伊藤紗弥、K-1元女王に完勝 吉成名高は初の欧州ファイターに苦戦!? ~RWS JAPAN~

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 ムエタイのラジャダムナン・ワールドシリーズ(RWS)の日本大会『RWS JAPAN』が14日、千葉・TIPSTAR DOME CHIBAで行われた。女子アトム級(46.26kg)は伊藤紗弥(尚武会)が、K-1同級元王者パヤーフォン・バンチャメーク(タイ)を3対0の判定で下した。ラジャダムナンスタジアム3階級制覇を成し遂げた吉成名高(名高・エイワスポーツジムとして出場)は、117ポンド(53.07kg)契約でケビン・マルチネス(スペイン)に3対0で判定勝ち。メインイベントは石井一成(イッセイ・ウォーワンチャイとして出場)が松田龍聖(大原道場)と対戦。判定でドローとなった。

 

 東京・後楽園ホールでの日本旗揚げ戦から、わずか2カ月で第2弾開催だ。会場のTIPSTAR DOME CHIBAは自転車競技の国際規格に基づいた250m木製トラック(バンク)を有するスポーツ施設。バンクに囲まれたリングでムエタイのファイトが行われた。

 

 伊藤は“微笑みの国”からの刺客を時折、笑顔を見せながら完封した。2カ月前の後楽園では強化中のパンチを軸にKO勝ちを収めた。この日は左ジャブをうまく使いながら、ミドルと前蹴りで自分の距離で戦う。パヤーフォンはパンチを中心に攻めてくる。時折バックスピンエルボーを繰り出すなど打開を図ったが、ほぼ伊藤のペースのまま試合終了のゴングを聞いた。判定は3ラウンドすべてで3人のジャッジが10-9で伊藤を支持。ユナニマス・デシジョン(3対0の判定)で勝利した。

 

 試合後、伊藤は「判定にはなってしまいましたが、すごく楽しくかった」と振り返った。試合中にも笑顔がこぼれていたことについて聞くと、こう答えた。

「1ラウンドにバック肘を受けたので、どこかでやり返そうと思っていました。3ラウンドは狙っていたのですが、なかなかタイミングが合わなかった。その苦笑いもありましたが、試合が楽しかった」

 

 本人曰く「最近では久しぶり。“勝たなければいけない”という闘いが多かった。心から楽しいと思える試合ができました」という。身長はほぼ同じ(伊藤154cm、パヤーフォン155cm)で、好戦的なファイターとリング上で嚙み合った。「これまでの長身のタイ選手との対戦では、どうしても距離を取られて、自分の闘いができなかった。私は打ち合って、蹴り合ってという試合をしたかった。パヤーフォン選手ともやりたいと思っていました」

 

 次戦は5月に地元・八王子でのムエローク。2カ月連戦となるが、伊藤は「昨年11月から(今年2月まで)4連戦やりましたから、全然大丈夫です」と笑顔で語った。

 

 ユナニマス・デシジョン(3対0の判定)で勝っても、苦戦したようにも見えてしまうのはそれだけ彼への期待値が高いからだろう。吉成にとっては初のヨーロッパ出身選手との対戦。現状の適正体重と言われているスーパーフライ級(52.16kg)よりも重い53.07kg契約での闘いは一筋縄ではいかなかったようだ。
 
 第1ラウンドから主導権を握ったが、ダウンを奪えなかった。吉成は言う。
「倒すつもりで挑んだんですが、倒すのはそう簡単ではないのもわかっていました。ケビン選手は映像でダウンするシーンもグラついているシーンさえ見つけられなかった」
 多くのタイ人と対戦経験のある吉成にとっても異質なファイターだったという。
「試合中のリズムが独特で掴みづらかった。キックをスウェイしてよけても伸びてきて、かすった。距離感が難しかった。あとは効いた後の回復力が違うと感じました」
 左フックや左ハイキックで手応えを感じた攻撃もあったと言うが、すぐに復活して仕留め切れなかったという。
 
 いつもより重い体重で闘ったことについては「スーパーフライの方が地面を足で掴む感覚がある。少しフワッとした感じ」と多少の違和感もあったようだ。それでも相手に付け入る隙をほぼ与えなかった。今後、バンタム級など上の階級で闘う可能性もゼロではない。
「身体は大きくなっているので、(今日で)懲り懲りというよりは今回の経験を踏まえ、(上の階級で闘った時には)またいい調整ができるかと思う」

 

 試合後、 「夢だった3階級制覇を達成したので、これからは華やかな舞台に出て華やかな試合をして、ムエタイという競技を盛り上げていきたい」と展望を述べた。
「RWSはできて2年ですが、世界的注目度が上がっている大会ですが、もっと上にいけると思っている。面白い試合をして底上げをするのか、他の大会で盛り上げるのか。そういった話し合いをしています」
 吉成によればRWS世界進出の一環でアメリカ、ヨーロッパなど他国開催の噂もあるという。「もし実現するなら参戦したい」と前向きな姿勢を示した。

 

 メインはムエタイで数々のベルトを腰に巻いてきた石井と、ムエタイルール初挑戦となる松田の日本人対決だ。煽り映像でもムエタイvs.キックと紹介された。キャリアで上回る石井はRIZINやK-1にも参戦経験があり、ムエタイルールのみならずキックルールでも闘ってきた。今年3月のRWS(タイ開催)で1ラウンドKO勝ちした。2021年8月にデビューしたばかりの松田は、HOOST CUP日本スーパーフライ級王座を獲得するなど11戦全勝と勢いに乗っている18歳だ。

 

 取材をしていた自分を含め、ムエタイルールの難しさを感じたのが第1ラウンドだ。石井の左フックで松田が倒れたように見えたシーンではダウンを取られなかった。石井の左ローキックが松田の急所付近に当たった際には、レフェリーがカウントアップ。ムエタイでは明確なローブローでない限りダウン扱いになると言われている。吉成によれば、過度のアピールもかえってダメージがあったと見られる向きもあるという。「1ラウンド終わってから判定が出るまで、ダウンを取られているのもわかっていなかった」とは松田。1ラウンドはジャッジ3人が10-8で石井を支持した。

 

「お互い噛み合わず、レフェリーからも『アグレッシブに行け』と言われました」と石井。松田の前後の出入りが速く、独特の間合いに苦しんだという。一方の松田は第2ラウンドから前に出る。このラウンドは10-9で松田が取った。第3ラウンドもアグレッシブに攻めているように見えたのは松田の方だった。

 

 ジャッジの判定は3者とも10-9で松田を支持。合計28-28のドロー。判定が告げられた瞬間、どちらも驚いたような表情を見せた。「ドローはないだろう思っていた」とは石井の談。無敗はキープしたものの、連勝がストップした松田は試合後、眼を赤くしていた。

「悔しさもあるし、倒し切れなかった自分にもムカついてました」

 

 痛み分けとも言えるが、評価を上げたのは松田の方だろう。
「勝利が付かなくてもお客さんが盛り上がり、“この試合を観れて良かった”と思ってもらえることに価値がある。結果はドローやったけど、盛り上げたり、心を奪うことはできたという感触が自分の中ではあった。勝ち以上に大きいものを得られたとも思っています」

 また初のRWS参戦については、「メチャクチャ最高でした。始まりから終わりまでずっと楽しめました」とも述べた。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

BS11では毎週木曜日23時に『ワールドファイトCLIP! Supported by U-NEXT」を放送中! 4月18日(木)の放送では今大会の模様も紹介される予定です。

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