第747回 大谷翔平“ボス”電撃解任の余波
天国と地獄は紙一重である。
<この原稿は2022年7月4日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
大谷翔平のボスであるエンゼルスの監督ジョー・マドンがさる6月7日(現地時間)、チームの不振を理由に解任された。
出だしは好調だった。5月15日(同)の時点では24勝13敗でア・リーグ西地区の首位に立ち、8年ぶりのポストシーズンゲーム出場に向け、視界は良好だった。
ところが25日(同)のレンジャーズ戦から泥沼の12連敗。解任時点では地区首位のアストロズに8・5ゲーム差をつけられていた。
マドンに引導を渡したペリー・ミナシアンGMは苦渋の決断だったことを強調した。
「私たちには、まだ106試合残っている。これが最善の方向に向かうための決断だと信じている」
68歳のマドンはア・リーグで2回(08、11年)、ナ・リーグで1回(15年)、計3回もリーグ最優秀監督賞を受賞している名将だ。
戦術家でも知られる。16年には“ヤギの呪い”で有名なカブスを、108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いている。
どんな監督なのか。レイズ時代、マドンの下でプレーした経験のある岩村明憲は、こう語っていた。
「ジョーは本当にオープンな性格。監督室は常にドアが開かれていて“何でも聞きに来い!”と。不調の時には“日本でやっていた調整法で、こっちでできることはないか。協力するぞ”とまで言ってくれました」
エンゼルスでは大谷の“二刀流”に理解を示し、より多くの出場機会を提供した。昨季のリーグMVPは、指揮官のサポートの賜物である。
世話になったボスの突然の解任を受け、大谷は殊勝な面持ちで「すべてが監督のせいというわけではない。自分自身も調子が上がらず、申し訳ない思いももちろんある」と語った。
過去、メジャーリーグで最優秀監督賞を受賞した人物が、日本プロ野球で指揮を執ったことは一度もない。マドンを招聘する球団は現れないものか。