第186回 パラスポーツ体験会を「もったいない」にしないために

facebook icon twitter icon

 今年度も、多くのお仲間の皆さまと、様々なところでパラスポーツ体験会を開催できました。

 

 体験会を始めた20数年前、参加を呼び掛けると、「自分には関係ない」といったお答えも多かったように思います。「パラスポーツは障害のある人がするもの」「体験会は障害のある人向けに開催されるもの」という意識からでしょう。

 

 東京パラリンピック招致のころから、この空気は変わりました。「パラスポーツは障害のある人が行うだけのもの」という概念が破られていきます。体験イベントとなれば、なおさらのこと、だれもが参加し、楽しんでみる、というカテゴリーになりました。

 

 パラスポーツの体験会は、障害の有無に関係なく、ともにスポーツを体験することから、「共生社会」「インクルーシブ」「ダイバーシティ」に向かう場として取り組まれてきました。多くの企業や団体が、これらを目指し、体験会を開催してきました。

 

 障害のある人もない人も、ともに同じスポーツを楽しめることから、体験会を開催すること=障害のある人ない人がともにスポーツをする機会となる。それが障害に対する偏見が減る=共生社会の推進につながるという大前提の下、推進されてきた感があります。

 

 しかし、果たしてそうなのだろうか、と思わされる場面もあります。

 つい先日、ある体験会にゲストとして当日参加した時のことです。事後レポートを見ると、参加者の感想に以下のようなものが散見されました。

 

「見えないと怖いと思った」

「見えないことは不便なことが多いと思った」

「パラスポーツは多くの準備が必要で大変だ」

 

 現場でのコンタクト方法によっては、逆の作用を生んでしまうこともあるわけです。すなわちアンコンシャスバイアスを助長しかねないことを主催者は考えておかねばなりません。

 

 体験会を共生社会へのきっかけとするには、すべきことはたくさんあります。

 障害は人にあるのではなく、社会の側にある「障害の社会モデル」への気付きと理解。障害のある人に接することに慣れることで、障害はその人を象徴する最大の特徴ではないことを知る。周りに障害のある人がいること、それが社会だという意識。そして、困っていたら声をかけようとする気持ち……。

 

 目的を明確に設定し、参加者にはそれをよく理解しながらパラスポーツを体験してもらうような仕組みやストーリーを作りこむこと。これを強く意識することこそが、体験会開催に意義を与えるものだと考えます。

 

 なんとなく会場と道具を用意するだけで、「さあ、自由にどうぞ」。一見、オープンな様相を呈していますが……。それではもったいない。そう、しみじみ感じる年度末です。

 

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。2024年、リーフラス株式会社社外取締役に就任。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP