あまり知られていないが、サッカーの世界で4月14日は「国際ゴールキーパーの日」である。

 

 

 2012年12月4日、コロンビア元代表GKミゲル・カレロが41歳の若さで急死した。カレロを慰霊するため、彼が契約していたグローブメーカーが「カレロの誕生日を記念日に」と提唱し、世界に広がっていった。

 

 この日、日本サッカー協会はオンラインのイベントを開催した。講師役を務めたのが日本代表GKの権田修一だ。

 

 キャッチングについて質問を受けた権田は答えた。

「(横っ飛びで)バチーンとはじくプレーは格好良いけど、きちんとキャッチをしてマイボールにする方が大事。そうすれば、相手の攻撃を終わらせられる」

 

 イベント終了後には、こんな持論も飛び出した。

「たとえばDFのミスで失点したとしても“なんで今の、(GKが)止められないんだ”と言われてしまったら子供はどう思うか……。GKに対する目が肥えてくれば自ずと日本全体のGKレベルは上がるはず」

 

 権田は1989年3月3日生まれの33歳。身長187センチは日本では長身の部類に入るが、GKの世界基準では決して高いとは言えない。

 

 彼には10年前にインタビューしたことがある。20歳の時のイタリア留学が自らを成長させたと語っていた。

 

 指導を受けたパルマのGKコーチ、エルメス・フルゴーニの教えは「Attacca la palla」(アタッカ・ラ・パーラ)というもの。要するに「ボールにアタックしろ」ということだ。

 

「僕はフルゴーニさんと会う前から、ゴールラインに張り付いてシュートを止めるより、相手がヘディングする前のクロスを捕った方がいいという考えでした。フルゴーニさんと会って、自分の考えが間違いじゃなかったことを確認できた。後々の大きな自信になりました」

 

 2012年ロンドン五輪では正GKを務め、日本のベスト4進出に貢献した。

 

 A代表ではGK川島永嗣の陰に隠れがちだったが、持ち前のキャッチングに加え、キックの精度が向上したことで、正GKの座を勝ち取った。森保一監督からの信頼も厚い。

 

 カタールW杯アジア最終予選では第5戦のベトナム戦(アウェイ)から5試合連続無失点。特にカタール行きを決めたアウェイの豪州戦(3月24日)では後半2分に左利きのFWアルディン・フルステッチが放った鋭いFKをファインセーブし、日本を救った。入っていれば先制され、日本は危なかった。

 

 権田はカタールW杯を「日本におけるGKの地位向上の機会」と捉えている。

 

 周知のように日本はW杯優勝4回のドイツ、同1回のスペインと同組(残る1枠はコスタリカもしくはニュージーランド)。一般的な見方は「2強2弱」だ。

 

 日本が大方の予想を覆して決勝トーナメントに進出し、目標である「ベスト8以上」を狙うには、権田の活躍が欠かせない。ゴールマウスにカギをかけてもらいたい。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2022年5月22日号に掲載されたものです>

 


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