160825topics

(写真:「温かく迎えてくれた」と社員たちの歓迎に感謝した伊調<左>と太田)

 25日、リオデジャネイロ五輪の女子レスリングのフリースタイルで4連覇(63キロ級3回、58キロ1回)を達成した伊調馨と、男子グレコローマンスタイル59キロ級銀メダリストの太田忍が所属先のALSOK本社(東京都)を訪れて結果を報告した。詰めかけた300人の同社社員の前で伊調は「金メダルを守れて良かった」と挨拶。太田と共に花束を贈呈されるなど歓迎を受けた。

 

 伊調と太田。金銀メダリストは共に笑顔でALSOK社員の祝福に応じた。だが2人ともリオでの戦いには納得していない。

 

 伊調は4連覇が懸かった決勝で1-2とポイントをリードされながらも、残り数秒のところで逆転劇を演じた。「内容があまり良くなかった。もっといい試合をしたかった」と試合後に語っていた。帰国後もその思いは変わらない。

「ああいう試合になってしまったことは自分の中でも悔しい。納得のいくレスリングはできなかったし、見せられなかった」

 

160825topics2

(写真:日本に帰ってきてやりたいことを問われ、「疲れるほど遊びたい」と答えた)

 吉田沙保里以来の国民栄誉賞授与も検討されているが、伊調は「そんな賞をいただけることになれば光栄ですが、自分に似合っていない気もします。それは記録とかではなく、国民の皆様に勇気とか感動を与えられる人だと思うんです。私はまだかなと」と謙遜する。

 

 6月に32歳となった絶対女王の去就にも注目が集まる。前人未到の金字塔を打ち立て、何を目指すのか。伊調は「まだ選手として自分のレスリングを修正したい思いもあります。アスリートとして、ひとりの人間としてこれからどう生きていくのかはゆっくり考えたい」と話すにとどまった。

 

 一方、初出場ながら銀メダルを獲得した太田は「金メダルしか狙っていなかった」とリオの地で涙した。準優勝から10日が経った今でも「悔しい気持ちは変わらない」と振り返る。

 

 五輪、世界選手権のメダリストを次々と撃破し、快進撃を見せたが、決勝ではイスマエル・ボレロモリナ(キューバ)に完敗だった。太田は「攻め切れなかった」と反省。グラウンドでのディフェンスと合わせて、4年後への宿題を突き付けられた。

 

 太田は競技後もブラジルに残り、女子の試合も観戦した。「金メダルをいっぱい獲って、違う世界を見ている感覚になった。もう1回あの舞台に立って金メダルを獲りたい」。6階級中4階級を制覇し、5階級で表彰台に上がった女子に刺激を受けたようだ。

 

 肩を負傷し、現地ではマット練習は満足にできなかったという。「今はスパーリングをしたくてウズウズしています」。22歳の若武者は次に向けて、トレーニングがしたくてたまらない様子を見せた。「世界で一番の練習をして、世界で一番になりたい」。そう語っていた男はまずは来年の世界選手権制覇を目標に掲げた。

 

(文・写真/杉浦泰介)