ラグビー新リーグ・リーグワン2部は花園近鉄ライナーズが優勝し、来季の1部昇格を決めた。

 

 

 シーズンを通してライナーズを牽引したのは、80得点をあげ、得点王に輝いたスタンドオフのクウェイド・クーパーだ。

 

 オーストラリア代表75キャップを誇る34歳。11年ニュージーランド、15年イングランドとW杯2大会に出場した世界に名の知られた司令塔である。

 

 ライナーズの前身の近鉄は、1929年創部で日本選手権3度の優勝を誇る名門だが、74年度を最後に日本一から遠ざかっている。2018年度からは2部(当時トップチャレンジリーグ)暮らしが続いていた。

 

 19年度は2部を制しながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、1部(当時トップリーグ)との入れ替え戦は中止に。結局、昇格はかなわなかった。

 

 新リーグのディビジョン分けの際、1部候補に挙げられたものの、初年度は2部スタートとなった。

 

 そのライナーズが1部昇格を決めたのが、去る5月8日に行われたリーグワン2部1~3位順位決定戦第3節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦。ライナーズが34対22で勝利した。

 

 八面六臂の活躍をしたのがクーパーだ。7対0とリードした11分、飛ばしパスで左サイドに大きく展開。数的優位をつくり、最後はウイング片岡涼亮のトライにつなげた。

 

 一時、ダイナボアーズに4点差に詰められたものの、クーパーが、相手に傾きかけた流れを引き戻した。

 

 33分にPGを成功させ、22対15に。さらに40分、敵陣でボールを持つと、右サイドへのキックパスでロックのサナイラ・ワクァのトライを演出した。

 

 後半28分には、自らがインゴール右にトライ。コンバージョンキックも決め、34対22とリードを広げた。

 

 その後はダイナボアーズに反撃を許さず、最後はクーパーが外に蹴り出して試合を締めくくった。

 

 このゲーム、クーパーは両軍最多の14得点を記録した。

 

 クーパーはチームメイトのシオサイア・フィフィタから「先生」と呼ばれている。

 

 ノーサイド直後のひとコマ。クーパーは歓喜に沸くチームメイトに「落ちつけ」と自制を促した。

 

 以下の説明が、いかにも「先生」らしい。

「特別な一瞬だとは分かっていました。でも負けて傷付いているチーム、ファンがすぐ近くにいたんです」

 

 加えて、「これが旅の終わりではなく始まりだ」との思いもあったという。

「『我々は勝つべくして勝っているのだから、大げさに喜ぶ必要がない』という話をしました」

 

 クーパーは5月14日のファン感謝祭で、ファンに来季の残留を約束した。

 

 ライナーズというチーム名は近鉄特急の「アーバンライナー」に由来する。1部でも特急並みの快進撃を見せられるのか。

 

 クーパーは言った。

「この先が楽しみです。まずは1部から降格しないように、これからも努力が必要。最終的には日本一を目指します」

 

<この原稿は『サンデー毎日』2022年6月5、12日号に掲載されたものです>

 


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