(写真:健闘を誓い合った井上尚弥<左>とルイス・ネリ)

「東京ドームで(プロボクシングの興行が)行われるのはタイソン以来と言うことで凄くモチベーションが高い。ルイス・ネリ戦は、気を引き締めねばならない闘いだと思う。過去一(これまでで最高の状態)に仕上げます」(井上尚弥)

「再び日本の地を踏むことができてうれしく思う。申し訳なかったと、まずは謝りたい。いまは集中して練習をしている。2度裏切ってしまったが、きちんと調整をしてグレートな試合をしたいと思っている」(ルイス・ネリ)

 

 すでに決定事項として報じられていた5月6日・東京ドーム、WBA、WBC、IBF、WBO世界4団体統一スーパーバンタム級タイトルマッチ、井上尚弥(王者/大橋)vs.ルイス・ネリ(メキシコ)が正式発表された。

 3月6日、東京ドームホテルでの『Prime Video Presents Live Boxing 8』開催発表記者会見に両雄が出席し健闘を誓い合ったのだ。

 

“悪童“の異名を持つネリは、過去に物議を醸している。

 2017年8月、京都で当時WBC世界バンタム級王者だった山中慎介(帝拳)に挑戦し4ラウンドTKO勝ちを収めベルト奪取。しかし直後にドーピング検査陽性反応が発覚。

 さらに翌2018年3月、東京・両国国技館での再戦の際にはネリが1.3キロの体重オーバー。それでも山中サイドの判断により、ネリの王座が剥奪された状況下で試合は行われた。結果、ネリの2ラウンドTKO勝ち。

 これらの事態を重く見たJBCはネリに対し、日本国内での無期限活動停止処分を言い渡す。だがJBCの規定が変わったこともあり、その処分は先月、解除された。

 

34年前、タイソンが敗れた地

 

(写真:会見後に“因縁の二人”が対面、ルイス・ネリ<左>は山中慎介に謝罪した)

 そんな経緯もあり、会見ではネリに対して厳しい質問が相次いだが、マネジャーのショーン・ギボンズ氏は、こう話した。

「ネリに対して厳しい声があることは分かっている。でも彼は節制をしており現在の体重は134パウンド(60.78キロ)。ウェイトコントロールは順調で問題はない」

 また会見後に井上尚弥が所属するジムの会長である大橋秀行氏は、キッパリと言った。

「もしネリが1パウンドでもオーバーしたら試合はさせない。その際には報酬も支払わない」

 おそらくこれらは、契約条項に盛り込まれているのだろう。ドーピング検査も入念に行われることになる。ネリ陣営が多額のファイトマネーをフイにすることは考えづらく、試合は問題なく成立すると思われる。

 ただ東京ドームは34年前に世界ヘビー級タイトルマッチが行われ、絶対王者だったマイク・タイソン(米国)がジェームス・ダグラス(米国)に敗れる“大番狂わせ“が起こった会場。大舞台なだけに何が起こるかは分からない。下馬評では井上尚弥優位だが、ネリも35勝(27KO)1敗の戦績を誇り、一撃を秘める実力者。シリアスな闘いは必至だ。

 

 さらに、アンダーカードも以下の通り実に豪華。

 

▶WBA世界バンタム級タイトルマッチ

 井上拓真(王者/大橋ジム)vs.石田匠(1位/井岡)

▶WBA世界フライ級タイトルマッチ

 ユーリ阿久井政悟(王者/倉敷守安)vs.桑原拓(3位/大橋)

▶WBO世界バンタム級タイトルマッチ

 ジェイソン・モロニー(王者/オーストラリア)vs.武居由樹(10位/大橋)

 

 ドーム決戦は「4大世界タイトルマッチ」となる。

 満員の観衆が集まることが予想され、チケットは3月8日(土)から大橋ジムのHPで抽選受付が始まる。価格はSRS席が22万円、最安値の2階スタンド指定席1万1000円。

 テレビでの生中継は今回もなく、試合の模様はPrime Videoで独占生配信される。

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶3月9日(土)、東京・後楽園ホール/「DEEP 118 IMPACT」メガトン級王座統一戦、ロッキー・マルティネスvs.酒井リョウほか

▶3月10日(日)、京都・KBSホール/「HOOST CUP KINGS KYOTO 13」泰良拓也vs.成尾拓輝ほか

▶3月17日(日)、東京体育館/「RISE ELDORADO 2024」世界バンタム級タイトルマッチ、志朗vs. 田丸辰ほか

▶3月20日(水・祝)、東京・国立代々木競技場第一体育館/「K-1 WORLD MAX 2024」クルーザー級タイトルマッチ、シナ・カリミアンvs. リュウ・ツァーほか

▶3月20日(水・祝)、大阪・世界館/「ACF 100」グラップリング・ウェルター級タイトルマッチ 、ガワコ・ロックブーケvs. 渡部修斗ほか

▶3月23日(土)、兵庫・神戸ワールド記念ホール/「RIZIN LANDMARK9 in KOBE」ホベルト・サトシ・ソウザvs. 中村K太郎ほか

▶3月23日(土)、東京・後楽園ホール/「PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.3」環太平洋フェザー級王座決定戦、竹原魁晟vs.上原 平ほか

▶3月24日(日)、神奈川・横浜大さん橋ホール/「Road to LEGEND」奥脇竜哉vs.ペットウボン・ソーコンキアットほか

▶3月24日(日)、東京・竹芝ニューピアホール/「DEEP TOKYO IMPACT 2024 1st ROUND」&「DEEP JEWELS 44」JEWELSアトム級タイトルマッチ、パク・シユンvs.伊澤星花ほか

▶3月30日(土)、東京・後楽園ホール/「Krush.159」スーパーバンタム級タイトルマッチ、璃明武vs.倉田永輝ほか

▶3月31日(日)、東京・立川ステージガーデン/「PANCRASE 341」ライト級タイトルマッチ、アキラvs.雑賀“ヤン坊”達也ほか

▶3月31日(日)、愛知・名古屋国際会議場/プロボクシングWBC世界ミニマム級タイトルマッチ、重岡優大(ワタナベ)vs.メルビン・ジェルサエム(フィリピン)ほか

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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