日本女子ソフトボールリーグ開幕まで約3週間。今季も1部リーグ戦う伊予銀行VERTZは着々と準備を進めている。昨季は5勝17敗の11位で入れ替え戦に回った。今季は下位からの脱却を図り、勝率5割を目指す。

 

 

 伊予銀行は3月に松山で行われたマドンナカップ、岡山で開催された岡山オープンの2つのオープン戦に出場。マドンナカップは4勝2敗、岡山オープンでは4試合負けなしだった。昨季リーグ2位の太陽誘電ソルフィーユ、同3位の日立サンディーバには敗れたものの、トータルでは大きく勝ち越した。良いスタートを切れたと言っていいだろう。

 

「新人を含めて、いろいろと試せたので良かった。3月のオープン戦は結果じゃなくて、チームとしても個人としても課題が出ればいいなと考えていました。常に変化していく状況の中でどれだけ対応できるのかが大事です。試合を重ねていって、経験値が上がれば、そのときどうすればいいのかがわかってくると思います。すぐに身に付くものではないですが、そういう意識は持てていたのかなと感じました」

 就任3シーズン目を迎える秋元理紗監督は振り返った。

 

 今季は昨季の勝ち頭であるエースの木村久美、キャプテンの山﨑あずさ、新人の土居文香がチームを離れた。投打の柱を失い、戦力ダウンは否めない。

「大きく変わるわけではない。1人に頼るわけではなく、“みんなで協力してやっていこう”という意識でやってきていたので、その想いは去年より強いのかなとは思います」

 

 昨季も前半戦は、あえて木村をリリーフに回し、若手投手陣を積極的に起用した。防御率も前年の4.22から3.29と改善されたことから、その策は上手くいったと言えよう。更なる上積みには、木村に代わる新戦力の活躍が不可欠だ。ピッチングスタッフには日立から移籍してきた山口清楓、園田学園女子大から入った原田悠が新たに加わった。指揮官は山口には「軸となるピッチャー」と、原田には「新人ですが、試合にもバンバン出していくと思います」と大きな期待を寄せている。

 

 木村が背負っていた「18」を継ぐ原田に対して、投手出身である秋元監督は「どの球種もボールのキレが良いですね。スピードガンの数字よりも速く見えます」と太鼓判を押す。球種も多彩な技巧派右腕だ。そのほか4人の新入団選手もオープン戦で起用し、十分戦力になると見られている。

 

 センターのレギュラーだった山﨑が抜け、主にライトを守っていた片岡あいがケガで出遅れるなど外野手のレギュラー争いは熾烈になった。2年目のスラッガー・樋口菜美は主に打撃専門のDP(指名選手)、代打での起用だったが、今季は守備に就かせる方針だ。彼女が外野で使える目途が立てば、オーダーを組む上で打線の厚みが増す。昨季、チーム打率は1割7分3厘、総得点は39に終わった。攻撃力アップのためにもバッティングが売りの樋口をスタメンに固定できるのは大きい。

 

 新キャプテンには3年目の對馬弥子が任された。2年目の昨季は正ショートとしてフル出場。開幕戦では劇的なサヨナラ弾を放つなど、4本塁打と活躍した。秋元監督はキャプテンとして期待することは「特にないです」と口にする。「自分らしくやってくれたらいいと思っています」と、変に肩肘張らずにやって欲しいという考えがあるようだ。

 

「勝率5割を目指しています」と秋元監督は言う。リーグ戦は引き分けがない。つまりは11勝11敗が、目標のラインとなる。過去3年間で4勝、5勝、5勝の伊予銀行にとって容易いハードルでないことは確かだ。では、そのためには何が必要か。指揮官の答えはシンプルだった。

「ミスを減らすこと。どこのチームも負けるのはミスだと思うんです。例えば配球のミス、失投。目に見えないミスも含め、ミスがなければ負けないはずです。ヒットの数を増やしていくなど、プラスのことを増やすという考えよりは、マイナスをいかに減らしていくか。エラーや失点もそうですし、負けの数を減らしていくこと。昨年17あった負けを16にし、15にし……。そういう考えで今年は戦っていこうと思っています」

 

 4月6日から4日間、愛知県で行われるトヨタカップに出場する。伊予銀行はビックカメラ高崎 BEE QUEEN、豊田自動織機シャイニングベガ、デンソープライトペガサス、日立の日本リーグ勢のほか、台湾やオーストラリアのチームを相手に7試合が予定されている。開幕直前に格好の腕試しの場である。そして22日からは、いよいよ開幕節がスタート。1部はナゴヤドームが舞台となり、伊予銀行は、第3試合で昨季2部優勝の日本精工と対戦する。

 

「同じことをやっていても、意識ひとつで変わってくる。去年と同じようにやろうとは思っていません。いろいろと工夫しながらやっていこうと思います」と秋元監督は意気込む。伊予銀行の7カ月間に及ぶ戦いが幕を開ける。

 

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