カタールとの準々決勝の日。朝起きてホテルの窓を開けると、この日も曇り空だった。朝食を食べてこれまでの取材をテープから起こすなど仕事の準備をしたうえで、決戦の場となるアルガラファスタジアムへ車で向かった。
(写真:数日前にも見たような風景)◇1月21日 「準々決勝でのホームサポーターの様子」 日本はこのスタジアムで初めて戦うことになるが、僕はなんとなく初めての気がしなかった。というのも、グループリーグ第3戦のサウジアラビア戦で戦ったアルラヤンスタジアムと構造がまったく一緒なのだ。
メディアセンターの位置からトイレ、観客席、何もかもが一緒。ほとんどコピーと言っていい。ただ一点、アルラヤンが赤を基調としていることに対してアルガラファは青。それぐらいの違いしかないのだ。ただ、2022人しか入らなかったサウジ戦に比べて、ホスト国の試合とあってスタジアムが満員となる2万人が押し寄せた。
カタールの人たちの応援のマナーは悪くない。誰かがマイクで応援する言葉を、全員がリピートするという日本の他のスポーツにも見られる応援の仕方だ。日本がボールを持つとブーイングを飛ばし、カタールがチャンスになると沸きかえった。中東の音楽を奏でながら、カタールの選手たちを後方支援していた。
試合は2−2の延長目前で伊野波雅彦選手が勝ち越し点を挙げた。それまで興奮していたファンは顔を下に向け、涙を流す人もいた。でも選手たちの頑張りに拍手を送っていた姿には、ちょっぴり感動でした。
試合後、選手たちの表情は明るかった。上がらないように指示が出ていたサイドバックの伊野波選手が前線に残っていたことに長谷部誠選手は「(伊野波が)何であそこにいたのかわからない」と苦笑いを浮かべながらも、チームの成長を喜んでいた。
◇1月22日 「日本代表を支える緑色の強い味方」 午前中にアルアハリスタジアムで練習。先発組はジョギングなどで軽めに調整した。日本代表が愛用しているのが、写真の緑色のバランスボール。ウオーミングアップとしてこのバランスボールで体幹を鍛えるのが、練習最初のメニューとなっている。
気持ち良さそうに見えるが、これが意外ときつい。寝ながら足でボールを触っていながらも、腹筋を鍛えたりしている。体幹トレは岡田ジャパンから本格的に始めて効果があっただけに、ザッケローニ体制でも継続して取り組んでいる。
(写真:選手全員で体幹トレーニング中) このバランスボール。全体練習後、選手たちが片付けるためにバスに持っていくこともあるのだが、ボールをバスケットボールのようにドリブルする選手、リフティングする選手……いい遊び道具にもなっているようです。おっ、監督の前にボールが……。しかし、ザックはボールを無視してその場を立ち去ってしまった。残念、バランスボールにはどうも関心がないようで……。イタリア仕込みのリフティングが見たかったのに……。
(このレポートは不定期で更新します)
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二宮寿朗(にのみや・としお) 1972年愛媛県生まれ。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、サッカーでは日本代表の試合を数多く取材。06年に退社し「スポーツグラフィック・ナンバー」編集部を経て独立。携帯サイト『二宮清純.com』にて「日本代表特捜レポート」を好評連載中。