サッカーのW杯といえば、夏開催が相場だが、今回に限っては11月から12月にかけて行われる。カタールの猛暑を避けるためだ。

 

 

 これにより選手の健康面の不安は、かなり解消されそうだが、回復具合が気になる。というのも、欧州の主要リーグは、W杯開幕の1週間前まで行われているからである。

 

 多くの日本代表選手が欧州でプレーしている今、万全の体調でW杯を迎えることができるのか。

 

 周知のように日本は“死の組”に入った。W杯優勝4回のドイツ、同1回のスペインと戦わなければならない。もう1カ国は大陸間プレーオフを経てコスタリカに決まった。2014年ブラジル大会ではベスト8に進出している。

 

 日本にとっては“死の組”でも大方の見方は「(決勝トーナメント進出は)ドイツとスペインで決まり」。2強の一角を崩したい。

 

 サッカーのスタイルが異なるため、“仮想敵国”と位置付けることはできない。それでもFIFAランキング1位のブラジルとの一戦は本番に向けた貴重なスパーリングとなったはずだ。

 

 さる6月6日、東京・国立競技場で行われた国際親善試合のブラジル戦は、日本代表に手応えと課題の双方を残した。

 

 スコアは0対1。近年の5試合は、いずれも3点以上取られての完敗だったため、健闘と言えば健闘だ。

 

 守りに大きな破綻は見られなかった。失った1点はFWネイマールが決めたPK。スコアレスの時間を76分も続けた。

 

 課題は攻撃である。シュートは4本放ったものの枠には1本も飛ばなかった。ドイツやスペイン相手にも、決定的なチャンスは、そう何度も訪れまい。カウンターに“ハチの一刺し”のような鋭さが欲しい。

 

 ブラジル、ロシアW杯と2大会連続で出場し、ワントップの重責を果たした大迫勇也(ヴィッセル神戸)のコンディションが気になる。今季、Jリーグではわずか1得点。それについて本人は「このままじゃ代表に選ばれない」と危機感を抱いている。

 

 代役はいるのか。Jリーグ得点ランクトップ(10得点)を走るFW上田綺世と、その相棒のFW鈴木優磨(ともに鹿島アントラーズ)を組ませるのはどうか。

 

 鈴木は今季、ベルギーのシントトロイデンから鹿島に復帰した26歳。リーグ戦6得点、アシストはトップの6。このうち上田へのアシストが3つある(数字は5月31時点)。

 

 元日本代表で鹿島OBの大野俊三の見方はこうだ。

「鈴木は以前よりポジショニングがよくなった。上田をいかそうとサイドに流れたり、下がり目の位置からゴール前に侵入したりと神出鬼没。相手は手を焼くはずです」

 

 カタール行きを決めたシドニーでの豪州戦、先制点はDF山根視来(川崎フロンターレ)、MF守田英正(サンタクララ)、MF三笘薫(サンジロワーズ)の流れるようなパスワークから生まれた。川崎フロンターレ時代に培ったコンビネーションが生きたのである。

 

 W杯まで残り5カ月。鈴木を7月開催のE-1選手権で試してもらいたい。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2022年7月3日号に掲載されたものです>

 


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