9月10日(土)、ニンジニアスタジアム(愛媛FCのホームスタジアム)では、2022J3第24節が開催され、1万人近くの観客動員に成功した。

 

 この日の試合は、愛媛FCがFC今治と対戦する伊予決戦(第2戦)。伊予の国(愛媛県)の2クラブが90分間の激闘を繰り広げたが、最終スコア「3-2」で愛媛FCが見事勝利! スタジアムを訪れた9126人が熱狂の夜(ナイター)を体感した。

 

 遡ること試合開始3時間前、各スタンドの入場ゲートには開場を待つ長蛇の待機列が作られ、スタジアムグルメのお店やグッズ売り場にも大勢のお客様が詰め掛け、試合前からスタジアム外周が、お祭りの如く熱気で溢れていた。

 

 賑わいを取り戻したスタジアム。久し振りに見る、この光景に常連のサポーターたちも「テンションがあがる!」と顔を綻ばせていた。

 

 今季を振り返ると第22節終了時点での愛媛FCホームゲームの1試合当たりの平均観客数は「2210人」という寂しい数字。J3(下位カテゴリー)への降格、また新型コロナウイルス感染症などの影響により、来場者数は減少傾向にあった。クラブとしても何とか、この状況を打破したいという考えはあったと思う。シーズン前からクラブ関係者の方は「選手たちには、たくさんのお客様が応援する中でプレーさせてあげたい」と語られていた。もちろん、私たちサポーターも同じ思いを持っている。

 

 以前、このコラムでも、ご紹介させていただいた「DYE DYE ORANGE PROJECT(だいだい オレンジ プロジェクト)」では、愛媛県勢が直接対戦する注目度の高い今節をターゲットに置き、この試合に向けて愛媛のプロスポーツ4団体が力を合わせ観客動員への様々な活動を展開してくださった。また並行して、この日のマッチスポンサー様や協賛スポンサー様、自治体や学校関係者、各種協力団体、マスコミの方々、サポーターや支援者も、この一戦での集客に向けて、勧誘や告知活動などにも取り組んできた。そういった様々な方の努力により、今季の平均観客数の4倍以上となる「9126人」という集客を成し遂げることができたのである。

 

 メインとなる試合では選手たちも頑張り、気持ちが伝わってくる素晴らしいプレーを随所で魅せてくれた。同時にスタンドも異様と思える程の熱気や盛り上がりを感じられたので、誘われて初めてスタジアムを訪れた方や久しぶりに試合を観に来られた方々も、これを機に今後、リピーターとしてスタジアムへ戻ってきてくれるのではないかと期待している。

 

 ただ、この(観客増への)好機を妨げるホームゲーム(スタジアムの構造上)の問題点は見逃すことができない。スタジアムへ来場するための公共交通機関はバス(又はタクシー)のみで、鉄道などはない。しかも(事前予約制の臨時バスを含め)バスの本数は少なく、帰りの最終バスは試合終了から僅か30分程でスタジアムを出発。それ以降の運行はない。横断幕を片付けたり、撤収のボランティアに参加しなければならない私たちサポーターは、試合後2時間はスタジアムに残るため、時間的にバスを利用することはできないのである。

 

 一般のお客様も同じ感覚だと思われ、自家用車で来場される方が殆ど。中心街から遠く離れ、勾配のきつい坂を持つスタジアムには自転車で来られるお客様は少ない。ゆえに、(今節のように)多くの来場者が訪れた場合、スタジアムの周辺には車の渋滞が発生する。試合後は、来場者が帰宅のため満杯の駐車場から一斉に車を動かす。そのためスタジアムがある愛媛県総合運動公園内に大渋滞が発生する。酷い時は運動公園を出るまでに1時間近くを要する場合もあるようだ。これまでも大観衆を集めた試合後には、愛媛FC事務局宛に、お客様から渋滞や駐車場に関する不満も寄せられている。

 

 これらのご意見を受け、クラブでは運動公園内での渋滞を緩和するため、試合終了後の時間差帰宅を推奨し、帰ろうとされている、お客様を引き留めるため、試合後のイベントなども工夫して行っているが、直接的な問題解決には至っていない。

 

 とは言え、21000人を収容できるスタジアムにしては、大観衆を迎え入れるための交通の利便性が脆弱に感じられるし、全てがクラブ側の責任とは言い難い。運動公園内には、スタジアムの他にも体育館やテニス場、多目的グラウンドなどがある。また道を挟んで斜め向かい側には「とべ動物園」も存在している。全ての施設の利用者数を考えれば園内渋滞や駐車場不足も仕方ないのかも知れない。だが、このような事が続いていては、折角のリピーターを逃してしまいかねないのでは、と危惧している。

 

 同県内の今治では新スタジアム(FC今治ホームスタジアム)の建設が進み、来年完成予定だ。愛媛FCも、そろそろ専用スタジアム(新ホームスタジアム)を検討しても良い頃ではないだろうか。利便性や渋滞解決のためだけでなく陸上競技会などとの併用が続いている現状(Jリーグ公式戦当日の朝から昼過ぎ頃まで、スタジアム内で陸上競技大会が行われる事がある。芝生ピッチ内では投てき競技も行われるため、グラウンド内に穴が開くこともあり、ピッチコンディションを心配する声も聞かれる)も踏まえ、中心街の活性化に向けた「街中スタジアム」など、議論してみても良い時期にきているように感じる。

 

 すぐさま実現するような事業ではないからこそ、計画性を持って、今から「賛成意見」や「反対意見」を何処かや誰かに気遣いすることなく、皆が口にできる様な環境を創っていけたら良いのではないだろうか。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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