アイランドリーグ出身選手たちは今 〜水口大地(西武)編〜

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 9月に入り、NPB、四国アイランドリーグplusともにシーズンが佳境を迎えている。
 独立リーグ史上最高位となるドラフト2位で中日に入団した又吉克樹(元香川)はチームトップタイの9勝(1敗)をあげ、今や欠かせないリリーフの柱に成長した。千葉ロッテの角中勝也(元高知)もチームの主力として、試合に出続けている。彼らに続こうと2軍で奮闘中のアイランドリーグ出身選手の今を追った。
(写真:機動力も使える内野のユーティリティプレーヤーとして期待されている水口)
 守備率9割9分以上で支配下へ――水口大地

 7月31日――。この日は育成選手にとって大きな意味を持つ。支配下登録の最終日だからだ。7月31日を過ぎると、シーズン終了まで支配下選手に昇格するチャンスは消滅する。育成選手は皆、この期限までに支配下登録されることを第一の目標に2軍でプレーをしている。

 アイランドリーグ香川から埼玉西武に入団した水口大地も今季中の支配下登録を目指していた。今季が2年目。3月にインフルエンザに感染し、右ひじの故障で出遅れたものの、復帰後はコンスタントに2軍戦に出場していた。
「昨年よりも自分自身でレベルアップした実感がありました。今季はヘンな自信があったんです」

 5月には同じ育成選手の外国人アブナー・アブレイユが支配下登録。まだ支配下枠には空きがあり、水口の期待はいやがうえにも高まった。しかし……。球団から支配下選手としての契約の話は一向に来なかった。

 そして、7月31日が過ぎた。今季も水口は背番号を支配下の証である2ケタの番号にすることは叶わなかった。
「非常に残念な気持ちでいっぱいでしたね」
 それでもシーズンは続く。悔しさを押し殺し、気持ちを切り替えようと試みた。そして、なぜ支配下登録を勝ち獲れなかったのか自分なりに考えた。

「振り返ってみると、守りの面でもエラーをしてはいけないと消極的になっている自分がいました。バッティングも走塁も、どこか守りに入っていた。それに気づいてから、気持ちも吹っ切れて思い切ったプレーができるようになりました」

 守りに関しては、コーチ陣の評価は高い。2軍の黒田哲史守備走塁コーチ(内野)は「セカンド、サード、ショートとどこでも守れるし、内野守備に関しては2軍の選手の中でも1番安定感がありますね。土のグラウンドが多いファームの試合で守備率が9割8分を超えているのはすごいこと。守りだけなら1軍レベルと 言っていいでしょう」と絶賛する。

 1年目の昨季は、守備に悩んだシーズンだった。「去年は守備のこと以外、考えられなかった」と本人も打ち明ける。アイランドリーグ時代は定評があった内野守備で、フライを落としたり、ゴロを弾いたり、ミスが目立った。失策はセカンド、ショートで計11個を数えた。

 その一因はNPBで1年戦い抜くフィジカルの強さが不足していたことにあった。水口自身も、この点は入団前から意識してトレーニングに取り組み、春のキャンプ終了までに体重を5キロ増やしていた。しかし、実際にシーズンに突入すると、試合と練習、そして居残りでの強化が続き、本人曰く「増やした分は全部、汗に流れていきました……(苦笑)」

 夏場の体重は58キロ。おおよそプロ野球選手とは思えない体重で、「バテバテの状態でした」と水口は振り返る。これではプレーどころではない。

 ただ、苦しい1年を乗り越え、体力はついた。黒田コーチは「土台がしっかりできたことで、技術も向上し、パフォーマンスが上がっている」とみる。今季は猛暑の時期でも体重が落ちることなく、63キロをキープ。100%集中して試合に臨めていることが、守備の安定につながっている。

 水口本人も「守備に関しては自信がつきました」と断言するほど手応えをつかんだ。
「今はたくさん打球に触りたい。守っていても“飛んでこい”という気持ちで守っていますね。ここまで来たら、守備率9割9分以上を目指すつもりです」
(写真:「たとえミスをしても次のプレーに切り替えて集中できるようになった」とメンタル面の成長も好守を生んでいる)

 守備でアピールできるとなると、次なる課題はもうひとつのウリである足だ。昨季は65試合で8盗塁。今季は既に昨季を上回る78試合に出ながら、8盗塁と多くない。しかも盗塁死は9とアウトになってしまう確率が高い。

「シーズンの最初に盗塁失敗が続いてしまって、アウトになるのが怖くなってしまいました。スタートが切れなくなってしまったんです……」
 継続したトレーニングの成果で、脚力はどんどん上がっている。塁間を走るタイムは3.1秒台が出るようになった。ピッチャーが投球して、それをキャッチャーが二塁に送球するのは速くても3.2秒かかると言われるから、物理的には盗塁を量産しても不思議ではない。

 バッティングも打率.239と決して高くはないが、昨季と比較すれば力強さが増してきた。昨季はわずか4本だった長打が今季は10本。7月3日の千葉ロッテ戦では2軍ながらNPB初本塁打も記録した。
「昨季は、ほぼ長打がないので、相手の外野手も前進していて普通のバッターならヒットの打球も捕られていました。今年は強い打球を打って飛距離が出るようになり、外野手も前に出てこないようになりましたね。その分、ヒットゾーンも広がっていると感じます」 
 水口は「状況によってはホームランも狙って打てるバッターになりたい」と理想を語る。もちろん、自身がホームランバッターではないことは自覚している。とはいえ、2軍レベルで一発が打てるパンチ力がなければ、1軍では通用しない。より高みを見据えてバットも工夫し、他のバッターより短く太いものを使っている。それをグリップエンドの部分で長く持ち、ヘッドを効かせ、打球を鋭く遠くへ運ぶのだ。

 アイランドリーグ時代から憧れていた片岡治大(現巨人)とは昨季、2軍で一緒に試合に出る機会があった。4年連続の盗塁王やセカンドのベストナインに輝き、日本代表にも選ばれた実績を持つ内野手の姿は見ているだけで勉強になった。
「試合では派手なプレーをする印象がありましたが、実際には僕たちがアップを始める前からひとり体を動かして準備をしている。練習も、ものすごく基本に忠実でしたね」

 エラーをした際にも「オレなら、ここは前に出て捕るぞ」と、打球判断やポジショニング、体の向きなど、たくさんのアドバイスをもらった。
「本当は盗塁の話も聞きたかったんですけど、その前に巨人に行ってしまいました……」
 ちょっぴり残念そうな表情を浮かべた水口だが、その分、片岡と過ごした時間は大切な宝物になった。

 同じ長崎出身で、同じ年に高卒でアイランドリーグに飛び込んだ土田瑞起(巨人、元愛媛)は今季、支配下登録され、1軍に昇格すると6月15日の東北楽天戦 でNPB初勝利をあげた。1軍定着には至っていないものの、150キロを超える速球を武器に2軍では1勝1敗15セーブ、防御率1.15と好成績を残している。

 現状は先を越された格好だが、水口は「2軍で対戦していますけど、“これは打てない”と感じることはまったくないですね」と対抗 心を燃やす。1軍の舞台で対戦する機会があれば、打ち返す自信は十分にある。そのためにも、何が何でも支配下選手として同じ土俵に上がらなくてはならない。

「3年後には1軍で盗塁王が獲れる選手になりたい」
 入団時に掲げた大きな夢は、もちろん抱き続けている。2軍が試合をする西武第二球場と、1軍の本拠地・西武ドームは目と鼻の先。水口は第二球場でユニホームを真っ黒にしながら、視界に入るドームの下で165センチの体が躍動する日を思い描いている。

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(石田洋之) 
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