかったものの、団体で5位入賞、宮川がゆかで4位入賞と大健闘と言っていいだろう。全体を見ても、昨年は1個だった金メダルが、今年は3個増えた。団体含め3冠の内村を筆頭に、世界に日本の強さを見せつけたかたちとなった。女子は、宮川らをはじめとした若手の活躍で世界のレベルに徐々に追いついていることを証明した。次回の世界体操は、2017年にカナダのモントリオールで開催される。

 

<男子鉄棒・決勝>

1位 内村航平(コナミスポーツクラブ) 15.833点

2位 ダネル・リーバ(米国) 15.700点

3位 マンリケ・ラルデュエト(キューバ) 15.600点

 

<男子平行棒・決勝>

1位 ヨウ・ハオ(中国) 16.216点

2位 オレグ.ベルニャエフ(ウクライナ)16.066点

3位 オレグ.ステプコ(アゼルバイジャン)15.966点

3位 デン・シュウデイ(中国)15.966点

7位 田中佑典(コナミスポーツクラブ) 15.600点

 

<男子跳馬・決勝>

1位 リ・セグァン(北朝鮮)15.450点

2位 マリアン・ドラグレスク(ルーマニア) 15.400点

3位 ドネル・ウィッテンバーグ(米国)15.350点

7位 白井健三(日本体育大学)  14.516点

 

<女子床運動・決勝>

1位 シモーネ・バイルス(米国) 15.800点

2位 クセニア・アファナシェワ(ロシア) 15.100点

3位 マーガレット・ニコルス(米国) 15.000点

4位 宮川紗江(セインツ体操クラブ) 14.933点

 

(文/安部晴奈)