ブラジル・リオデジャネイロで開催されている柔道の世界選手権第1日は13日、当地のオリンピックアリーナで男女4階級の決勝までが行われ、男子100キロ超級の井上康生(綜合警備保障)は2回戦で欧州王者のテディ・リネール(フランス)に敗れた。敗者復活戦を勝ち上がったが、3位決定戦で敗れ、メダルを逃した。
 3大会連続金メダルに挑んだ同100キロ級の鈴木桂治(平成管財)は、2回戦でエジディ・ジリンスカス(リトアニア)と対戦、大外刈りで倒しに行ったところを逆に相手の一本ととられ、無念の敗退を喫した。
 女子78キロ超級はアテネ五輪金メダルの塚田真希(綜合警備保障)が決勝で前回優勝の佟文(中国)に敗れて銀メダル。同78キロ級の中沢さえ(綜合警備保障)も決勝で前回金のユリセル・ラボルデ(キューバ)に一本負けし、銀メダルとなった。
 
 井上、鈴木が無念の敗退

 男子100キロ超級の井上は1回戦、鮮やかな内またで一本勝ちをおさめ、幸先の良いスタートを切ったが、2回戦、18歳で欧州選手権を制した18歳の新鋭・リネールと対戦。上背で上回る相手に、幾度となく技を仕掛けるが、なかなか崩すことができない。
 残り10秒を切り、井上が大内刈りを仕掛ける。リネールが態勢を崩しながら井上の体を引き込み、井上が尻もちをつく。主審はリネールの「有効」を告げ、ほぼ同時に試合終了のブザーが鳴った。微妙な判定ながら、井上の敗戦が決まった。
 その後、敗者復活を勝ちあがり、シリットラー(ブラジル)との3位決定戦に挑んだが、2分20秒を過ぎ、技をかけに行ったところを返され、相手に有効が入る。その後もヒヤリとする場面が続き、ポイントを奪えないまま時間切れ。メダル獲得もならず、5位に終わった。

 3大会連続金メダルに挑んだ同100キロ級の鈴木桂治(平成管財)は、1回戦では相手を圧倒、残り3秒で内またを決め、一本勝ちをおさめた。2回戦では、エジディ・ジリンスカス(リトアニア)と対戦、大外刈りで相手の背中を畳につけた。
 明らかに鈴木の一本勝ちだったが、主審は、即座に鈴木の体を引き込み回転させた相手の一本を告げる。斉藤仁監督が畳にかけより、大声で抗議。鈴木も首を振り、抗議し、場内からも大ブーイングが起きる中、審判団が集まるが、結局、判定は覆らず。しばらく畳を降りずに抗議を続けた鈴木だったが、無念の2回戦敗退に終わった。
 00年シドニー五輪でやはり不可解な判定による金メダルを逃した篠原信一(現・天理大柔道部監督)は解説席で「これでは柔道が柔道でなくなってしまう」と声を荒げた。
 世界最高峰の舞台での3大会連続の金メダルがかかった日本のエースが、不可解な判定で畳を去るというやりきれない事態に、後味の悪さだけが畳に残った。

 女子78キロ超級の塚田真希(綜合警備保障)は決勝で、前回カイロ世界選手権覇者のトウブン(中国)と対戦。組み手争いでは引けをとらなかったものの、技を思うように出せず、指導ポイント1つで、金メダルに届かなかった。
 同78キロ級の中沢さえ(綜合警備保障)も、決勝の相手は前回大会と同じユリセル・ラボルデ(キューバ)。最後までポイントをリードしながら、残り10秒を切り無念の一本負け。塚田、中沢ともに、わずかに世界の頂点には届かなかった。
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