いよいよペナントレースも終盤を迎え、現在、富山サンダーバーズは石川ミリオンスターズとの熾烈な優勝争いを繰り広げています。選手たちは初代チャンピオンに向けて一生懸命頑張っています。しかし、長期にわたって試合を行なうのは初めてのこと。既に疲労はピークに達していることでしょう。しかし、ここまできたらあとは気持ちの問題。最後まで優勝への執念を持ち続け戦ってもらいたいと思っています。
 10日現在、2位・石川に1.5ゲーム差をつけて首位に立っていますが、万全な体制で戦えているわけではありません。というのも、これまで投手陣の柱として牽引してきた小園司(阪南大出身)と大瀧紀彦(広島国際大出身)のエース2人が揃ってヒジの故障で戦線離脱してしまったのです。

 体への負担を考慮し、1試合で投げる球数を減らすようにはしていたのですが、それでもやはり疲労がたまってしまったのでしょう。2人ともヒジに違和感を訴えたため、無理をせずに休ませることにしたのです。

 その2人の代わりに先発の柱として結果を出しているのが、萩原淳由(NOMOベースボールクラブ出身)です。萩原はもともと技術的には力のある投手。コントロールがよく、変化球にもキレがあっていいボールを投げます。

 ところが、メンタル面で弱いところがあり、なかなか結果を出すことができませんでした。それが力みにつながり、本来の打たせてとるピッチングができずにいたのです。彼は人一倍真面目な性格ですから、結果が出ないことで悩んでいた時期もありました。しかし、ここにきて彼の中で何かが吹っ切れたのでしょう。常に100%の力で投げようと肩に力が入っていた以前とは違い、最近の試合ではいい具合に力が抜けていて打者をかわすピッチングができるようになりました。エースが欠けたことで、責任と自覚が芽生えたこともあるかもしれません。

 2カ月ぶりに先発した8月23日の新潟アルビレックスBC戦では、8回を2安打1失点と好投し、久々に白星を獲得しました。これで自信がついたのでしょう。30日の信濃グランセローズ戦にも勝つと、9月8日の信濃戦では2安打完封勝利を収めました。これで自身3連勝。今後も、自分の投球に自信をもって投げてほしいと思います。

 さて、今季も残り16試合となりました。今、チームは優勝に向けて一丸となって戦っているわけですが、先述したように最後は技術よりも気持ちが最も重要になってきます。とはいえ、こうした優勝争いの経験がほとんどない選手ばかりですので、大きなプレッシャーを感じてもいることでしょう。ですから、どれだけ平常心でいられるか、自分のプレーができるかが優勝へのカギとなります。

 そのためにも小園の早めの復帰が待たれます。彼は戦力としてはもちろんですが、チームの精神的支えでもあります。彼が戻ってくることによってチームの士気が高まり、より強さを増すことは間違いありません。

 現在、小園はブルペンで投げることができるほどの回復を見せています。体の痛みというのは本人にしかわかりませんので、焦らずにじっくりと話し合いながら復帰の日を決めたいと思いますが、きっと近々マウンドに上がれるようになるでしょう。その日が一日でも早く訪れることを私も願っています。


横田久則(よこた・ひさのり)プロフィール>:富山サンダーバーズコーチ
1967年9月8日、和歌山県出身。那賀高からドラフト6位で指名を受けて1986年、西武に入団した。その後、ロッテ、阪神へと移籍。02年オフに阪神から戦力外通告を受けるも、台湾の兄弟エレファンツに入団した。2年目には5勝を挙げる活躍を見せたが、肩の故障などに苦しみ、06年限りで引退を決意。07年より富山サンダーバーズのコーチに就任した。


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