大谷翔平(北海道日本ハム)の打撃練習には、顕著な特徴がある。インパクトのときに左足(つまり軸足)を、大きくはね上げるのである。

 試合中の打席では見られない動作なので、きっと何かを意図してやっているのだろうな、と思っていた。

 

 大谷が日本一の打者である。というと、様々な異論が出るだろうけれど、日本で一、二を争う飛距離の出る打者であることは誰も否定できまい。強く踏み込んで遠くへ飛ばす練習なのだろう、と勝手に想像していた。

 

 われらが鈴木誠也のおかげで、その謎がスッキリ解決しました。

 

 10日の自主トレで、鈴木が右足(すなわち軸足)を、大谷ばりにはね上げながら打ったのだ。

「大谷くんのまねです」(「デイリースポーツオンライン」1月11日)と本人が説明してくれている。

 

「翔平は全部(の重心を)こっちに持っていく意識づけと言っていた」(「日刊スポーツ」1月11日付)

 やっぱりね。つまり、踏み込んだ足に、ダーンと全体重を乗せて飛ばすのですね。勉強になる。と同時に、それを積極果敢に練習に取り入れてみた鈴木がエライ。

 

 実は、いまだに去年の日本シリーズがひっかかっている。新年になったというのに、ウジウジしたやつで、すみません。正直なところ、去年のシーズン中など「今年優勝できたら、あと20年は優勝できなくてもいいや」と思っていたのだが、人間、贅沢になるものだ。ぜひ、連覇してほしいし、今年こそ、日本シリーズに勝ちたい。相手は、福岡ソフトバンクでももちろん不足はないが、やはり大谷の日本ハムに勝ちたい。

 

 と本気で思うなら、去年よりも高みに挑む姿勢がなくてはならない。

 

 丸佳浩は、9日の自主トレ後、去年よりももっともっとつなぐ意識を強調したそうだ。

 極端な話、無死満塁で、自分はゲッツーを打っても、1点取れればいい、と。

 

 こういう、去年よりもさらに上に行こうとする姿勢を見ると、少し安心する(そうでない人がいないことを祈る。選手もファンも!)。

 昨シーズンの東京ヤクルトを見れば一目瞭然だが、連覇するというのは、大変難しいことである。

 

 シーズン中、たとえ負けの込む時期があっても、より上へ、という姿勢は貫いてもらいたいものだ。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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